1965年(昭和40年)創業の「フランソワ」。現在は先代のマスターのもとで修行した二代目が店を守ります。建物は内外ともに、創業時からほとんど変わっておらず、一歩入るとまるでタイムリープしたような気分になります。
飲酒の都・高知。日本一お酒を飲むと言われる高知の人々。県の文化とされる宴席「おきゃく」は、なにも会社や親族の宴会だけでなく、毎晩高知の飲み屋街全域でおこなわれています。それは、たとえオーセンティックバーであっても――。
現存する高知最古の路面オーセンティックバーと言われる「フランソワ」。初代がお洒落とお酒がお好きな方で、創業にあたっては京都のサンボアなどの影響があったと聞きます。
現在はお店を手伝っていた三好誠さんがフランソワの襷を受け取り、二代目としてシェーカーを振っています。
店はほとんどが創業時のまま
もともとは創業者ご家族の住居として作られた建物だそうですが、はりまや橋にも近い南四国最大の歓楽街の中に位置しています。店先は大勢の”べろべろのかみさま”風の人々が行き交うものの、フランソワに気づく人はさほど多くはありません。
店に入ると、お客さんとマスターの静かな会話だけが聞こえてきます。
バックバーに列ぶのはスタンダードカクテルのレシピに登場するリキュールの数々。シングルモルトはほどほどに、昔ながらのカクテルバーのスタイルを守っています。
高知に来ているのですから、当然ぎやかな場所で飲んで食べてメートルを上げてくるわけです。そうしてフランソワにたどり着くと、あら不思議。まるで頭と肝臓が再起動したかのように、少し上品で洒落た客になろうとしてしまいます。バーに行くといのは、このメリハリを楽しむことかもしれません。
ジントニックも高知の味
いらっしゃいませ。
すっとキレイな所作でセットをし、注文を聞くマスター。それでもパリっとした東京風ではなく、やはり「おきゃく」文化の中にあるような、心から迎えてくれるぬくもりある接客を感じさせてくれます。
ジントニック。
タンカレーベースに、ウィルキンソンのトニックウォーターを半々にいれて、ライムを落としキリっとしあげた一杯。プラシーボ効果なのは承知の上で、やはり高知らしい味に思えます。タンカレーが濃いめだからでしょうか。
シェイカーで作る傑作カクテル
ラム、カンパリ、ベルモットをシェイク。オリジナルカクテルを手際よくしあげる三好マスター。
飲んでいると次第にカウンターのお客さん同士で打ち解けてきます。どこから来た、どんな店で飲むか、そんな話が多いですが、聞けば皆さん地元にお住まいの常連さんだそう。高知は、朝から飲める市場、昼飲みの老舗、夜は屋台のギョウザまで、お酒を飲むには十二分に事足りる街。オーセンティックバーは、やはりフランソワがなくてはならない存在なのだと皆さん。
マスターも笑いながら、それでも店はうるさくなりません。店の外のお祭りムードの賑わいが嘘のように、静かに時間が過ぎていきます。
これから餃子を食べに行くのですか?高知の梯子は終わらないらしいです。
私もいっときの休憩と、酔いを味わって、最後にもう一軒どこかへ梯子をかけたくなってきました。
マスター、心地よい時間をありがとうございます。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | フランソワ |
住所 | 高知県高知市追手筋1丁目9-4 |
営業時間 | 営業時間 19:00~25:00 定休日 日曜日(連休の場合は連休最終日) |
開業年 | 1965年 |