画一的な店舗から脱却。チェーン居酒屋の老舗『天狗』の挑戦が続いています。渋谷にオープンした『大衆スタンド ニュー神田屋』は、同社初「おでん」を看板料理にしました。渋谷駅前にありながら、飲み慣れたベテランの方も安心して使える雰囲気です。オープン初日に取材してきましたので、その様子をご紹介します。
20番目の神田屋は、これまでと違う
(天狗発祥の店・旧天狗池袋西口店・現大衆スタンド神田屋池袋西口店)
近年、首都圏で増加中の低価格居酒屋(いわゆるセンベロ)『神田屋』は、老舗居酒屋チェーン『旬鮮酒場 天狗』などを運営してきた1969年設立のテンアライドの新業態です。
昨今の外食業界の状況の変化の中で、宴会利用から個人利用へと需要が変化するのに合わせ、『旬鮮酒場 天狗』から、一人でも利用しやすい神田屋への転換が大きく進みました。池袋西口エリアにあった天狗第1号店までもが神田屋へ転換しています。なお、店名については、一店舗目を神田駅前の新幹線ガード下に開いたことが由来です。
外観
神田屋20店舗目となる渋谷東口宮益坂下店は屋号に「ニュー」の文字が入り、神田屋の第二章という意味合いが込められています。神田屋も店数が増えてきたことから、チェーン店の宿命である「マンネリ感」を解消する意図が伝わってきます。
店は、宮益坂下交差点に面した駅前の地下一階。駅から徒歩1分の場所ですが、道玄坂方面とことなり宮益坂側はビジネス街の色が濃いのが特徴です。比較的落ち着いた雰囲気の場所の地階という立地から、同店は若者だけでなく、飲み慣れた大人が安心して過ごせる店を目指したそうです。
内観
もともとは喫茶店だった場所なのだそう。その後、旬鮮酒場天狗の座敷として使用され、改めて今回ニュー神田屋としてオープン。床まで板張りでぬくもりと落ち着きある空間です。
地階のとなりの店は、同じくテンアライド系の『旬鮮酒場天狗 宮益坂店』です。店は数段の階段と暖簾越しでつながっていますが、厨房も含め、別の店として運営されているとのこと。(お手洗いは共通)
店の顔となるのが、中央に鎮座するおでん鍋と、それを囲むカウンター席です。従来の神田屋とは違った上品な雰囲気です。カウンター席なら、おでん鍋を眺めながら選ぶことも可能。神田屋は厨房を隠す構造の店が多い中、ニュー神田屋は店員さんとの距離の近さが印象的です。
おでん鍋
おでんは、この日のために数日前からつくり始めているそうで、毎日継ぎ足しながら「おでんを育てていきたい」と副店長さんは話します。
おでんのつゆは、あご(トビウオ)を中心に複数の食材で出汁をとっています。上品な風味と澄んだつゆが特徴です。
品書き
お酒
これまでの神田屋と違って日本酒が主役になっています。テンアライドにお酒を卸している酒販店は、実はあの日本名門酒会の本部である「岡永」です。と聞けば、おでんを肴に日本酒が飲みたくなりませんか。
秋田の雪の茅舎 純米吟醸:550円、宮城の一ノ蔵 特別純米生酒:550円、新潟の越の誉 大吟醸生酒:550円、福島の大七 生酛純米:429円、長野の真澄 純米吟醸:429円、千葉の甲子 純米吟醸:429円、静岡の若竹 純米大吟醸:429円、京都・伏見の月の桂 にごり酒:319円、奈良の春鹿 生酛純米原酒:429円など。
従来の神田屋から続くお酒は、樽生ビール(サッポロ生ビール黒ラベル):319円、パンチレモンサワー:209円、デュワーズ12年ハイボール:429円、バイスサワー:297円など。
料理
「ニュー神田屋」の「ニュー」な部分は、店ごとに異なる料理の個性です。渋谷宮益坂の主役はおでんです。
おでんは、5種盛り合わせ:649円、大根:165円、手造りがんも:209円、手造りふわふわはんぺん:319円、やわらか牛すじ大根:429円、地たこ串:319円など。ちょっぴり贅沢な創作おでんも美味しそう。
既存の神田屋から続く料理は、塩つくね:220円、とろたくタワー:419円、砂肝刺し:319円、青唐辛子の卵炒め:319円、昔ながらのナポリタン:319円など。サイドメニューも同店で新規に加わったものがあり、おでんやのポテサラ:319円、大根おでんの唐揚げ:242円など。
せんべろセット
1,100円で、10枚のコインを購入し、1~3コインで料理やお酒と交換する方式です。酎ハイやたまごなどは1枚から交換可能で、最大10品注文できます。コンパクトな立ち飲みスペース限定のため、混雑時は利用できない可能性があります。
手頃な価格で、老舗チェーンが考えた本格的な料理を。
サッポロ生ビール黒ラベル(319円)
神田屋ですから、酎ハイやビールはとっもリーズナブル。一杯目はやっぱりビールがいいですね!もちろん、新ジャンルや発泡酒ではなく、正真正銘「サッポロ生ビール黒ラベル」です。サッポロビールと長年深い関係があるテンアライドのビールはどの店でも期待できます。
それでは乾杯!
