安芸「白牡丹」 太平洋を望む町の老舗カウンターで、地酒と鳥の足

安芸「白牡丹」 太平洋を望む町の老舗カウンターで、地酒と鳥の足

高知県東部の中心地である安芸。国指定名勝「室戸岬」へ高知市から向かう際の玄関口であり、古くから漁業と農業、畜産業で発展した町です。

安芸川、伊尾木川、ふたつの河川が町の中心を通り太平洋に流れ込み、かつては河川を使って山々から切り出した材木が運ばれ、この町に集められました。産業の拠点となった安芸には人々が集まり、人が集まれば酒場もうまれます。

古くからの街並みが残り老舗酒場もあるこの町で、創業60余年の店「白牡丹」をご紹介します。

 

安芸へは、高知駅(後免駅)から室戸岬に近い奈半利までを結ぶ土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線で、JR高知駅から55分ほど。鉄道の開通は2002年と比較的新しいです。

 

特急列車のような座席の車両もあり、特別料金なしでちょっぴり贅沢な気分。太平洋を眺める高架区間を長く走るので車窓もなかなか。

 

町の玄関、安芸駅。地元の特産品なども売られていて、路線バスやタクシーも集まる旅の拠点らしい佇まい。

駅周辺は主要な行政機関や観光情報センター、観光ホテルなどがあり、飲食店が多いエリアも徒歩圏。潮の香りをかすかに感じつつ、ふらふらと夕暮れの安芸の町を散策しましょう。

 

やってきました、白牡丹。白壁土蔵風の外観が目印が目立つのですぐわかります。お店の正面にあるあるホテルは、この町でキャンプをするプロ野球球団御用達で、白牡丹にも野球選手のサイン色紙が多数飾られています。

 

お店は小上がりとカウンターというオーソドックスなつくり。若いご主人が中心になって切り盛りされていて、老舗でも活力たっぷり。美味しいもの、準備していますよ!言わんばかりに厨房から熱が伝わってきます。

 

安芸市は、激動の幕末土佐藩で活躍し、近代日本に大きな影響を与えた岩崎弥太郎の出身地。彼が創立に関わったビールといえば、ご存知キリンビールです。土地と歴史をエッセンスにして、キリンラガー(500円)で乾杯!

 

生ビール、瓶ビールともにアサヒビールも取り扱い。酎ハイは380円と手頃。日本酒は別枠で、地元や酒処新潟のお酒が揃っています。

 

ずらりと並ぶ短冊メニューから、今日の一品を探します。女川のサンマなど、四国に限らず各地の食材が並んでいます。にんにく唐揚げ、かつお刺しなどに高知らしさあり。

 

名物は鳥の足というもので、のちほど頼みます。

 

おすすめメニューは、かつお刺しやタタキを筆頭に、鶏肉や安芸が生産量トップクラスの茄子など。魚が少ないのは意外かもしれません。店名を冠した白牡丹焼きは、鶏レバと砂肝をニンニク味噌で焼いたもの。

 

「山菜の王者」と名高い自然薯(じねんじょ)は高知県安芸の特産品です。高知県の郷土料理「山芋鍋」にして食べるほか、もちろおろしただけでも美味しいです。もっちもちで濃厚な味わいにお酒が進みます。

 

お酒を傾けつつのんびりと過ごしていれば、200mほどしか離れていない太平洋の波の音がかすかに聞こえてくるような、そんな空間です。旅先の酒場に感じる旅情はたまりません。

 

さて、名物「鳥の足」(800円)が焼き上がりました。鶏もも肉の照り焼きのことで、ボリューム満点です。

 

皮はパリっとしいて、それをタレがまとい絶妙なパリフワ感。しみでる脂が実に美味しそう。ほどよくタレが身の中まで染み込んでいて、しっかり濃厚な味はお酒のおつまみにぴったりです。

港町でありつつ、農業・畜産も盛んな地だけに、魚も鶏も味わえるのが白牡丹。

 

酎ハイ(380円)は昔ながらのしっかり入るジョッキででてきます。

 

地元のベテランのお客さんが多く、女性も男性に負けず劣らず元気に杯を乾かしている姿が印象的です。

旅先で飲む楽しさを改めて感じさせてくれるよき酒場。かもめの声に見送られて、ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

白牡丹
0887-35-2744
高知県安芸市矢ノ丸1-7-4
17:00~23:00(月定休)
予算3,000円