創業はなんと昭和12年!「歴史ある酒場は素晴らしい」と改めて感じさせてくれる店が、八広の『日の丸酒場』です。名物は下町(城東エリア)酒場の定番「焼酎ハイボール」。氷なし、表面張力まで注ぐ職人技に惚れ惚れします。品数豊富な料理も楽しい!
目次
飴色の空間に、自分自身も染まる楽しさ
押上と青砥を結ぶ京成押上線に乗って、八広駅へ。都営線浅草駅から直通列車で8分とわずかな乗車時間ですが、街の雰囲気はがらりと変わります。
八広駅(開業時は荒川駅)が開業したのは1923年(大正12年)。まだ湿地や田畑が広がるこの地に鉄道が開通したことで、次第に開発が進みやがて多くの人々が暮らす「八広」という街になります。八広という地名は意外と新しく、1965年に命名されました。
そうした荒川駅・八広駅の成長を長年にわたって見てきた酒場が、いまものれんを掲げて営業しています。店の名は『日の丸酒場』。
1999年に八広駅が高架になって駅舎の表情は大きく変わりましたが、駅に隣接する『日の丸酒場』は老舗酒場の堂々とした風情を保っています。
渋い店構え、暖簾の向こうは飴色の別世界です。
店に入ると正面にはピカピカに磨き上げられた厨房を囲むL字のカウンター。ここの角が筆者にとっての特等席です。
隣には4人テーブルを4卓揃えた広めの小上がりがあり、外観から感じる印象より店は一回り程度広く、余裕のある造りといえます。それでも口開けと同時に常連さんが次々とやってくるので、早い時間から満席になることも。
店を切り盛りするのは、眼光が強く、それでいてチャーミングなお兄さんたちです。世代を超えて続く家族経営の酒場は、やっぱり素晴らしい!
この空間で店の風景の一部になれることが、もう楽しくて仕方がありません。
品書き
お酒
- ビール キリンラガー:520円
- ビール大(季節もの):720円
- 焼酎ハイボール:330円
- ウイスキー:330円
- 一級酒:300円
- 二級酒:250円
料理
- とんかつ:400円
- 串かつ:360円
- 鶏唐揚げ:410円
- イカフライ:360円
- こはだ:360円
- 肉豆腐:410円
- サラミ:310円
- 春巻:360円
- 棒々鶏:510円
- にこごり:300円
- あんこう鍋・かき鍋等(季節もの):800円
薄いグラスに並々注ぐ”ボール”と種類豊富な料理
ビール大(720円)
さあ、一杯目をいただきましょう。訪れるお客さんの多くが「焼酎ハイボール」を注文しますが、ここは生ビールも魅力的です。状態抜群、鮮度、注ぎ方ともに文句なしの一杯が届きました。ロゴからわかるように年代物のジョッキもいまも現役なのが嬉しいです。
それでは乾杯!
焼酎ハイボール(330円)
トンと置いた薄いグラスに、ヤングホープの瓶から炭酸水を勢いよく入れ、続けざまに色付きの甲類焼酎を豪快に注ぎ、表面張力まで持ち上げて完成。流れるような所作は、まるでバーテンダーのようです。
これが焼酎ハイボール。愛称は「ボール」。カウンター席だと上段に置かれますので、水飲み鳥のようにまずは一口。
東京・城東エリアで飲み歩く人にはおなじみの色付き酎ハイですが、これはこの界隈でしか提供されていないご当地ドリンクなのです。とくに墨田区や江戸川区で提供している店が多く、老舗は店ごとに味が異なり、味の配合は門外不出というところも。
都外の方だけでなく、都内でも杉並や世田谷、多摩地方にお住まいの方からも不思議なドリンクに思えるのではないでしょうか。見た目はウイスキーハイボールそっくりですね。
2016年に宝酒造が、墨田区などで飲まれていた焼酎ハイボールをモチーフにした「宝焼酎ハイボール ドライ」をRTD(缶入りの酎ハイ)で全国発売しました。ですので似たような味・色のついた酎ハイを飲んだことがある方は多いと思います。
度数高め、氷で薄まらず、ぬるくなる前に飲み干したくなるハードスタイル。(お酒は自分のペースで適量を)
ほんのりと甘い風味は、もつ焼きから揚げ物、刺身まで幅広く合います。
日の丸酒場のボールは色が濃くてもドライ寄り。
しめさば(360円)
それでは、これまで頂いてきた料理を記録していますので、順にご紹介します。まずは「しめさば」。常連さんに人気の脂がのった旨味強めの一品です。
すじこ(520円)
ちょっぴり贅沢にすじこを頂いたこともあります。ねっとりコクがあり、ボールを進ませます。昔はすじこは酒場でよく見かけましたが、最近は扱う店が少なくなりましたね。
甘エビ(470円)
刺身は品書き上でも15品あり、赤貝や青柳、ひらめなど種類が豊富です。
にこごり(300円)
長く続く店らしい、季節限定枠にかかれているにこごり。厨房上のおすすめエリアに「にこごり」の文字があったら頼みたくなります。
ビーフシチュー(650円)
洋食メニューも人気で、とくにビーフシチューととんかつは注文が多いようです。ドライなボールとシチュー、意外な組み合わせですが、これが結構合うのです。
とんかつ(400円)
これだけしっかりしたとんかつが400円というのは、とてもリーズナブルです。カリカリの衣がしんなりするくらいソースをかけて食べるのが好き。
カキフライ(360円)
ボールとあわせてちょうどいい分量ですし、値段もお手頃。あれもこれも試してみたくなります。ぷりっとした大きい牡蠣がでてくると嬉しい!
チョリソ(360円)
一般的なチョリソーですが、こういうのがボールを引き立てます。
みんなで店内のテレビに映る情報番組を眺めつつ、ぼーっとつまんで飲んで…を繰り返す。良い時間です。
肉豆腐(410円)
トロトロになるまで煮込まれた肉豆腐。甘く、下町の牛鍋風の味付けです。
ごちそうさま
お店の皆さんが巨人ファンなので、巨人戦のテレビ中継があるとき皆さん試合を気にしながら接客されています。ですので、こちらも試合の行方が次第に気になってきます。そんな雰囲気も下町酒場の一種の愛嬌です。
年季の入った店ですが隅々まで手入れがされています。若い世代のお一人様もいらっしゃいますので、初めての方もぜひ訪ねてみてほしいです。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 日の丸酒場 |
住所 | 東京都墨田区八広6-25-2 |
営業時間 | 営業時間 17:00~23:30 日曜営業 定休日 不定休 |
開業時期 | 1937年 |