大衆割烹が大好きです。
大衆酒場よりちょっぴり背筋を伸ばす感じだけど、割烹や小料理屋のような緊張感はなく、日常的に使える飲み屋です。そんな大衆割烹も時代の流れのなかでだんだんに軒数を減らしつつあり、寂しい限りです。
ただ、今日ご紹介する「鳥忠」は非常に元気な一軒。地元密着、ファンが多く口開けと同時に常連さんが次々と暖簾をくぐるようなお店です。
創業から半世紀以上になる鳥忠。同じ屋号の江古田と大塚は、創業者の二代目となる兄弟がそれぞれ暖簾分けで開いたお店です。
創業者は鰻の店で修行したことから、世代交代したいまでも看板料理は鰻です。
あっという間に満員御礼(間隔を空けて)になる店内。まだ17時の鐘がなったばかりなのに、この賑わい。すごく愛されています。
厨房に向いたカウンターはボトルキープの常連さんがずらっと集い、テーブル席ではご近所さんが小さな声で談笑中。皆さんベテランさん揃いです。奥に小上がり、二階に座敷があります。
鳥忠のビールは暖簾3店いずれもサッポロビール。老舗の酒場に北極星が似合います。それでは乾杯!
樽生の中は昔ながらの大きな中ジョッキ(570円)。瓶ビールは大瓶(620円)でサッポロとアサヒを置いています。ホッピーセットは白黒あり(510円)、ナカはキンミヤです。
本格焼酎やリキュール・ワインの多くはサッポロのスピリッツ部門で揃っています。ウイスキー(450円)がサントリーリザーブというチョイス、これだけで店の歴史をおもんばかるのには十分です。
定番酒は360円・地酒は10種類ほど揃います。酎ハイ類は400円から。
おまちかね、料理の献立です。老舗の人気店らしい、顔ぶれ豊かな刺身を筆頭に、呑兵衛がなぜか心くすぐられる海老しんじょうやいか天さつまなど、どれも食べたくなるものばかりです。
冬はちゃんこや石狩鍋(1,300円)、看板料理のうなぎは蒲焼き(1,950円)。どじょうはまる鍋(800円)か柳川で。人気は自家製カニクリームコロッケ(650円)、カレイ唐揚げ(740円)、ガサエビ唐揚げ(530円)、いわし香揚げ(750円)など。
串は3本単位でねぎま、自家製つくね、ぼんじりなど(320円~480円)。ほかにも気になる料理がたくさん。揚げ物、焼鳥なんでもござれが大衆割烹で飲みたくなる理由のひとつです。
さっそくでてきました。大本命、お刺身盛り合わせ(写真は4人前・一人前は1,600円から)
ご主人自ら釣りをするほどの魚好き。釣った魚も加わる、旬の魚介のお刺身は大変豪華。12時の方向からカツオ、キンメダイ、ヒラメ、ウニ、しめ鯖(もちろん自家製)、ブリ。中央は赤貝です。
港町で魚を食べることが趣味の筆者ですが、鳥忠の魚は本場に負けないモノの良さ。厚切り、豪快な盛り付けながら彩りを考えた板前の技も感じる素敵な刺盛りです。
鰻(三河一色産)の蒲焼きで飲むのはちょっと贅沢過ぎるので、お酒の肴にぴったりな、鰻のキモとカブトを。コク深く濃厚な味は、日本酒を誘います。
海老しんじょう(550円)。ぷりっぷり、そして旨味がたぷたぷに詰まっています。
驚いたのは、このまぐろぬた(750円)。なんと中トロです。赤味噌のぬたの甘味と酸味、まぐろの脂とみょうがの爽やかな風味が楽しい一品。徳利ででてくるのでシェアもできる日本酒から、銀盤(正1合730円)をもらって、きゅっとひとくち。あぁ、いいやね。
自家製餃子(470円)の文字をみかけると頼まずには居られません。ふたくちになる大きさで、モチモチの皮の中にバランスの良い餡が詰まっています。
日本酒からビールをもどって、今度は大瓶を。今度はアサヒスーパードライ(620円)で、改めて乾杯。
そうそう、絶品だったのは「肉どうふ」(560円)。割烹は煮魚などでつかう割り下が良さそう。ということは肉どうふも!?という期待に、ばっちり応えてくれる逸品でした。歯ごたえのある鶏肉と、中心まできつね色に染まった絹豆腐。お酒が進みます。
長年愛され続けてきた繁盛店「鳥忠 総本店」。社会情勢の変化、競合チェーンの登場、世代交代。様々な波を乗り越えてきた老舗はやっぱりスゴイ!
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材立ち会い・Special Thanks/Syupo酒場部のみなさん)
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店名 | 鳥忠 総本店 |
住所 | 東京都板橋区南常盤台1-37-4 |
営業時間 | 営業時間 [月~金] 17:00~24:00 [土・日・祝] 16:00~23:00 日曜営業 定休日 第3月曜日 |
開業年 | 1960年代 |
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