熊野前『かわかみ』屋台で創業約60年、大将の焼鳥と女将のもんじゃ

熊野前『かわかみ』屋台で創業約60年、大将の焼鳥と女将のもんじゃ

2021年11月28日

1963年に焼鳥屋台で創業した、熊野前の「かわかみ」。屋台時代から守るタレの焼鳥と、深川のお好み焼き店出身の女将さんがつくるもんじゃ焼が二枚看板。下町情緒を残す荒川区熊野前へ、都電に乗って飲みに行きませんか。

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この道60年、ベテラン大将に会いに行く

熊野前はリリカルな街

熊野前は、都電荒川線と日暮里・舎人ライナー、都営バス(里48・端44)が交差する、都営交通の要衝です。

好アクセスながら目立った再開発もなく、おもちゃ箱をひっくり返したような小さな家々が並びます。また、付近には都立大学 荒川キャンパスがあるものの、飲食店もそれほど多くなく、のどかな下町の雰囲気が残ります。

そんな熊野前を代表する赤提灯が「かわかみ」です。店名の由来は、ご主人・川上さんの苗字から。

都電の車窓から見える「やきとり」「お好み焼き」の文字。店の前を通る都営バス(端44系統 北千住駅-田端駅-駒込病院前)も、ちょうど店の前で信号待ちするため、酒場好きの筆者は気になって仕方がない店でした。

平日は16時、土日祝日は15時とスタートが早いのも、「かわかみ」が気になる理由の一つ。早い時間から常連さんたちが楽しそうに飲んでいる様子を横目に、バスは通り過ぎます。

屋台からはじめ、37年前に店舗へ

(屋台時代のかわかみ)

創業は1963年頃。焼鳥屋台を20代ではじめた大将。その後、女将さんと結婚し、1984年に自宅を改装し現在の店舗を開業しました。女将さんは深川のもんじゃ・鉄板焼き店の娘さんで、店舗の「かわかみ」になってからは、焼鳥ともんじゃ焼きが名物料理となりました。

現在も大将が立つ焼鳥台に向いた持ち帰り専用の窓があり、焼鳥屋台のように近所の人が住宅用に買っていきます。

店内は女将さんが立つ調理場に向いた5席ほどのカウンター席と、奥に畳敷きの入れ込み座敷(一部、鉄板つき)というつくり。二階もあり、宴会を受け付けています。

乾杯は、赤星マークのサッポロ生ビール

老舗酒場の証。サッポロビールの旧CI(コーポレートアイデンティティ)である赤い星マークをつけた、レトロなサッポロジョッキが現役です。サイズは、昔ながらの大きな中ジョッキ。注がれたサッポロ生ビール黒ラベルは品質抜群で、テンションがあがります。それでは乾杯!

お通し(250円)は日替わりです。この日は自家製れんこんのきんぴら。しみじみおいしい小鉢で、これで焼鳥が焼けるまで、ゆっくり楽しめます。

品書き

生ビール(小450円・中600円・大850円)はサッポロ黒ラベル、瓶でキリンラガー(大びん680円)を置いています。

酎ハイ類は400円で、しそサワーを筆頭に、ざくろサワーアップルサワーなど種類が豊富です。かき氷のブルーハワイのような真っ青の酎ハイ・ブルースカイサワー(400円)なんていう変わり種も。ホッピー(黒セット500円)もあります。

ベースの甲類は、松戸の合同酒精「ゴードーホワイトリカー25」。ボトルキープでキンミヤ焼酎ジンロも選べます。

品数がかなり多いのも「かわかみ」の特長です。看板料理の焼鳥は、やき鳥(120円)、シロ(120円)、レバー(120円)、タン(120円)、ハツ(120円)、カシラ(120円)、ナンコツ(120円)、つくね(140円)、すなぎも(140円)、とりかわ(140円)、手羽先(250円)、にんにく鳥(170円)。焼鳥と並び、とん足(600円)も人気メニューだそう。

定番で、馬刺し(900円)、げそバター(550円)、五目野菜イタメ(650円)など。さらに日替わりのオススメメニューで、ホタテ塩辛しめさばなかおちうなぎのきも牛タン塩焼き牛カルビなどが加わります。

屋台時代から変わらぬ焼鳥と、女将さんのもんじゃ焼き

なんこつ(120円)とつくね(140円)

屋台時代から継ぎ足し続けてきたタレは、深いコクと旨味。絶妙なコリコリ感が心地よいナンコツにも、もっちりとしたつくねにも好相性です。

手羽先(250円)とかしら(120円)

「まってね、すぐできるから」

笑顔を絶やさないご主人が、お客さんを退屈させないようにと話をしながら串を焼いていきます。女将さんとの夫婦漫才的な掛け合いも楽しく、串はあっという間に焼き上がりました。

パリッとした皮と、骨まわりのジューシーな身のコントラストがたまりません。旨味に誘われビールが進みます。

しそサワー(400円)

不思議な酎ハイがいろいろあって注文に迷います。短冊の筆頭にある「しそサワー」は、想像以上に赤色です。駄菓子があった謎のジュースのような、懐かしい味の酎ハイです。見た目のインパクトはありますが、駄菓子のような甘さはありません。

女将さんの五目もんじゃ焼き(600円くらい)

「かわかみ」でおつまみを食べすぎてはいけません。〆のもんじゃ焼きは必須ですから。

女将さんが実家のもんじゃのレシピを受け継いだもの。お酒を飲みに来た一人客でも熱々で楽しめるようにと、浅型片手鍋でつくってくれます。

居酒屋でもんじゃを食べたことがあるのは、ここ「かわかみ」だけ。

出汁がイイ!そして味を引き締めるソースもいい仕事をしています。具はキャベツ、ひき肉、いか、干しエビ、紅生姜、天かすなど。隅っこのパリパリになった部分も、中央のフカフカとしたところも楽しい。

酒場らしいちょっひり濃いめの味に、〆と言わずにこれで酎ハイが進むこと間違いなし。

もんじゃと、カラフルで様々な味が揃う酎ハイ。気分は駄菓子屋飲みです。

焼鳥ともんじゃ、おしどり夫婦の人生がつまった美味しいおつまみに大満足。常連さんとお店の皆さんがつくる家庭的な雰囲気は、親戚の家で飲んでいるような気分になります。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名かわかみ
住所東京都荒川区東尾久6-52-5
営業時間16:00~22:00(日祝は15:00~21:00・木定休)
開業年1984年(それ以前は屋台で1963年創業)