松山の郷土の味として知られる「かめそば」。
昭和20年代に創業した食堂「かめ」の焼きそばは、いつしか「かめそば」と呼ばれるようになり、地元に愛され続けてきました。平成に入り、「かめ」は惜しまれつつも閉店することになり、かめそばも絶滅の危機でしたが、常連さんの1人が免許皆伝を受け、その味は受け継がれることとなりました。
それがこの「じゅん」です。松山市の歓楽街・二番町に店を構え、界隈の梯子酒の〆として親しまれています。
かめそばの味を受け継いだご主人は、元は警察官。退職後に店を開き、今年で10年目。ぴしっとした姿勢と眼差しはまさにおまわりさんのオーラ。でも、焼きそばを語る時は笑顔いっぱい、子供のような無邪気な表情で、食への想いが伝わってきます。
焼きそば屋でも営業は夜だけ。食堂というよりは、焼きそばを看板料理にした居酒屋です。ビールはキリン味の原点、ラガーの生樽です。乾杯!
〆にちょいと飲むのに嬉しいセットがオトク。今回は生ビールセット(1,700円)を選びました。お酒一杯に、名物のとうふおでん、串おでん、そして最後にかめそばがついてきます。
単品では、生ビール550円、かめそばは650円。
すっきり透き通る出汁でじっくり浸ったとうふおでん。セットならハーフサイズになるので、〆の前に軽くつまめます。出汁をたっぷり吸い、見た目以上にコクがあります。
おでん3品。松山の郷土料理「じゃこ天」をはじめ、スジや大根をいただきました。ボリュームあるじゃこ天も、その風味の強さや旨味で魚好きならぺろりと完食でしょう。
おでんを食べ終わる頃に、ご主人が奥から盛ってきた焼きそば。鯵の削り節に干しじゃこが振りかけられた独特な見た目。削り節とわずかな醤油の香り。なんとも例えようが難しいですが、煎餅の香りとでも言いましょうか。
麺は縮れた太麺で短く、そして固い。中華鍋で調理されているのですが、作り方は一切ひみつとのこと。具材にわずかなキャベツと、隠し味には玉ねぎを使用しているそうです。
固いところ、柔らかいところが斑になり、食感も独特です。味はソースではなく、醤油寄り。そのままでも十分に味があり、すすって食べない長さということもあり、スナック感覚でお酒のお供になります。ごはん系というよりは、酒の肴。こんなにおつまみになる焼きそばは他にあるでしょうか。
玉ねぎと削り節、じゃこなどの旨味がしっかりした食材が使われ、余韻もしっかりコクがあります。
松山へ訪れた際には、ご当地のソウルフードで〆にしてみては。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
かめそば じゅん
089-921-0332
愛媛県松山市二番町1-4-11
18:00~23:00(日祝1,3月曜定休)
予算1,700円