ときわ台「鳥多希」 創業半世紀。親子で守る店の味にビールが進む

ときわ台「鳥多希」 創業半世紀。親子で守る店の味にビールが進む

いまからおよそ半世紀前、板橋区大山の川越街道沿いに小さな焼き鳥屋「鳥多希」が誕生しました。東武東上線の大山駅から少し歩く場所にあり、決してアクセスがよいとは言えません。また、元気な商店街として全国的に知られるアーケード商店街「大山ハッピーロード」からも離れていました。

それでも、地元に暮らす人々や、店の目の前にある私立大学医学部と附属病院、併設する各種研究・教育施設で働く学生や医療関係者に慕われ、大いに賑わい、大山の焼鳥酒場といえば「鳥多希」という人も多かったです。

そんな鳥多希が、息子さんの代になって東武東上線で2駅下り方のときわ台に移転。2015年秋に再オープンとなりました。

 

ときわ台駅からは100mほど。静かながら個人店のいい雰囲気の店が並ぶ界隈に誕生。赤い暖簾で行き交う人を照らしています。

 

テーブル席、カウンター席、そして移転によって新たに人数多めでも利用できる宴会スペースが加わりました。

 

名物の手羽先をはじめとした焼鳥(漢字だと鶏)や昔から人気の豆腐サラダや煮込みに加え、今風の酒場メニューや刺身類も豊富に加わりました。

 

ビールは移転前から変わらず、サッポロ黒ラベル(中ジョッキ450円)。キンキンに冷やしたジョッキに注がれて登場です。瓶も変わることなくサッポロラガー(赤星・中びん600円)を用意。鳥多希は昔からずーっとサッポロ。

では、乾杯!

 

まずは、なにはともあれ名物の手羽先(230円)を食べなくてはいけません。開いた大きめの手羽が2本、ボッカ串に打たれています。そうそう、これですよ、これ!

 

七味や辛子ではなく、わさびを塗るのが鳥多希流。タレの味ではなく、鶏そのものの旨味で食べさせるのですが、これが実にあと引く味。そしてビールや酎ハイを強烈に誘います。皮目ぱりっと、中はしっとり。

 

宝酎ハイ(350円)は、大きめタンブラーにたっぷり入っています。この飾り気のない、それでもお得感を感じる組み合わせが、鳥多希の魅力のひとつ。

 

粘度のあるみりんたっぷりのタレを重ねて焼いたつくねやねぎまも絶品です。大山の鳥多希は昔よくお世話になっていましたが、あの頃は手羽先ばかり食べていました。タレ焼きにもっと早く気づいていれば…

 

冷やしトマトを間に挟んで、もうひとつの名物、煮込みをいただきます。

 

鳥多希だけに煮込みは鶏モツと思いがちでしょう?なんと牛モツなんです。白味噌ベースで旨味はありつつもしつこくなく、軽くつまめます。脂やアクもなくすっきり。

 

皮焼きおろしポン酢かけ(200円)は串ではなく小鉢のおつまみ。パリッとした皮の食感が楽しく、素直な旨味が心地いい。酎ハイ類やビールが合うのは間違いありませんが、意外と日本酒もあうのでぜひ。定番酒は珍しく、吉野杉の樽酒金龍山(奈良・長龍酒造/550円)です。

 

自家製の緑茶割り(380円)も人気。濁りの色だけでなく、風味や甘味もしっかりあるしっかりしたお茶の味があります。

 

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(写真は昔の店舗)取材時は先代も店に立ち、親子で切り盛りされている姿はとても朗らかでした。昔からの常連さんや、移転後に訪れた若いグループもいて、お店はゆるく、でも確実に世代交代中。名物の味は変わらずに。

街に根付いた老舗酒場「鳥多希」。お近くを訪れた際や、沿線を利用されていらっしゃる方は、ぜひ覗いてみてください。

良いお店です。ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

以前のお店の紹介はこちら

 

鳥多希
03-3972-3609
東京都板橋区南常盤台1-33-11
17:00~23:30(日定休)
予算2,200円