錦糸町『小松』創業60年以上。外の喧騒が嘘のような酒場で鰯フライ

錦糸町『小松』創業60年以上。外の喧騒が嘘のような酒場で鰯フライ

2022年9月28日

商店街の小さな老舗酒場『小松』。店の歴史を物語る使い込まれた暖簾が営業中の目印です。15時の開店からお客さんが次々訪れては、さっと飲んで次へ行く。飲み慣れた人々のとまり木になっています。料理の価格は400円前後と庶民的。盛りの良さも人気の理由でしょう。

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1950年代から続く、年輪を感じる佇まい

酒場が多い錦糸町で60年以上に渡って親しまれてきた大衆酒場『小松』。錦糸町の歓楽街は京葉道路を渡った南側に広がっていますが、『小松』は京葉道路沿いのコンビニなどが立ち並ぶ駅前アーケードにあります。

駅から近く比較的歩きやすい雰囲気にあるためディープさはそれほどありませんが、『小松』の店構えは酒場好きを引き寄せるオーラがあります。

外観

飾りのないタイル貼りに、炭酸のリターナブルびんを積んだ通箱。看板には数世代前のデザインで書かれた「サッポロビール」の文字。使い込まれた暖簾が、店の内外の雰囲気をピシャリと区切っています。この暖簾をくぐるのは、間違いなく酒場好きです。

内観

店は2列並んだカウンターと、右の壁側にテーブル席という構造。一人飲みの黒帯飲兵衛だけでなく、若い会社員グループが飲み慣れたいつもの店というように、手際よくお酒と肴を注文しています。

店の方はささっと注文を聞き、厨房へオーダーを通し、お酒の用意をはじめました。手すきのときはテレビを眺めながら喫煙を楽しむ、昔ながらの酒場の雰囲気です。

品書き

お酒

樽生ビールサッポロ生ビール黒ラベル):500円、ビール大瓶キリンクラシックラガーサッポロラガー):630円。

割もの類は、酎ハイ:400円、生グレープハイ:500円、ウーロンハイ:400円、ホッピー(400円)、キリンオーシャンラッキーハイボール:430円。

日本酒千歳鶴からくち):350円、冷酒白鶴):650円など。

料理

黒板メニューは日替わりです。訪問時はカツオ刺身:400円、生イカ刺身:400円、ブリ刺身:400円、とり貝刺身:400円、新生姜:350円、枝豆:300円。

短冊メニューは、カレイ煮魚:350円、ブリ照焼:350円、イカ大根煮:350円、イカゲソ天:350円、手羽カツ:400円、イリブタ:580円、レバピーマン炒メ:480円、さば塩焼:400円、はんぺん焼き:380円、肉豆腐:430円、マカロニサラダ:380円など。

安い、美味しい、そして渋くて素敵なカウンター

サッポロ生ビール黒ラベル(500円)

16時頃の店内は、先客は常連さんが数名。店の人とワイドショーを見ながらゆっくりとした時間を楽しまれています。私もカウンター席に通していただき、まずは酒場の空気にひたりほっとします。一杯目は悩むことなく樽生ビール。ここの生ビールはグラス洗浄、温度、ガス圧ともに完璧です。

昔ながらのたっぷりはいるサッポロジョッキが嬉しいですね。それでは乾杯!

イカ大根煮(350円)

大理石調の天板が特徴的な『小松』のカウンターですが、なぜだかとても茶色系の料理が映えるのです。小イカ、大根、そして里芋を甘めに煮付けたイカ大根から。イカは子持ちでパンパンに詰まっています。

軽く添えられた練からしを風味付け程度につかって一口。コクがありビールが進む一品です。

酎ハイ(400円)

ビールの次は、酎ハイへ。店頭にコカ・コーラ社の通い箱が積まれているように、ここの炭酸はカナダドライクラブソーダです。下町の酒場は近隣のローカルな炭酸メーカーのものを使う場合が多く、カナダドライは珍しいです。

氷と甲類焼酎をあわせて7割ほどになる、比較的濃い目の酎ハイに、錦糸町の個人店ならではのパワーが感じられます。

炭酸は二回にわけて使うとちょうどいい量で、甲類焼酎だけをおかわりするこが可能です。

イワシフライ(400円)

どれも手頃で盛りがいい、とても良心的な料理をだしてくれる小松ですが、とくにインパクトがあるのはイワシフライ(400円)でしょう。大羽イワシが2尾でてきます。反り返っていますが、揚げ具合はちょうどよく、ザクッとした衣の中から、しっとりとしたフカフカの身が汁を垂らしながらでてきます。

辛子を気持ち多めにつけて、大きく一口。すかさず濃い目の酎ハイを飲みながら、夕方の情報番組を頭空っぽにして眺める…。ときにはこういう時間も大切です。しなしなになった千切りキャベツもおつまみになります。

千歳鶴(350円)

だいぶ心地よくなってきました。まだイワシフライも残っているため、日本酒を常温で一合。銘柄は札幌の地酒 千歳鶴です。すっきりとした喉越しで飲み飽きない酒場向きのお酒。

さっと飲んで次へ行く。長っ尻をしない常連さんたちのように、私もグラスが空いたところでおいとましました。手頃な価格で楽しめる、錦糸町のいぶし銀の店です。土日も15時から営業していますので、お昼飲みにも利用しやすいかと思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名小松
住所東京都墨田区江東橋2-16-10
営業時間15:00~21:00(月定休)
開業年1950年代