中華と喫茶店のハイブリッド、町屋の老舗『中華喫茶 川ばた』。実は、樽冷黒ラベルの大ジョッキや酎ハイが揃う大衆酒場でもあります。土日もお昼から通しで営業、名物の巨大餃子を肴に下町の昼飲みを満喫しませんか。
目次
老舗飲食店は、町のタイムカプセル
町屋は東京都荒川区のほぼ中央に位置します。明治までは枝豆などを栽培する田園地帯でした。
大正時代に路面電車「王子電気軌道(現在の都電荒川線)」が開通すると次第に宅地化が進みます。1931年(昭和6年)の京成電鉄町屋駅開業をきっかけに、鉛筆工場などの町工場が次々と建てられました。また、それらを囲むように、細い路地には住宅が密集するようになります。
町屋は乗換駅となったことで商店街が形成されるようになり、さらに工場労働者を相手にする大衆酒場や食堂が立ち並ぶにぎやかな街へと成長していきます。この頃に荒川名物の「もんじゃ」も広まったと言われています。
1969年(昭和44年)に営団地下鉄千代田線が開通したことで、町屋の利便性はますます向上。都心へのアクセスの良さからベッドタウンとしての価値が高まると、工場群は次第にマンションへと姿を変えていきました。
千代田線開通にあわせて商店街には数多の飲食店が開業しますが、それらのお店も創業から数十年。町屋は老舗が残る味わい深い街となりました。
外観
町屋駅北側にある『川ばた中華喫茶店』は、町屋が発達してきた一時代を切り取ったような雰囲気があります。町屋に千代田線が来た頃は、ファミリーレストランブームの真っ只中。『川ばた中華喫茶店』は個人店ですが、その店構えは当時のファミレスをイメージしたであろことが見て取れます。
ガラスのショーケースには、中華だけでなくオムライスやコーヒーフロートまで並んでいます。
内観
町の中華料理屋特有の赤いテーブルはもちろん、カウンター席もありません。厨房も店の奥にあります。
コーヒーを飲むおばあちゃんや、漫画を横にラーメンを啜る青年、そしてビールを飲むお父さん。1980年頃のレストランの面影が残る店内で、皆さん思い思いに午後のひとときを過ごしています。昭和にタイムスリップしたような雰囲気ですが、実に居心地がいいです。
乾杯は樽冷式の生ビールで
30数席はある比較的大きなお店です。テーブルに混ざって大型の樽冷式ビールサーバーが設置されていることは、ビール好きとしては見逃せません。
一杯目は生ビールといきましょう。レトロな赤星印のジョッキで供されるサッポロ黒ラベルです。それでは乾杯!
お酒を注文すると、一杯目は乾き物がついてきます。
品書き
お酒
クリームソーダやおしるこが並び、甘味処感が強いものの、アルコール類もなかなかの充実ぶりです。紹興酒や焼酎はボトル売りまでしています。
樽生ビール(サッポロ黒ラベル)大:840円、中:550円。瓶ビール(キリン一番搾り・サッポロラガー)中びん:540円。日本酒:490円、ウーロンハイ・レモンハイ・お茶ハイ:430円など。
おつまみ
麺類、ご飯類の品数の多さに驚きますが、一品料理も魅力的です。とくに餃子は創業時からの名物料理だそう。
餃子3個:350円、餃子5個:540円、もつに煮込み:550円、春巻き:550円、野菜炒め:770円、麻婆豆腐:830円など。
幼少の頃に憧れた中華料理店の味
餃子5個(540円)
餃子皿からはみ出さんばかりの巨大餃子に驚きます。握りこぶし大の餃子は、箸で持ち上げるとずっしり重く、このまま口へ運ぶのは難しいくらいです。
しっかりと油を使いカリッと揚がった焼き目とモチモチ感が残る皮。餡はキャベツと豚をかなり丁寧に練り込んでいるようで、ねっとりとした食感が印象的です。ニンニクをはっきり感じる味付けで、ビールが進むこと間違いありません。
それにしても大きい。ひっくりかえすと、しっとりとした皮は餡が透けているのがわかります。
サッポロラガー(540円)
よく冷えた瓶ビールを、トクトクとビヤタンに注ぎ、次の料理に備えます。
酢豚(1,600円)
懐かしのパイナップル入り酢豚が食べたくて注文した一品。これまたボリュームがあります。
豚肉、たけのこ、ピーマン、人参、玉ねぎ、椎茸、グリンピース、そしてパイナップル。具だくさんが嬉しいです。
味は昔から好きなコクのある甘酸っぱさ。酢豚好きにはたまらない、昔食べた町の中華屋さんの味そのものです。
紹興酒(440円)
家族や友人と、昼間から料理とお酒を囲んでゆっくりおしゃべりするのにはぴったりな一軒です。ある意味、喫茶店感覚。こういう雰囲気の店は東京といえどもそうそう無いでしょう。
中華飲みがお好きでしたら、近隣の散歩を兼ねて訪ねてみてはいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 川ばた中華喫茶店 |
住所 | 東京都荒川区町屋1-2-14 |
営業時間 | 11:00~21:00(木定休) |
開業年 | 半世紀前 |