物流が進化して、飲食店もますます専門性を高めた業態が誕生し、大都市圏にいれば大抵の食材を肴に、その土地のお酒が飲めるようになりました。
それでも満足はするのですが、居酒屋は酒と肴だけが美味しさではありません。店主や常連さんといった人が醸し出す空気感こそ、居酒屋の最大の魅力ではないでしょうか。
となれば、飲みに行くしかない。
全国で一番のかつお消費量を誇る高知は、同時に飲酒代は東京を抜いて全国一位を誇る飲酒特区といえる街。
※いずれも「家計調査結果(二人以上の世帯)品目別データ(平成27年計)」(総務省統計局)
そんな高知の風と日本一食べられているかつおを求めて、高知飲み歩き旅行はいかがでしょうか。
JR高知駅の駅前こそ、広場やホームセンター、ホテルなどが並ぶ整然とした町並みですが、とさでんに乗って2電停ほど進めば、そこは巨大な飲み屋街が広がります。
どの路地が飲み屋街とか、そういうものではなく、高知の繁華街はそのすべてが酒場だらけなのです。
そんな高知の土地の味を楽しむならば、地元御用達でファンが多い「居酒家しゅん」を覗いてみては。予約必須のの人気店で、家族経営の暖かな雰囲気の居酒屋です。
「たっすいがは、いかん!」のキャッチフレーズで知られる高知はキリンの街。街中に黄色いキリン社の看板が多数みられます。
高知は坂本龍馬の故郷。キリンビールの創業に関わるトーマス・グラバーと岩崎弥太郎の二人は、坂本龍馬によって交流がはじまったと言われています。そんな背景もあって、キリンファンの多い街です。
ビールはキリン。高知は日本酒も個性豊かで美味しい銘柄が多数。「しゅん」でも、土地のお酒がずらりと揃います。比較的、現代的なラインナップですが、定番酒ももちろん置いてあります。
大都市圏ですと、生ビールは一番搾りというパターンが多いですが、高知は逆のお店も多いのだそう。「しゅん」も、大樽がキリンラガー(RL)で、瓶のほうが一番搾りという組み合わせ。それだけ、古くからキリンの生ビールが浸透しているということの現れでしょうか。
状態抜群の生ラガーで乾杯!
「しゅん」は、料理の種類がとにかく豊富。それでいてご当地食材や郷土料理がほとんどというのですから、出張や観光で高知入りした人には、あれもこれもと食べたくなる内容。
定番のかつおから始まり、高知の海鮮の定番である”うつぼ”やドロメ、のれそれ、島は違えど鹿児島も近いのできびなごなんかも入ってきます。とにかく食材の宝庫ということがわかる内容です。
定番メニューには居酒屋のいつもの顔ぶれ。それでも、しまんとポークやメヒカリ、地とまとと充実の内容。地元の人の宴会利用も多いというのが頷ける品書きです。
メニューから頼んでもよいのですが、悩んだらお店の方に聞くのがおすすめ。飲んで食べて、普通の居酒屋価格できっとよい内容を提案してくれるはず。
まずは大定番、かつおの塩たたき。これを食べに来たわけです。生スライスのにんにくを載せて頬張れば、火をあてた部分からくる脂たっぷりの滴るかつおを旨味と、生の部分の独特な淡白な美味しさが口の中で混ざり、最高なのです。
厚さ2cmはあるようなサイズで、口の中いっぱいで食べるのが「しゅん」のスタイル。
かつおはかつおでも、こちらは「ハガツオ」。東京ではあまり知られていませんが、西日本ではおなじみのかつおの一種。キツネという名で北陸で食べることもありますが、やはりかつおの街で食べるものは一味違います。
旬はまさしく寒い時期で、脂がのってかつおとは違ったねっとりとした味わいが楽しめます。
高知県内の港で水揚げされる魚が日替わりではいってくる「しゅん」。まさに旬の通り、シマキリと呼ばれる鰹のあかちゃんなども食べることができます。もちろん、ブリなどのおなじみの食材も、産地で食べるとイメージはかわります。うつぼの刺身は東京の海鮮飲み屋ではまず見かけません。
高知で食べられている「ドロメ」は、生しらすのこと。2cmほどの鰯の稚魚で、鮮度が重要な食材。時間がたつとべっとりしてくるのですが、ここのはプリプリ。独特な醤油でちゅるっと飲めば、高知の日本酒がくいくい進むはず。
四万十川の青さのりの天麩羅を頼んで、お酒は国産ウィスキー・富士山麓ハイボール。
さくさくの食感で風味がすっと広がります。天つゆもよいですが、抹茶塩で軽い感じで食べたい。四万十川の汽水域で採れるそうです。
かつおの塩たたきの魅力はもちろんなのですが、アットホームな感じも含めて旅先の酒場を感じます。カウンター席もありますがボリュームある料理の数々なので、ここは家族や友人などと数人で飲みに行ったときに一番のパフォーマンスを発揮すると思います。
居心地よしの人気店。ぜひ予約して立ち寄ってみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
居酒家 しゅん
088-824-0603
高知県高知市追手筋1-3-29 1F
17:00~23:00(日定休※月が祝の場合は日営業)
予算3,000円