八幡浜「Jazz＆cocktail ロン」創業50余年のバー。街に奥行きを感じる

港で栄えた八幡浜にはJAZZの音色が響く正統派のオーセンティックバーがあります。半世紀続く「Jazz＆cocktail ロン」です。夜が早い八幡浜にあって深夜2時まで営業する、夜型のお酒好きにとってのオアシスです。

港町というのは、周辺の街とは異なる文化や地域性をもっているものです。船が今以上に交通の役割を担っていた時代の名残を訪ね歩くと、様々な発見があります。

ここは愛媛県にありながら松山都市圏とは異なる表情をもつ港町・八幡浜。

街の規模に比べ繁華街は非常に大きい。そんな八幡浜の中心市街で、オーディオと音楽、お酒を愛する人が集う老舗バーを訪ねます。

夜が早い港町で貴重な夜型のバー

港町は朝から飲めるお店はあるものの、夜が早いのも特徴です。それは八幡浜も同様です。八幡浜漁港で水揚げされた河豚や真鯛でもてなしてくれる割烹や居酒屋、寿司店で賑やかだった通りも、午後10時頃には眠りにつきます。

遅くまでやっているお店は貴重な存在です。バー「ロン」は深夜2時まで営業。2017年に現在の場所に移転しています。

二軒目、三軒目となるお酒好きの人たちがどこからともなくやってきては、バーの扉に手をかけます。

正統派のバーで、緊張と癒やしを

落ち着きのある広い空間に重厚なカウンター、上品な接客。凛とした空間によって、さっきまでの居酒屋で高揚していた心はすっとリセットされます。わずかな緊張感と、心が溶けるような心地よい気分が同時に湧いてきます。

カクテルバーであり、ジャズバーでもある「ロン」。親子夫婦で切り盛りされており、先代が自作した真空管アンプをはじめ、年代物のドイツ製の電磁石スピーカーやJBLスピーカーなどオーディオ機器が揃います。空間が広く空気の容量が多いためか、リスニングポジションのカウンターに限らず、どこにいても心地よい音色に包まれます。

3000枚のレコードや4000を越えるCDはJAZZ中心で揃えられており、リクエストに応じてくれます。

近隣でつくられるジンなどのスピリッツも揃うバックバー。お店のコンセプトカラーであるターコイズブルーのタイルは、爽やかな港町のバーにぴったりです。

旅先の1日を綴るカクテル

ジントニック

ベースのジンはタンカレーを選びました。カクテルは1杯600円から。この空間でもチャージはなく、大変リーズナブルです。

オリジナルカクテルを尋ねてみる

お店と色をあわせた、美しいブルーのカクテル。愛媛県ならではの柑橘系を活かしたカクテルもあります。

クラフトジン PACHI PACHI（パチパチ）

柑橘系といえば、愛媛県初となる温州みかんを素材にしたジン「クラフトジン PACHI PACHI」（新居浜・近藤酒造）が個性的で記憶に残る美味しさでした。みかん畑の香りそのもので、ジンであっても非常に日本的な印象をうけます。オンザロックでじっくりと味わいたいお酒です。

旅先で訪ねる正統派のバーで風土まで味わうひととき。八幡浜のナイトキャップにいかがですか。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）