王子『やまに』昭和13年創業、お手頃価格で丁寧な料理、お手本のような酒場

王子『やまに』昭和13年創業、お手頃価格で丁寧な料理、お手本のような酒場

王子の『やまに』は85年続いてきた歴史ある酒場です。王子駅から徒歩6分ほど離れた場所にあり、駅前立地の酒場にはない穏やかな時間が流れています。市場仕入れの魚介類は種類豊富でどれも良心価格。老舗の居酒屋がお好きな方には、ぜひ訪ねて欲しい一軒です。

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正統派の立派なカウンターと、お座敷列車のような空間

東京メトロ南北線が開通する前の王子駅は、京浜東北線と都電荒川線が交わる、ごく普通の駅でした。

それでいて、駅前には立派な繁華街が広がっており、同じ北区にあって東京を代表する飲み屋街である赤羽に並ぶほど賑やかな、一種独特の魅力があります。ここもまた、花街の延長線上にある歓楽街ということでしょうか。

とくに、長い歴史を持つ家族経営の居酒屋が多く営業しており、酒場巡りや街歩きが好きな人にとって、心躍るエリアと言えます。

外観

王子駅から北本通りを北へ6分ほど歩くと見えてくる『やまに』も、そんな王子の老舗酒場のひとつ。駅から離れた場所に店を構えている理由について、女将さんによると、かつて国鉄王子駅は北側に動く計画があったからだそう。

結果的に駅の移設はありませんでしたが、『やまに』は近隣で働く地元の人や家族連れが利用しやすい、地域密着の店となりました。

店の名は『やまに』ですが、暖簾に書かれた名前は「ヤマニバー」。浅草の「神谷バー」のように、戦前の酒場には「バー」を名乗る店がいくつもあります。

内観

国道122号(北本通り)に面しており間口はけして広くない『やまに』ですが、ここは奥に長いです。一直線のカウンターが8メートルほど伸びており、その先に厨房があります。

不思議なのは、カウンター席に座ったときの対面の窓です。”バックバー”ではなく、向こう側には座敷が広がっています。カウンターが店の端ではなく、実は座敷とカウンター席に挟まれるように配置されているのです。

座敷側の幅は電車と同じくらいで、座敷側は鉄道の車内で飲んでいるような不思議な感覚が楽しめます。

品書き

お酒

  • 生ビール アサヒスーパードライ:540円~
  • 瓶ビール キリンラガー:700円
  • ホッピーセット:500円
  • 日本酒:330円
  • 地酒:670円
  • ウイスキー:420円
  • 焼酎:500円
  • 宝酒造 レジェンド:500円
  • 緑茶サワー:460円
  • うめサワー:460円

料理

  • まぐろ刺身:750円
  • 特選くじら刺:850円
  • 戻りかつお刺:600円
  • いさき刺:600円
  • 赤めばる刺:600円
  • 活たこ刺:600円
  • 活ヒラメ刺:600円
  • あじ刺:600円
  • いわし刺:600円
  • あじ酢:550円
  • いわし刺:550円
  • しめさば:600円
  • あなごフライ・天ぷら:670円
  • あじフライ:550円
  • めごち天ぷら:620円
  • 串かつ:500円
  • 鳥からあげ:450円
  • どじょう鍋:700円
  • ポテトサラダ:300円

品数豊富で、あれもこれも食べたくなる

生ビール アサヒスーパードライ(540円)

酒場の一杯目はやはりビールでしょう。ジョッキではなく、あえてシンプルなタンブラーなのが嬉しいです。それではアサヒスーパードライで乾杯

あじ酢(550円)

『やまに』の特長はなんといっても品数の豊富さです。とくに刺身等の魚介料理が多く、ときには蟹まで黒板メニューに加わります。いまが美味しい脂がのったアジは酢じめでいただきましょう。ねっとりとした甘さと程よい酸味。これはビールや日本酒が進みます。

キリンラガー大瓶(700円)

ビールは樽生がアサヒで瓶はキリンが選べます。瓶を傾けながら、のんびりとした時間に浸る…いいものです。

活たこ刺(600円)

北海道の活だこ。つるつるとした食感と旨味はお酒が欲しくなります。

日本酒大関(330円)

『やまに』の定番酒は灘の酒・大関です。いろいろと華やかな地酒が話題になる昨今ですが、老舗の酒場は、こういう普通酒が一番似合うと思います。

あなご天ぷら(670円)

大関を飲みつつ、BGMのない空間でしずかに飲んでいると、奥から天ぷらを揚げる音が聞こえてきました。穴子天は600円台とお手頃価格ながら、かなり食べごたえある内容。しし唐やさつまいももついたちょっとした盛り合わせです。

肉どうふ(500円)

肉豆腐はいい塩梅にクタクタです。中まで飴色の豆腐とろとろの玉ねぎ、出汁がきいており旨味が強い味付けにお酒が進みます。

宝レジェンド(500円)

女将さんもおすすめということで、宝酒造のレジェンドをいただきました。樽貯蔵熟成酒で、甲類焼酎ながらまろやかな味わいです。懐かしい、久しぶりに飲みました。

ごちそうさま

家庭的な雰囲気で、ゆったりと過ごせる大人の酒場でした。旬の魚をつまみに、あれこれと好きなようにお酒を飲んで3,000円くらい。いまや貴重な”正統派の大衆割烹”です。次回はどんな刺身が並んでいるかな。女将さん、ごちそうさまでした。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名やまに(ヤマニバー)
住所東京都北区王子2-23-1
営業時間営業時間
[月~土]
17:00~23:00
定休日
日曜日
創業1938年