1927年(昭和2年)創業、京極スタンド。若者向けのショップが立ち並ぶ新京極の中で、一際レトロな店構えが目立つ食堂兼大衆酒場です。
京都でお昼から飲むなら、まずココから
創業時、すべて10銭均一だったことから、十銭食堂の名で親しまれたそうです。その名残は、お帳場に今も残されているアメリカ製の電気レジスターにある、「円」に並ぶ「銭」の単位にもみられます。
創業時から浅草の神谷バーを意識したようなハイカラな店造りと料理だったと聞きますが、それを90年以上続けてきたことで、令和の時代からみると過去にタイムスリップしたような雰囲気が味わえます。
寺社仏閣、桜に紅葉と名所旧跡に満ち満ちている京都。飲酒もこの街ならではの空間で味わいたいものです。
京極の最寄り駅は阪急京都線の京都河原町駅。ですが、直接バスや電車で向かわずに、四条烏丸から京の台所、錦市場(錦小路)をぶらりと歩いて向かうのもよいものです。店先に並ぶ食材に、季節を感じて……
錦小路の東の端、新京極につきあたる場所には平安時代創建「錦天満宮」。学業、商売繁盛のご利益があると昔から慕われてきた神様です。ご挨拶を済ませてから、並びにある京極スタンドへ。
新京極の老舗食堂はお酒も飲める
京都は日中から通しで飲める居酒屋はそれほど多くはありません。京極スタンドは貴重な存在であるとともに、繁華街の四条河原町に近いこともあり、日中から多くの人が訪れます。
レトロな店構えが目を引きますが、料理も昭和初期からみた「ハイカラ」なものが多く、なんとビーフステーキまであります。
(撮影時期:2018年)
毎日のような通われているご隠居さんから、デパートでショッピング帰りに一杯飲みに立ち寄るマダム、そして観光客と、幅広い層が集う空間。相席は当たり前で、2019年まではそれはもう熱気に溢れた空間で、わいわいと飲んでいたものです。
入って右のカウンターは、なんと大理石でできています。向い合せで利用する珍しいスタイルで、一人飲みでは向かいや両隣の人との一期一会の会話が始まることも多かったです。
品書き
手元には品書きがなく、店内の短冊をぐるりと見渡します。慣れてくると、着席前に席に向かいながら一品目の注文を決めるなんて人も。
迷ったら生ビールセット(1,100円)や月桂冠セット(1,050円)がおすすめ。一杯と高野豆腐、スパサラ、日替わりの料理がついてきます。
京極スタンドには、キリンが似合います。スタンドのロゴ入りの専用ラガージョッキに注がれた、キリンラガー(中550円)。ぐいっと飲めば、京都の飲酒一軒目の幕が開きます。そうだ、忘れていました、乾杯。
シーリングファンがついたレトロな空間。夏はキンキンに冷気を吹き出すクラシカルな冷房装置。京都の暑い夏にスタンドはオアシスです。京の底冷えにもスタンドはあったかい存在。冬はかす汁(470円)と月桂冠でほっこりと。
お造りからハンバーグまで美味しい
お造りはよこわや鯛をよくみます。すぐに出るので、鯛お造りをつまみつつ、まずはほっとひといき。
伏見の酒蔵・月桂冠を飲める代表的な一軒。伝匠月桂冠という通常の流通ルートにのらない特別なお酒をはじめ、樽、上撰、生酒が揃っています。塗り枡に丸い受け皿がスタンドの盛り方。
今は使わないお酒の旧表記、一級(1合470円)、特級(550円)という表記が残されています。
地域性を感じる料理がホワイトボードに加わりますが、まずは創業時からのハイカラ洋食メニューをつまんでみませんか。
ビフカツ(750円)、ぶた天(680円)、鴨ロース(600円)、オムレツ(550円)など。こちらは自家製コロッケ(680円)。一合枡サイズのものが2個。特製ソースがかかり、付け合せはスパサラという内容。子供の頃からみんなが好きな味。
揚げ物は、京都らしくはも天(700円)を。衣の中はジューシーでもっちりとした鱧。淡い味に、月桂冠の樽酒をあわせればじんわりといい気分です。
会計方式は昔ながらの伝票に朱色えんぴつ方式。届いた分の額に応じてチェックが入ります。
昭和40年代の味を今もつくる、キリンの定番銘柄唯一の加熱処理ビール「キリンクラシックラガー」(ダイビン680円)。千枚漬けをおともに。
鰻ざくに、たけのこ炊いたものなど、季節によってでてくる料理も違います。季節ごとに表情のことなる京都を、こうして酒場でも感じられるのはとてもよいですね。
レトロモダンという括りで表すのはもったいない、ここにしかない空間です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2019年頃)
店名 | 京極スタンド |
住所 | 京都府京都市中京区新京極通四条上ル中之町546 |
営業時間 | 営業時間 12:00~21:15(LO 20:45) 日曜営業 定休日 火曜日 |
開業年 | 1927年 |