創業から70年以上。築地に中央卸売市場があった頃は多くの市場関係者が通った「幸軒」。魚河岸の仕事がピークを迎える早朝にあわせ、幸軒も朝5時から営業していました。市場が移転しても時間は変わらず。いまでも場外市場等で早朝から働く人々が通う町の中華店です。
仕事で通う人以外には、市場は特別な場所。そして、市場内外にある飲食店もまた、非日常の空間です。
早朝からお昼頃までの営業が多く、まさに「市場時間」と言えます。魚河岸の飲食店といえば海鮮丼や寿司が人気ですが、肉料理を出すお店が結構多いのです。市場で働く人にとっては、むしろ肉料理のほうがパワーがでて良いのかもしれません。
今回は海鮮料理に囲まれた肉料理の店、築地場外市場で昭和25年創業の「幸軒」をご紹介します。チャーシュー、シュウマイで飲める人気の大衆中華(町中華)です。
澄んだ空気と市場の賑わい
公営施設の東京都中央卸売市場としての築地市場は2018年に豊洲へ移転しましたが、旧築地市場周辺の「築地場外市場」は昔のまま変わっていません。観光地としてだけでなく、いまも早朝は仕入れにくる飲食店の方の姿もみられます。
早朝から飲みたいとき、私は市場へ向かいます。寝ぼけているこちらとは対称的に、バリバリ仕事中の店舗の方や、仕事を終えた人のリラックスした表情など、ここではいろんな生活リズムの人が入り混じります。そんな市場の雰囲気と、朝から飲むという背徳感がお酒を進ませます。
幸軒の入り口は非常に分かりづらいです。連なる店舗の隙間、途切れていないテントの下にある細い通路を中へと入っていくと見えてきます。
細い通路の奥にある小さなお店
雑多な市場の長屋の中にある中華店「幸軒」。朝5時から暖簾がさがります。早朝から瓶ビールを片手に朝食を食べるウィンドブレーカー姿の人々が集い、職域食堂ならではの独特なムードがあります。
品書き
L字カウンターで10席だけの小さなお店。市場のリズムで、ビールを飲んでもぱぱっと帰っていくので回転はとても早く、コンパクトな店内は常にお客さんが出入りします。
定番はラーメンですが、飲む人にはチャーシューやしゅうまい(各850円)を注文。ほかに摘みになる(炭水化物系以外)ものは、定番料理としてはありません。タイミング次第では、牛モツ煮込みなどがつくられていることもあります。
お酒はビール(大びん750円)のみで、銘柄はサッポロラガー(赤星)、アサヒスーパードライ、キリンハートランドを見かけたことがあります。銘柄を指定しないと赤星になりました。
朝の築地で中華飲み
しゅうまい・チャーシュー盛り合わせ(850円)と瓶ビール赤星で、朝飲みの準備は完了。トクトクとビヤタンを満たしたら、それでは乾杯。
名物1,チャーシュー
大瓶のφと同じくらいのチャーシューが3枚に、ピンポン玉サイズのしゅうまいが2個。ライスとスープをつけた定食があるものの、飲むならばこれだけでも十分です。
食べごたえ十分のチャーシュー。味濃い目、醤油味と豚の脂の甘さは優しくとも記憶に残る味です。
名物2,しゅうまい
しゅうまいは肉ダンゴとでも言いましょうか。大手まんぢゅうもびっくりの皮の存在をほとんど感じさせない、餡のかたまりです。ひき肉、玉ねぎをつなぎでぎゅっと固めたもの。焼鳥のタレに近い甘さが特徴です。
セットと大瓶1本でさくっと朝飲みは完了です。さて、少しお買い物をして帰りましょうか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 幸軒 |
住所 | 東京都中央区築地4丁目10番5号 |
営業時間 | 営業時間 [月~土] 6:00〜9:30頃、10:30〜13:30頃(なくなり次第終了) ※[水]8:00スタートの場合もあるので要TEL [夜の部]※完全予約制 17:00〜24:00 定休日 日曜・祝日・市場休市日 |
開業年 | 1950年 |