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今日は松山は古町で、地元の飲み屋好きに大人気の「寿浬庵」をご紹介します。会社員時代、松山出張のときに連れて行ってもらって以来、忘れられない飲み屋でした。
明るい時間から開いているお店ですが、17時を過ぎた頃にあっという間に満席になります。松山の中心街である大街道から離れているにもかかわらず、抜きん出た人気店です。
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そんな寿浬庵を目指して、降り立った松山駅。山陽新幹線 岡山駅から瀬戸大橋を渡る特急しおかぜ号で2時間40分の旅路です。
松山駅ですが、コンコースでは、お隣、今治市のマスコットキャラクター「いまばり バリィさん」がお出迎え。
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四国最大51万人都市の松山。道後温泉や松山城などの全国的に知られた名所と、正岡子規に夏目漱石と文士縁の地でもあります。
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JR松山駅、そして地元私鉄の伊予鉄松山市駅、中心街の大街道と3つのターミナルがあり、これらと、さらに道後温泉も結ぶ伊予鉄市内電車は、この街の飲み歩きに欠かせない交通手段です。
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そんな市内電車に揺られて古町へ。飲食店街でもない、雑居ビルが並ぶ大通りにぽつりと構える飲み屋です。
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平日なのに7割は予約で埋まっています。スタートダッシュにと、17時前に滑り込んで良かった…。飛び込みのお客さん数人と予約の家族連れや会社員グループで、その後あっという間に満席となりました。大将が立つ板場に向いたL字カウンターと奥に座敷というつくり。
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人気の理由の前に、なにはともあれ乾杯を。麦酒は樽生がアサヒスーパードライ(中550円)、瓶ビールでは中びんでキリン一番搾りとラガー(550円)が並びます。
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四国唯一のナショナルビールブルワリー「アサヒビール四国工場」がある愛媛県。今日は敬意を表して、アサヒスーパードライで乾杯!(写真は小グラス400円)
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ビールに続きお通し登場。日替わりの内容で、海鮮が一品入ります。小さなちらし寿司がちょっと好き。
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お通しの煮魚はブリなど様々たっぷり盛られています。これは小鯛かな。
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人気の秘訣その1.品書きが膨大でなんでもある!瀬戸内海の海の幸を筆頭に、ステーキ、合鴨カルパッチョにキーマカレー、牛ホルモンとざっと100品。
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刺身と牛ホルモンが同居している不思議さも、ここではむしろ魅力。「どっちかがおまけではなく、両立しているから楽しい」そう話してくれた、隣席の常連さんの言葉が印象に残りました。食べたいものが決まっていなくとても、ここにくればお腹が鳴りそうです。
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天然鯛、釣りさわら、はぎ、かんぱち、さより、まはた、生かき…。優柔不断なので、お刺身の文字が頭をぐるぐる。全部650円均一というのがおもしろいです。
ここは王道で!と、ヒラメの昆布締めを選びました。シメ具合がちょうどよく、旨味とヒラメの脂が頬を緩ませます。盛り付けも丁寧で、量もたっぷり。
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昆布締めで日本酒を飲まないと、神様に叱られそう(笑)
日本酒の数も豊富で、しまなみ海道の向こう側、酒処・広島や、地元愛媛のお酒がずらり。石鎚(西条)、千代の亀(内子)、山丹正宗(今治)、これまた息を弾ませる品揃えです。均一で一杯600円。
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内子の酒六酒造、寒造り・手造りにこだわる酒蔵の「京ひな深山」を選びました。なかなか東京で飲む機会に巡り会えない一本です。
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原料米は松山三井。精米歩合60%。淡麗辛口ながら、上品な甘みと軽やかながら印象的な旨味を感じます。ヒラメの昆布締めにそっと寄り添います。
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寡黙に次々と料理を仕上げていく大将と、丁寧な接客のスタッフの皆さん。混雑してくると大変そうですが、楽しんでいってほしいという気持ちがひしひしと伝わってきます。
旅情を感じる飲み屋ともまた違いますが、街の人気店ならではの活気の中で飲む時間もよいものです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
寿浬庵
089-926-6565
愛媛県松山市平和通6-9-6-6
15:00~23:00(日祝は22:30まで・不定休)
予算2,300円