おでんやのポテサラ(319円)
すぐでるおつまみに、ニュー神田屋初登場のおでんで煮込んだじゃがいもをつかったポテトサラダを。スパイシーなソーセージの風味も効いていてビールを進ませる一品です。
大七生酛純米(429円)
品書きの紹介でも書きましたが、テンアライドに卸す酒販店は、1884年(明治17年)から続く日本橋の老舗酒問屋「岡永」。岡永とテンアライドの経営者は親戚関係です。また、岡永といえば「日本名門酒会」発足人として、日本酒好きの間では有名な存在でもあります。
ということは、おでんを看板に掲げるニュー神田屋では、日本酒を飲まないわけにはいきません。いただいたお酒は、二本松の酒蔵がつくる、大七 純米生酛。昭和30年代から純米生酛造りに挑戦した同蔵を代表する銘柄です。
出汁のきいたおでんの美味しさを引きたたせる厚みのある食中酒といえます。
おでん5種盛り合わせ(649円)
数人で利用するなら、まずは盛り合わせが良さそう。丁寧に面取りされ、中まできつね色になった大根や玉子で、ビールや日本酒が進みます。
手造りふわふわはんぺん(319円)・手造りがんも(209円)
自社でつくるこだわりのはんぺんやがんも。ふわふわで柔らかく、出汁をたっぷりと蓄えています。
ささみ串わさび(209円)
アレンジ串も、どこか落ち着いた感じがして嬉しいです。柔らかくジューシーさを保ったささみ串。
プチトマト串(209円)
トマトとおでんの相性の良さにはいつも驚きます。タコ串、ささみ串などと同様、注文を受けてからつゆに入れています。
ウメシソつくね(385円)
もともと神田屋にあったつくねも、おでんで大変身。食べごたえのある一品です。
酒盗じゃがバター(385円)
見るからにお酒が進みそうな組み合わせです。じゃがいものクタクタ具合が絶妙。
トリフ香るウフマヨ(319円)
おでんの玉子をフレンチのウフマヨ風にアレンジ。こういう味付けもいいですね。
大根のトリフソース(319円)
アレンジ系おでんの中でとくに気に入ったのはこちら。トリュフソースの深いコクとあご出汁は意外なほど好相性です。伏見の「月の桂」のにごり酒とあわせて、ちびりちびりとつまめば、渋谷にいることを忘れます。
たこの唐揚げ(429円)
七味を効かせていただく、たこの唐揚げ。おでん以外のサイドメニューは、神田屋らしいアイデア料理揃い。
大根おでんの唐揚げ(242円)
見た目はおとなしいのに、噛むと熱々で火傷に注意の大根おでんの唐揚げ。出汁の旨味が凝縮しています。
出汁割り焼酎(319円)・出汁割り日本酒(319円)
出汁を楽しむならば、出汁割り焼酎や出汁割り日本酒でしょう。焼酎は飫肥杉、日本酒は鶴岡の酒蔵・加藤嘉八郎酒造がつくる「大山」がベースです。「おつまみいらず、これだけで充分」と思えてしまう液体おつまみです。
安くて、清潔で、雰囲気のいい「楽しい店」
“渋谷って落ち着いて飲める手頃な店が少ない”。そう思っている人は多いのではないでしょうか。いい意味で渋谷らしくない同店は、老舗飲食企業らしい安心できるサービスです。
「引き続きおもしろい業態をつくっていきます」と、テンアライド代表取締役専務の飯田健太さん。
外食の楽しみ方がより広がりそうな、神田屋第二章に大きく期待します。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/テンアライド株式会社・株式会社岡永・サッポロビール株式会社・ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社)
店名 | ニュー神田屋 渋谷東口宮益坂下店 |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2-20-11 渋谷協和ビルB1F |
営業時間 | 月~金曜日 16:00~23:00 土曜日 14:00~23:00 日曜日・祝日 定休日 |
開業年 | 2022年9月1日 |
公式サイト | 店舗情報 |