【閉業】駒込「くまちゃん」 品数はなんと百種類!路地裏の夫婦で営む大衆居酒屋

【閉業】駒込「くまちゃん」 品数はなんと百種類!路地裏の夫婦で営む大衆居酒屋

2020年5月4日

山手線に乗りながら、今日はどこで飲もうかぼんやり考えていると、ちょうどタイミングよく駒込でドアが開きました。今日はこの街ではしご酒。

徳川5代将軍・徳川綱吉の時代につくられた大名庭園から続く庭園「六義園」や、バラが美しい旧古河庭園(北区)、そしてソメイヨシノ発祥の地と言われる染井霊園と、植物鑑賞に訪れることの多い駒込ですが、駅周辺に広がる活気ある商店街も魅力的です。

今日目指すお店は、駒込さつき通りから路地に入った場所にある居酒屋「くまちゃん」。かわいい店名ですがいぶし銀の酒場です。それではどうぞお付き合いください。

 

JR山手線駒込駅。池袋、上野界隈の喧騒から離れ、落ち着く昔ながらの町並みが残るエリアです。

 

路地にぼんやり灯る大提灯。お店の明かりに吸い寄せられる習性は、きっと本稿読者の皆さんならきっと一緒。

 

間口はさほど広くはなく、一見こじんまりとした小料理屋風に見えますが、実はここ、奥に長く、さらにL字型に広がっています。

 

調理場に向いたカウンター席はひとり飲みの特等席。壁に向いたカウンターやテーブル、小上がりと様々な利用形態に対応したつくりです。暖色一色の酒場空間は、固まっていた心を優しく溶かしていきます。

 

今日の気分は瓶ビール。サッポロ黒ラベル(大ビン・550円以下税別)を受け取ったら、そのままのテンポでビヤタンを満たして、では乾杯。

 

瓶ビールはサッポロ黒ラベルとキリンラガーの2種類。昔から併売と聞きます。樽生はサッポロヱビスです。酎ハイ類は330円から。定番酒は櫻正宗の別銘柄「稲豊」で260円。とっても良心価格なのです。

 

ばくれん、真澄、越乃景虎、日高見、北雪など地酒も豊富な品ぞろえ(450円~)。

 

店の壁はほとんど短冊で埋め尽くされています。この圧倒的な情報量。品数はざっと100種類以上。はじめて訪ねた方は、着席から3分間、周囲をぐるぐる見回し続けることになるはず。魚が多いですが、焼鳥もあり、つくね(150円)はちゃんと自家製です。

 

加えて今日のおすすめのホワイトボードときた。これがまた、びっしりと書かれていて大変。サービス精神旺盛のご夫婦の想いが伝わるような「なんでもある」というもてなしを感じます。

 

手元メニューにも、居酒屋の定番の顔ぶれがずらり。全部把握するのは不可能かもしれません。

まぐろぶつや岩牡蠣など400円からの魚介類があり、しかも刺身だけで10種類以上。サヨリ刺しなど、旬を感じる魚の存在も店を光らせます。

 

うーん、決められません。悩んだら、冷やしトマト(300円)。

 

私のイチオシ、自家製ピザ風とろろ(480円)。丸形ステーキ皿の上でグツグツと音を立てて登場です。ピザの生地をとろろに変えた創作料理。伸びのあるたっぷりチーズと、同じく伸びるとろろの不思議なマリアージュが楽しい一品。トマト、ベーコン、アスパラなどに加え、とろろに隠れて細かく切ったイカ、タコ、そしてエビが入っています。

 

ピザはカロリーが…でも、あの味でお酒を飲みたい。その葛藤の間を絶妙な位置で攻められたような料理。

 

ここは、昭和の山の手の味「ホイス」を扱う貴重なお店。ウイスキーならぬ、ホイスキーをいただきましょう。

 

東京の老舗に多い色付きの焼酎ハイボールの一種。ウイスキー・ハイボール風ですが、ベースは甲類焼酎です。甲類のクセを隠すためのエキスも、いまは飲み心地を高める要素。すっきり、さっぱり、ほのかに甘い印象を残すのは香料によるものでしょうか。ホイス、好き。

 

酒場のなすみそ(450円)が好き。甘辛い味としっとり油をまとったナスは、酎ハイと相性ぴったりです。

 

駒込を代表する大箱大衆酒場のひとつ。庭園の花が見頃の時期は混雑が予想されますが、知っておくときっと楽しめるお店です。スーツ姿の男女やジャンパーにサンダル姿のラフなノンベエさんなど、地域に密着した空間。お近くを訪れた際にいかがですか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)

 

くまちゃん
03-3917-3347
東京都豊島区駒込2-13-9
16:00~23:00(日祝定休)
予算2,500円