『くもん屋』は地元の人が集う人気店。腕のいいベテラン大将がつくる土佐料理や高知の地酒に舌鼓を打ちながら、高知のゆっくりとした夜を楽しみます。観光客向けではないものの、地元の料理を手頃な価格で楽しませてくれる、間違いのない一軒です。
目次
静まり返った街と、店の賑わいのコントラストがたまらない
鰹の土佐造り、うつぼタタキ、鯨料理など、独特な食文化が息づく高知。夜は地元の料理で一杯やりたいものです。今回は、地元の人が集う小さな居酒屋『くもん屋』を訪ねます。
JR高知駅からは徒歩10分ほどに位置する高知の繁華街、はりまや橋周辺までやってきました。アーケードや飲食店が集まる路地は賑やかですが、18時を過ぎたオフィス街は人通りはまばらで静かなもの。そうした場所に灯る大提灯には一層誘われます。
外観
戸建ての2階建てに、縄のれんと提灯が下がる店構えは、まさに居酒屋といった佇まいです。1980年代の創業で、まもなく40年となる店。大将の料理は美味しいと、開業の頃から通う常連さんもいるそうです。
内観
調理は大将一人で、若いお手伝いさんがフォローします。大将が揃える料理は定番の土佐料理にとどまらず、地元の知る人ぞ知る食材も用意していて、「こんなのも今日はあるよ?」と旬の料理を提案してくれるような店です。
調理場の前は常連さんが集まる7席ほどのL字カウンターで、特等席でしょう。2階には座敷がありグループ利用は奥へと通されます。
お店の人、そしてお客さん同士の距離が近く、カウンターの端と端でも会話ができるほどのコンパクトなつくりです。その中で大将がつくる美味しい料理が次々と完成し、みんなで「これ美味しい、あれも美味しそう」と食べ物の話で盛り上がります。この一体感は独特です。
品書き
お酒
樽生ビールは、大樽のキリン一番搾り。瓶ビールは、アサヒスーパードライ、キリンラガー、サッポロ黒ラベルの三種類です。
期待通り、高知の地酒も充実しています。
定番が土佐鶴(安田町・土佐鶴酒造)と桂月(土佐町・土佐酒造)。純米酒は美丈夫(田野町・濵川商店)、久礼(土佐久礼・西岡酒造店)など。冷酒は瀧嵐(いの町・高知酒造)や、藤娘(中村・藤娘酒造)、司牡丹(佐川町・司牡丹酒造)。
黒板メニュー
はらんぼ塩焼き:600円、くじら串カツ:1,000円、うなぎ蒲焼・白焼:1,300円、鉄火巻・土佐巻:600円、鯛・金目煮付:1,000円、おやどり塩焼き:800円など。
品書きで記載はないものの、口頭で今日の刺身を大将が説明してくれます。高知人の大好物の鰹はもちろんのこと、鯛やイカ、たこ、貝類などが用意されています。一人分から盛り合わせも注文可能です。
定番料理・季節料理
いのしし塩焼き:700円、べいけん(カイワリ)煮付:700円、地かきフライ/バター:800円、天然ぶり塩:600円、窪川牛にく:1,200円、京風地かきだんご:800円、あおさ天ぷら:600円、しめ鯖:600円、沖うるめ天:500円、太刀魚天ぷら:500円、いたどり:500円、川えび:800円、天然ぶりカマ:600円など。
魚介類にとどまらず川魚から猪まで幅広い品ぞろえは、山と海に囲まれた高知らしいと言えるでしょう。
鰹だけじゃない!知れば知るほど好きになる高知の「食」
キリンラガーと鰹土佐造り
高知の人柄や料理から感じるイメージにぴったり、「たっすいがは、いかん!」の気持ちで頂きます。キリンビールが高知限定キャッチコピーとしても有名です。
ということで、まずはキリンラガーで乾杯。
刺身でもたたきでも食べさせてくれる鰹。食べ方に悩んだらやはり土佐造りでしょうか。玉ねぎやニンニク、とまとなど、野菜類の生産も盛んな高知ですし、これらを一同に揃えたのが土佐造りですから。
スライスにんにくと玉ねぎ、たっぷりの薬味と一緒に頬張ります。大きく頷いてしまうほどの美味しさです。普段からたくさんの鰹を食べている地元の人が、ここでも注文する理由がわかります。
たこなす
品書きにある「タコナス」「イカナス」が気になります。気になったら尋ねるよりも、注文して実際に食べてみることが酒場の楽しみ方たと思っていますので、さっそくチャレンジ。タコとイカを一口大にそろえて揚げたものが出来上がりました。
そのままのネーミングなのね、と思いながら食べてみると、これがまた良い味付けで驚きます。鰹節と出汁醤油が味を引き締めているようで、日本酒を延々と飲んでいたくなるようなおつまみです。
あおさ天ぷら
一人飲みということもあり、少しずついろいろ食べさせてくれる大将。高知の言葉で「これをつまみに飲んでいってね」と。
桂月お燗など、数杯飲んで心も体もぽかぽかに
地元のお酒とおつまみの相性なども教えてくれます。ぐい飲みで提供されるなど、ざっくばらんなスタイルもとても気に入りました。
四方竹炒め
秋から冬にかけて、高知の人がお酒のつまみとして楽しみにしている「四方竹(しほうちく)」の話しで盛り上がりました。店にもあるから食べてみて、と少し頂くことに。断面が四角形だから四方竹と言うのだそう。くキュッとした独特な食感と甘さ、出汁の染み具合が格別。
地元の人に囲まれて、旅先の思い出になるひととき
ベテランの常連さんと大将の会話から感じる地元言葉の暖かい雰囲気も心地いいです。鰹や生姜だけでなく、四方竹のようなまだ全国的には知られていない食材がたくさんあるよと皆さんに教わりました。大将との会話も大きな魅力です。
高知のことが更に好きになるくもん屋での時間。高知を訪れた際はぜひ訪ねてほしい名店です。値段の表記がないものが多いですが、一般的な居酒屋価格なのでご安心を。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | くもん屋 |
住所 | 高知県高知市はりまや町1-4-15 |
営業時間 | 17:30~23:30(日定休) |
開業年 | 1984年 |