平井『丸木屋』料亭修業の3代目が腕をふるう。隠れた名店で冬は河豚

平井『丸木屋』料亭修業の3代目が腕をふるう。隠れた名店で冬は河豚

2022年2月14日

創業から60余年。3代目が守る老舗暖簾、大衆割烹『丸木屋』をご紹介します。平井すずらん通り沿いにあるいぶし銀の酒場。わずかカウンター9席しかない店ですが、豊洲仕入れの新鮮な魚介が楽しめます。

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安くて美味しい!平井の大衆割烹へ

外観

下町から隅田川以東にかけて、素晴らしい老舗酒場や大衆割烹が多数存在しています。昨今の状況で惜しまつつも閉業を選んだ店も少なくありませんが、やっているお店へはこれまで以上に通いたいものです。一度なくなってしまったら二度と作れない、唯一無二の名店ばかりですから。

平井のすずらん通り沿いにある『丸木屋』は、1950年代に創業し、現在は3代目大将が店を腕をふるっています。優しくサービス熱心な大将です。お一人で切り盛りされていますが、接客しつつも手は止まらず、確かな腕で美味しい料理を次々仕上げていきます。

内観

有名料亭の板場修行を経て家業を継いだ大将は、修行を活かした美しい盛り付けの刺身や、冬季のふぐ料理などを店の看板料理にしました。それでいて、値段は下町価格。豊洲から日々仕入れる魚介類を中心にもてなしてくれます。

仕入れからこだわる大将ですが、店はわずか9席だけの限られた空間というのがなんとも贅沢です。地元の常連さんだけでなく、大将の料理を目当てに遠方から飲みに来る人も多く、訪問時は念の為予約されることをおすすめします。

その日居合わせた数人のお客さんに大将を交えてはじまる、小料理屋のような一体感も丸木屋の魅力ではないでしょうか。

乾杯は焼酎ハイボールで

下町・墨東エリアでお馴染みの色付き焼酎ハイボールは、ここ丸木屋にもあります。エキスは天羽飲料製造、焼酎はひみつ。炭酸水は江戸川区一之江がつくる河野飲料商会のもの。パチパチと弾ける大きな泡が、浮かんだスライスレモンを包みます。

それでは乾杯!

品書き

カウンター上部を覆うほど書かれた短冊の品書きや黒板メニューに圧倒されます。くり返しますか9席しかない店でこれだけの品数を維持するのはスゴイことです。

お酒

樽生ビールはアサヒスーパードライ:600円、瓶ビールはキリンラガー大瓶:730円。焼酎ハイボール:350円、ウーロンハイ:450円。日本酒は定番に白梅1合:450円。同蔵冷酒300ml:850円。

黒板メニュー

内容は仕入れ次第でかわります。この日は、本まぐろ:1,200円、まだい:900円、しまあじ:900円、ぶり:750円、ひらめ:900円、あおりいか:400円など。

短冊メニュー

こういう短冊メニューから食べたいものをを見つけるのは宝探しのようで楽しいです。分類別になっていないこともあり、掘り出し物があるのでは?とキョロキョロしてしまいます。

ふぐちり:2,800円、ふぐ刺し:1,800円、ふぐ皮ポン酢:700円、三陸活あわび:950円、トロミンククジラ刺し:900円、柳むしかれい焼:800円、大盛りあさり柳川鍋:1,000円、あんこう鍋:2,500円、自家製あんきも:700円、鯛かぶと煮:800円など。

大衆割烹の域に納まらない!?隠れた名店と言われる訳

お通しというよりは、これはもう「先付」(440円)

のっけから驚かされます。まるで料理屋の献立一式がはじまったかのような本格的な先付が登場するからです。栗に牡蠣など旬の食材で季節感を演出しているのもさすが大将です。

大将から「食べてみて!」と頂いた冷菜は、なんと贅沢にも旬の白子をつかった和風ムースです。コク深くしみじみと美味しい。

キリンラガー大瓶(730円)

焼酎ハイボールを飲み続けるのもよいのですが、美味しい和食にはラガービールもあわせたくなるもの。キリンラガーで改めて乾杯です。

松茸フライ(1,500円)

ビールを選んだ理由の一つに、大将おすすめの松茸フライがあがりました。添えられた松の葉の飾り付けにも注目です。

京都で店を営む知り合いの板前さんが「松茸はフライが一番」と話していたことを思い出しますが、ついもったいなく感じて食べたことがありませんでした。味がより強く香りもたつのですね。

珍味 香住カニ味噌(800円)

山陰・香住港で水揚げされたカニからとった濃厚なカニ味噌です。箸休めというには豪華過ぎるかもしれません。

ふぐ刺し(1,800円)

ごそっとすくって、ポン酢を少し。もみじおろしの辛味をわずかに感じつつ、優しく広がる上品ふぐの旨味。

普段ならばお刺身や焼き魚という流れで注文するところですが、冬は旬の河豚を満喫するのも丸木屋の楽しみ方です。ふぐ料理屋や都心の割烹と比較してかなり手頃なのが嬉しいです。ハーフサイズならば900円と、まさに大衆割烹価格でふぐ刺しが味わえます。

ふぐひれ酒

ふぐ料理が並ぶ季節ならではのお酒、ふぐひれ酒。 かぐわしい炙った河豚にお酒が進みます。

ふぐちり(2,800円)

ふぐちりは一人前でも注文可能です。刺しにつかうものと同じ河豚で、厚くきった身にアラ、そしてザクもたっぷり盛られてこの価格。

まだ河豚が間に合ううちに行きたくなりませんか。

下町の酒場の底力、ここ丸木屋でも実感しました。焼酎ハイボールとおつまみ数品で2,000円ほどにするもよし、今回のように料理屋のような使い方を楽しむこともできるお店です。

日常の中にあるちょっぴり特別な場所。派手ではないですし、知る人ぞ知るようなお店ですが、だからこそ、好きな人には格別な晩酌になるのだと思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名丸木屋
住所東京都江戸川区平井5-28-11
営業時間17:30~23:00(日定休)
開業年1958年