町屋『甲州屋』昭和23年から続く老舗名酒場で、絶品の真鯛昆布〆を

町屋『甲州屋』昭和23年から続く老舗名酒場で、絶品の真鯛昆布〆を

2022年7月20日

町屋を代表する大衆酒場のひとつ『甲州屋』。70年以上続く老舗で、現在は二代目が切り盛りしています。創業当初はモツ煮込みの店でしたが、いまでは料理のバリエーションはとても豊富。とくに旬の魚介類は割烹顔負けの美味しさです。屋号は初代女将の出身地が由来となっています。

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続く店には理由がある

東京都荒川区町屋。尾竹橋通り沿いに店を構える『大衆酒場 甲州屋』。京成・東京メトロ千代田線の町屋駅から徒歩1分ほどの場所です。

創業は1948年(昭和23年)と歴史があり、創業当初は“外食券食堂”のように配給指定された酒場だったと言われてます。戦後すぐの食糧難の中でモツ料理や煮込みを提供してきた『甲州屋』も、いまでは鮮魚や鶏料理を豊富に揃え、旬の刺身が看板メニューになっています。

外観

軽く背筋を伸ばして飲みに行きたい、甲州屋はそんな雰囲気の酒場です。たなびく紅色の暖簾に思わず吸い寄せられます。

さて、比較的新しく感じる店構えとなっていますが、これは2010年春に全面改装をしたため。以前は間口が広く木枠の引き戸が並ぶ典型的な「昭和の酒場」という佇まいでした。

店の構造は変わらず、昔ながらの酒場に多い厨房に向いたカウンター席と、その対面に小上がりというつくり。先代の息子さんである二代目大将と奥さんの女将さんが「いらっしゃい」と気持ちよく迎えてくれます。

常連さんは、「そろそろ夏の魚の頃だね」なんていう感じで、大将と今日の魚料理について会話を楽しまれています。

パリッとした雰囲気、和む接客、そしてこれから出てくる料理への期待。あぁ、いい店だな…。そう思えてきます。

品書き

お酒

ビールはサッポロビール。樽生はサッポロ生ビール黒ラベル:650円、瓶ビールは、黒ラベル:570円とヱビスビール:650円。

生ホッピーこと樽詰ホッピー:460円もあります。

サワー類は、チューハイ:410円、レモンサワー:410円、お茶ハイ:430円、加賀棒茶ハイ:430円など。

日本酒は小西酒造(兵庫県伊丹市)の白雪で1合:410円をはじめ、澤乃井:580円、七賢:630円など。本格焼酎はからり芋:460円など。

黒板メニュー

季節を映した黒板メニュー。この日は豊後アジ刺身:750円、ホタルイカ酢味噌:470円、ブリ刺:640円、いわし刺:580円、真鯛昆布じめ:690円、かつおタタキ:640円、焼そらまめ:580円など。しめさば:580円、銀ダラ西京焼:860円は黒板メニューでありつつ、店の人気メニューでもあります。

定番メニュー

お刺身盛り合わせ:1,970円、まぐろ刺:920円、馬刺:580円、宮崎産鶏白レバーのたたき:800円、鶏わさ:690円、やきとり(2本):460円など。冬季ははまぐりなべ:1,200円、石狩なべ:1,740円なども。

カニカマやわかめを卵焼きで巻いた和風サラダ:690円も人気。先代の頃から変わらないにこみ:420円も大定番。

丁寧で味がいい、大将の仕事に惚れる

サッポロ生ビール黒ラベル(650円)

ピカピカに磨かれたビールサーバーから大きな中ジョッキに注がれたサッポロ生ビール黒ラベル。泡は細かくフロスティミスト(泡のモヤ)が泡を持ち上げます。温度、ガス圧ともに完璧で、最高の提供品質です。それでは乾杯!

お通し

この日のお通しはマカロニサラダ。

真鯛昆布じめ(690円)

久しぶりに美味しい真鯛昆布じめを食べました。鯛の厚み、〆具合、濃厚に引き出された旨味とコク。醤油はわずかな風味づけ程度に、そのまま頬張り、余韻にお酒をあわせたくなります。

ねっとりとした食感。鮮度のよいコリコリの真鯛とはまた違った美味しさがあります。腕のいい大将の料理。今回久しぶりに訪ねましたが、もっと通う必要がありそうです。

大根けんではなく大根の柚子甘酢漬けを敷いているのも、お酒好きとしてはとても嬉しい。これだけで一品増えた気分です。

白雪(410円)

あわせるお酒は白雪のぬる燗。白雪といえば室町時代から続く日本最古の日本酒銘柄。整った辛口で正統派の美味しさ。真鯛と相性が良いのは言うまでもありません。

ブリ大根(520円)

初代がつくった伝統のにこみもよいですが、魚に力を注ぐ二代目のブリ大根も実にいい味です。東京らしい甘めで醤油を効かせた味付けは、脂がのったブリのアラによく合います。かたちを保っていても、箸をいれるとトロフワっとほぐれ、頬張った瞬間に上品な脂の旨さが口いっぱいに広がります。

丁寧に面取りされた大根は、ゆず風味とブリの旨味を吸って、芯まで飴色に染まっていました。お酒を進ませる深い余韻が心地いいです。お銚子をもう一本、ぬる燗でもらって、ちびりと口に含んでは、続けてブリをひとくち。時間を忘れて夢中になって食べきりました。

鶏白レバーのタタキなど、気になる料理はまだたくさんあります。何度も通い、すべての料理を食べてみたい。甲州屋はそう感じさせる料理が美味しい酒場です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名大衆酒場 甲州屋
住所東京都荒川区荒川6-5-3
営業時間16:30~23:00(火定休)
開業年1948年