京阪三条「赤垣屋」 川端の銘店で名誉冠、創業80余年の縄暖簾

京阪三条「赤垣屋」 川端の銘店で名誉冠、創業80余年の縄暖簾

2017年2月27日

東京や大阪の酒場といえば、駅を中心として飲み屋街が広がっていますが、京都は違います。JR京都駅周辺にもリド飲食店街など、多少は飲む場所はあるのですが、銘店と呼ばれるような存在は駅から離れて点在しています。

京都の酒場を語る上で外すことができない銘店「赤垣屋」は、三条大橋付近の川端にあり、どこの駅からも少し歩きます。この、”少し歩く”のもまた魅力かもしれません。

軽く一軒飲んだあとに、酔い覚ましでふらふらと鴨川を散歩して、それからたどり着く赤垣屋という流れが大好きです。

創業は1934年(昭和9年)。京都だけでなく、日本有数の存在と言える銘店です。

酒場好きの先人たちの多くをとりこにしたカウンターは今も健在。美味しいお酒と魚料理を中心とした料理、そして長年受け継がれてきたこの空間そのものとの組み合わせは、解説不要で心地よい。

おばんざいとか、京割烹などといったものではなく、関西的な酒場料理をまじめ・実直に供する料理が楽しめます。

ビールは昔からキリン。京都の老舗はキリン率が高い。赤垣屋のカウンターにクラシックラガーの渋さが実にしっくりときます。乾杯!

日本酒は幻の銘柄「名誉冠」。昔からずっと名誉冠ですが、製造元の名誉冠酒造(京都・伏見)が休業してしまい、現在は神聖で知られる山本本家が銘柄を受け継いでいます。赤垣屋は名誉冠の樽がよく似合います。

昭和の酒場の雰囲気そのままの空間。入って左にL字カウンター。樽酒とおでん鍋、そして花板さんの立つ”魅せ場”があります。右側は冬場に登場するだるまストーブが、冬の地面から冷える京都の夜に、この上ない温もりと安らぎを作り出します。

奥の小上がりの畳で燗酒をきゅっと飲むのもまたいいものです。

経木(きょうぎ)の品書きには値段が入っていませんが、そう心配する必要はありません。あれこれ食べて飲んでも3,000円くらいで収まります。

お造りは常に十種類ほど。関東ではあまり見かけない食材も多く、酒場から見る地域性を考えるのも、酔ったひとときの楽しみの一つです。

焼き魚、煮魚も旬を感じる鮮度の良いものが、普段使いの価格で味わえます。一軒目ならばしっかりとした料理をおすすめしたいのですが、二軒目や、これからの梯子の予定がある方は、「鯛あら」がおすすめ。かぶともついて、あら煮といえども十分な満足感が得られます。

味付けは関西にしてはやや濃いですが、甘さと鯛の脂の旨味が樽酒と抜群の相性なのです。クタクタに染み込んだ飴色のお豆腐も秀逸。

あまたの酒場好きを唸らせた銘店「赤垣屋」。大人が楽しむ歴史ある居酒屋ですが、難しいことはありません。空間に馴染み、静かに飲んで、酒場の空気に浸る喜びをぜひ味わってみてください。

きっと、京都の酒場のイメージが変わると思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

赤垣屋
075-751-1416
京都府京都市左京区孫橋町9
17:00~23:00(日及び日に続く祝定休)
予算3,300円