アメリカを代表するビールの名産地のひとつ、ミルウォーキー。ミュンヘン、札幌と並び、北緯45°付近にあるビールのふるさとです。
ミルウォーキーがビールのふるさとになった理由は、アメリカという国が多民族国家であり、そしてこの地にはドイツ系移民が多く移住してきたことが理由とされています。もちろん、地形、気候ともに農業に適した土地であり、麦とホップ、ふたつのビール原料が収獲できる場所というのは言うまでもありません。
ミルウォーキー最大のビール工場「ミラー」は、1855年に誕生します。ビールや工業製品、そして麦の貿易で栄えたミルウォーキーの町並みは、歴史ある建物が健在で、どこかヨーロッパテイストを感じます。
ダウンタウンで1933年からビアバーとして存在してきた空間があると聞き、訪ねることにしました。「Swingin’ Door Exchange」、この店名になったのは約半世紀前なのだそう。
日本からミルウォーキーには直行便はありません。ANA成田・シカゴ便を利用し、シカゴからは特急列車「ハイアワササービス」(Amtrak)で70分の列車旅。ギラギラとした摩天楼のシカゴとは対称的な、広い空の下、バロック様式の建物が整然と並んでいます。
「Swingin’ Door Exchange」はこの建物にはいる小さなバー(eatery)です。
親しみやすく明るいウェイター、ウエイトレスの方に迎えられ、店内へ。店の歴史から想像した通りの、アンティーク調の暖かい空間です。バーカウンターには、白髪のご隠居さんたちが、いつもの面々が揃いビール片手にテレビで流れるバスケットボールの試合を観戦中の模様。
海外ドラマに出てくるバーのワンシーンそのもののような空間です。
バーカウンターには地元の銘柄を中心に、ビアタップが10本近く立っています。
ドラフトビールもよいけれど、気になっていた銘柄があるのでこちらから。ミルウォーキーのクラフトビール醸造所「レイクフロント・ブリューワリー(Lakefront Brewery)」がつくるIPAを最初の一杯に。ブルワリーの名前の「レイク」はもちろんミシガン湖のこと。1987年に製造をはじめた、ビールの里ではまだ新しい醸造所です。
美味しいと東京でも噂を聞く、同社のIPA。本場で飲めることが幸せです。それでは乾杯。
シトラ、チヌーク、カスケードの3つのホップを使用した苦味が爽やか、余韻すっきりのビール。モルト風味とホップのふくらみある味わいが楽しい一杯です。
ビールはドラフト、ボトル、缶などあわせて40種類近く用意。飲んでいるレイクフロントIPAをはじめ、多くのビールが$5前後とリーズナブルなのも嬉しいです。
グラスワインは$7~、ウイスキーをはじめ、カクテル各種あり。
海外の飲食店はだいたいメニューが公式サイトにあるので、例によってここでも詳しくは公式サイト内メニューを御覧ください。
お昼飲みならば「Today’s Features」でランチを兼ねてどうですか?とおすすめされ、スパイシープルドポークのサンドイッチを選択。
付け合せのトマトスープはこの通り、超濃厚です。
二杯目のビールはミラーにしようかな…とタップを見ていると、気になる銘柄を発見。ミラーは全米どこでも飲めるし、のちほど工場見学も予定していますので、ここでしか飲めないローカルなものを飲みたい。そうして選んだのは、Good City Brewingのアメリカンペールエール(APA)。
トロピカルフルーツのような華やかな香り。シナモンのような苦味・深味が心地よいビールです。モザイクホップ100%使用。
スープ、そして付け合せのコールスローを含め$8は嬉しい値段。
いかにもアメリカンな感じの料理、プルドポーク。豚肉を細かく裂いてバーベキューソースで和えた家庭料理。ビールとの相性は言うまでもなく最高です。
歴史あるバーで、ビールの里にあるいくつものブルワリーの味を楽しむひととき。ローカルでクラシカルな空間です。明るい時間から飲みつつ軽く食事をする人で賑わう店内は、ビール好きならばきっと溶け込めるはずです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)
Swingin’ Door Exchange
swingindoorexchange.com
+1 414-276-8150
219 E Michigan St, Milwaukee, WI 53202 アメリカ合衆国
11:00~20:00(基本無休)
予算$20