忘れられない焼鳥が何店かあります。そのひとつが、中野区沼袋の『鳥はし』です。住宅街の小さな焼鳥酒場で、お客さんもサンダル姿のご近所さんばかり。どこにでもある焼鳥屋に見えるかもしれませんが、その味はどれも絶品揃い。焼鳥・唐揚げが食べたくなったら、電車を乗り継いででも飲みに行きたい一軒です。
目次
私鉄らしい住宅街の“旨い”焼鳥酒場
東京の私鉄沿線は、普通列車しか停車しない街の駅周辺がおもしろい!
西武新宿線の沼袋は、新宿から各駅停車で約10分でいける各停しか止まらない私鉄らしい街並みです。歩行者、自転車の多い賑やかな細い商店街を、車線幅いっぱいに路線バスが行き交う様子は、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような雰囲気。
商店街が広がる街ですが、地元の人がお風呂上がりに繰り出すような酒場が多いのも特徴です。この街の酒場は人々の日常に組み込まれた、自宅の延長にあるような店揃いです。
やきとり『鳥はし』は、まさにそんな一軒です。
外観
東北出身のご夫婦が切り盛りする食鳥鶏精肉店の焼鳥コーナーからはじまった店で、現在は酒場営業がメイン。秋田・羽後長野の酒蔵・鈴木酒造店がつくる銘酒『秀よし』と、昭和の時代のサッポロビールのロゴが店内で飲めることをアピールしています。
暖簾をくぐった先には直線のカウンターがあり、テーブルなしの8席のみの店舗です。地元のお客さんが開店にあわせて集まりますので、タイミングによっては早くから満席になることも。夫婦や親子で飲みに来る人も多く、筆者も家族で飲みに来たことがります。
品書き
お酒
樽生ビール、瓶ビールともにサッポロ生ビール黒ラベル。日本酒は秀よし。ホッピー、ハイボール、レモンハイなどもあります。値段はどれもお手頃価格なのでご安心を。
ホワイトボード
マグロブツ:680円、玉ネギ豚バラ巻き:150円、手羽先からあげ:600円、鶏のからあげ:500円、こまいの生干し:400円など。
焼鳥はなんとほとんどが100円均一で、地鶏ネギマ、地鶏肉、合鴨ツクネ、鳥ツクネ、レバー、鶏皮、スナギモ、ミックス、ナンコツ、シンゾウ。手羽先2本:300円。
一品料理で豚足:500円、プレーンオムレツ:350円、地鶏スープ・鶏とうふ:500円、スナギモとキュウリのイタメ:500円など。
人気の理由は、シンプルな美味しさ
サッポロ黒ラベル中瓶
まずは、なにはともあれビールから。老舗に似合うビールメーカー・サッポロの北極星かしっくりきます。ビヤタンも昔ながらのロゴ入りです。乾杯!
接客やお酒提供が女将さんの担当で、大将は店前に向けて設置された焼き鳥台でもくもくと焼鳥を焼いています。それでも、ときどき常連さんたちの会話に加わったりと、皆さん和気あいあいとした雰囲気です。
ミックス・合鴨つくね(100円/本)
まず焼き上がったのは、ミックスと合鴨つくね。味はお任せにしたところ、粗挽き胡椒をたっぷりと効かせたスパイシーな味付けで出してくれました。
ミックス串はハツやスナギモなどの鳥モツ特有の脂の美味しさが秀逸で、濃厚な旨味に胡椒のアクセントが実によくあいます。つくねはあら引きでワイルドな食感。肉の旨味が口いっぱいに広がりました。
地鶏ネギマ(100円/本)
これほどきゅっと引き締まった鶏肉は久しぶり。それでいて“ぱさつき”は皆無で、頬張るとじゅわっと肉汁が滲み出てきます。みりんの甘さが効いたタレとの相性が抜群によく、追加で同じものが欲しくなります。
ほうれん草胡麻和え
簡単な箸休めも、老舗酒場のカウンターならば数割増しの美味しさ。
メリハリある鶏の美味しさには、淡麗さと米の旨さのコントラストが楽しい「秀よし」を。普通酒ながら、県産米めんこいなを使用するなど、地酒のこだわりあり。鶏食文化の秋田内陸部の酒蔵ですから、料理もお酒も素直な相性の良さを感じます。
手羽先からあげ(600円)
サイドメニューのおすすめは、手羽先からあげ。隣の常連さんにつられてはじめて注文しましたが、これが驚くほど美味しいです。
鶏の味が濃い、そしてほんのり甘く独特な下味が強烈にお酒を進ませます。パリッとした衣とジューシーな肉の食感が心地いいです。
角ハイボール(中外200円)
ハイボールはサントリーウイスキー角です。ソーダと別々なので、追加でウイスキーをもらえばオトク。
プレーンオムレツ(350円)
鶏卵精肉店発祥ならではの、鶏料理のオンパレード。シンプルなオムレツだって嬉しいです。
レモンハイ
屋台感覚で軽く串を数本と瓶ビール1本というクイックな使い方のつもりが、ついいろいろ食べてしまいました。だって美味しいですから。
固定メニューではないものの、鶏ヤ煮込み:480円や、鶏ヤのラーメン、第3日曜日限定の鶏ヤのカレー:650円などおもしろい料理も登場します。西武新宿線沿線にお住まいで、鶏のやきとりがお好きでしたらぜひ一度訪ねてほしい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 焼鳥とりはし(小松屋鳥肉店) |
住所 | 東京都中野区沼袋2-32-6 |
営業時間 | 17:00~23:00(火定休) |
開業年 | 約半世紀前 |