ショーケースに並ぶのは、色とりどりのフルーツが載ったあんみつ。けれど、店の入り口で力強くはためく赤い幟には「餃子」の二文字が。ここは甘味処?それとも町中華?日暮里駅前に佇む『花家』は、甘党も酒飲みも虜にする、二つの顔を持つ不思議な名店です。
戦後の日暮里で生まれた、甘味処の名物餃子

JR日暮里駅を出てすぐ、谷中銀座へ向かう人の流れを見守る場所に『花家』はあります。その歴史は古く、創業は終戦直後の1945年。店名の通り「生花店」として始まりましたが、やがて創業者の奥様の夢であった甘味処『花家』へと姿を変えました。
当初はあんみつなどを提供していましたが、復興期の1950年代になると「甘いものだけでなく、お腹いっぱいになる食事もしたい」というお客さんの声に応え、ラーメンや餃子をメニューに追加。地域の人々の要望に寄り添ううちに、現在の「甘味も食事も楽しめる店」というスタイルが確立されたのです。

現在の店は数年前に建て替えたもの。細長い店内は、列車の食堂車を思わせるような雰囲気。地元のご家族から、噂を聞きつけた喫茶・中華料理愛好家まで、様々なお客さんで賑わうこの空間は、日暮里谷中エリアになくてはならない存在です。
これぞ最強のビールのお供、肉汁あふれるジャンボ餃子

オムライスやかき氷も人気ですが、酒場好きの私の目当ては名物の餃子です。瓶ビールをお願いして、主役の登場を待ちます。厨房から漂う香ばしい匂いに、期待は高まるばかり。
ビアタンを一番搾りで満たして、それでは乾杯!

運ばれてきた一皿を見て、思わず「大きい!」と声が出ました。

一般的な餃子のひと回り以上はあろうかという、堂々たるジャンボサイズです。

箸で持ち上げると、餡がぎっしりと詰まった嬉しい重みが伝わってきます。

焼き目の香ばしさがたまりません。そして一口。

底はカリッと香ばしく、自家製という皮は驚くほどもっちり。その中から、ザクザクと歯ごたえを残した国産キャベツと、ジューシーな豚肉の餡が溢れ出します。

なにより、ガツンと効いたニンニクと生姜の風味。このパンチのある味わいが、キリッと冷えたビールに合わないわけがありません。「甘味処には似合わぬインパクト」と評されるのも納得です。これはまさに「餃子呑み」のためにある一皿。ビールがもう一本欲しくなります。
谷中散策の休憩場所
戦後の創業から三代、地元の人々に愛され続ける『花家』。餃子で一杯飲んで、本格あんみつで〆る。そんな唯一無二の体験ができる、貴重な一軒です。寺町らしく花屋からはじまり、参拝客の休憩場所として親しまれてきた店で、街の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょう。
店舗詳細



店名 | 花家 軽食 甘味 |
住所 | 東京都荒川区西日暮里3丁目2−2 |
営業時間 | 11時00分~19時30分 火曜日定休 |
創業 | 1945年 |