たった5席しかない店に予約が殺到!高知県いの町の超人気店『わか鳥』をご紹介します。全国的には知られていないものの、その地域では圧倒的な人気を誇るオンリーワンの酒場というのはまだまだ存在します。
紙の町「いの」
高知駅からJR土讃線の普通列車に揺られること20分。土佐和紙が特産の仁淀川沿いにある山間の町にやってきました。駅の近くには紙の博物館などの観光施設がありますが、目的はもちろん大衆酒場です。
駅の周辺には県の施設や町役場、学校や病院が集中しています。また、現在も紙の町と言われる所以でもある、日本製紙グループの事業所が操業中。そのため、ローカル線の駅ながらそこそこの賑わいがあります。
とはいえ、駅前には飲み屋街らしいものはなく、コンビニや焼肉店などが点在するのみ。目指す酒場に入れないと高知駅へUターンとなってしまいそうです。
有名フライドチキン店もびっくり!?予約電話が途切れない店
外観
さて、今回ご紹介する『わか鳥』は、そんなロケーションにあるお店。駅から北へ2分ほど。県道のトンネル手前を曲がった先という、地元の人でなければまず通らないような生活道路に面しています。
ここが飲食店であることを表すものは、名酒菊水のロゴとともにはいる「わか鳥」の文字だけ。店頭は駐車スペースも兼ねているため、ぱっとみた印象では一般家庭の戸建てのようです。
17時、店内に電気が灯ると営業開始の合図。次々とお客さんがやってきます。
内観
料理に実直、接客は物腰柔らかなベテラン大将が中心となって、ご家族で切り盛りされています。創業は1970年頃で、ご主人は二代目にあたるそうです。
外観からおわかりの通り、非常にコンパクトなお店です。また、昨今は席の間引きがおこなわれており、カウンター席はたった5席しかありません。一般利用はここに滑り込む必要があります。家族連れなどのグループでは店奥の客間を利用することになります。
大型の二槽式フライヤーが客席目の前に鎮座しています。営業開始とともに、透き通った油の中へ次々と鶏肉が流し込まれ、店内はこうばしい香りに包まれます。
開店と同時に、電話が鳴り止まないほど持ち帰りの注文が入り始めます。当日分だけではなく、翌日以降の予約も多いようです。そのため、当初店内には私一人だったものの、フライヤーは常に全開で稼働しており、ザンギや手羽などが次々と揚がっていきます。
乾杯は樽生「アサヒスーパードライ」で
なにはともあれ、ビールから。香りだけで1杯飲み干してしまいそうです。樽生のアサヒスーパードライをもらって、では乾杯。
品書き
お酒
樽生ビール(アサヒスーパードライ)︰550円、瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶):550円、日本酒:350円
料理
あし:650円、てば:650円、ざんぎ:550円、きも:350円
品書きはこれで以上です。全国の酒場を巡っていますが、これほどシンプルな品書きは他にあったでしょうか。箸休めのような小皿はなく、4種類の唐揚げから選ぶだけ。だからこそ迷うのですが、人気はざんぎだそうです。
衝撃的!スタミナたっぷり、ビールを猛烈に誘う唐揚げ
ざんぎ:550円
注文から15分ほど。ざんぎの山が揚がったタイミングで私の分もお皿にもられました。キャベツを敷いた銀皿にげんこつ型をした唐揚げが5個。そこへ皿が白くなるほど塩・ガーリックパウダーをふりかけて完成です。
ザクっとしたクリスピーな食感の衣の中は、一般的なフライドチキンよりも幾分歯ごたえがある若鶏。硬いのではありません。噛むほどに肉汁がでてきて、濃い目のニンニク味とあわさり絶品です。
唐揚げ、フライドチキンというカテゴリーではなく、これは「わか鳥のざんぎ」という別物の料理といって過言ではないでしょう。
お隣の方は車で訪れているようで、キリンレモンをおかわりしています。お酒でなくても飲み物をおかわりしたくなるほどスパイシーでスタミナたっぷりなのです。
ざんぎの余韻にスーパードライをぐんぐんと喉に当てれば、心の中で「ぷはー」って叫びたくなるはず。
一人1~2皿くらいが一般的な量でしょう。意外にもご年配のご婦人も食べにきていて、老若男女が唐揚げに夢中になっています。
持ち帰りは要予約となりますが、店内利用は予約不要です。とはいえ5席しかありませんので、事前に連絡をされることをおすすめします。
高知のはりまや橋、後免方面へ伸びる路面電車・とさでん交通伊野線の終点である、伊野電停が店から徒歩1分の場所にあります。高知市中心街まで45分ほどかかりますが、帰りはのんびり観光気分で路面電車の旅というのはいかがでしょう。
大満足です。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | わか鳥(若鳥) |
住所 | 高知県吾川郡いの町新町71-4 |
営業時間 | 17:00~21:00(月定休) |
開業年 | 1971年頃 |