【閉業】長野「大久保西の茶屋 長野駅前店」 お昼酒にも、飲み屋として使える老舗蕎麦

【閉業】長野「大久保西の茶屋 長野駅前店」 お昼酒にも、飲み屋として使える老舗蕎麦

2019年6月9日

東京を朝に出発すると、お昼前には長野についてしまいます。昔よりもずっと近くなった長野ですが、駅周辺で飲めるところがありまなくて、お昼から飲みたいときに困りがち…。そんな経験を繰り返す中で、たどり着いたお店が「大久保西の茶屋 長野駅前店」です。戸隠で300年以上続く老舗の蕎麦屋の支店で、お昼から夜11時まで通しで営業しています。

蕎麦屋といえば、蕎麦屋で飲む「蕎麦前」という楽しみ方がありますが、なかなか大衆居酒屋のようにじっくり飲む雰囲気ではないことも多いですよね。ここ「大久保西の茶屋 長野駅前店」は、蕎麦屋でありつつ、雰囲気はどっしり老舗の郷土料理で飲ませてくれるようなお店で、酒場としてぜひおすすめしたい一軒です。

 

東京から長野へは、北陸新幹線で1時間30分ほど。駅から出れば、夏季もからっとしていて涼しい風がふく高原の街・長野です。駅前からは戸隠や川中島などを結ぶ路線バスが伸びています。

 

駅・善光寺口の正面が石堂町。そこから権堂、そして善光寺にかけてが長野市の中心街です。百貨店やシティホテル、商店街、そしてみんな大好き細い路地に飲み屋やスナックが連なる歓楽街が広がっています。ただ、やはり日中おは飲めるお店が少なくて、結構お店選びに困ってしまいます。

 

せっかくの長野です。善光寺の門前町ですから、飲む前にお寺を訪ねてみましょうか。善光寺へは駅前から路線バスで10分ほどのほか、長野駅から出ている長野電鉄で2駅。ホームへ降りてみると、東京で見覚えのあるような電車が止まっていました。

 

これぞ門前町。お土産物屋や甘味処、食堂が並ぶ古き良き観光地の雰囲気そのままです。善光寺の表参道は、JR長野駅前から一直線に仁王門へと続いています。

 

創建以来1400年もの歴史がある善光寺。その参道には全国的に知られる老舗暖簾が数多。江戸時代から続く七味の八幡屋の前には七味をもしたオブジェがありました。

 

長野県の松本は城下町として栄えたのに対し、こちら長野市の中心はお寺です。「遠くとも一度は参れ善光寺、救け給うぞ弥陀の誓願」と詠われてきました。

 

本堂正面に置かれた獅子を載せた大香炉。この煙を浴びると無病息災、病気平癒のご利益があるのだそう。飲む前に、しっかり浴びておきたいですね(笑)

 

さて、そろそろお昼を過ぎて落ち着いてきた頃なので、駅前に戻って目的の「大久保西の茶屋駅前店」へ。

 

駅前の喧騒が嘘のように、民芸調で落ち着いた静かな店内。厨房に向いたカウンター席と、板間の小上がりという配置です。ボトルキープの本数も多く、地元の皆さんが夜は居酒屋として愛用していることが伝わってきます。

 

先客は昼食に蕎麦を食べる会社員の方と、お酒を楽しまれているご隠居さん。穏やかな午後の日差しの中で飲みたい気持ちが高まります。

雑きのこおろし(650円)、信州サーモン刺身(950円)、野沢菜の天ぷら(500円)、そば団子(420円)。短冊に書かれた土地の食材が誘います。

 

銘酒揃いの長野ですが、やはり一杯目はいつものビール。樽生はサッポロ黒ラベル(小480円・中630円)で、大きな中ジョッキが嬉しいです。では乾杯!

 

差し込みメニューには、舞茸天、たまり漬けに並んでカキやタコなども。長野県はサバ缶消費量日本一ですし、海鮮居酒屋が大人気だったりと、魚料理は海がある地域と変わらず食べられています。

 

おつまみの一番人気はやっぱり野沢菜天。馬刺し(900円)や煮込み(590円)も信州の定番ですね。いなご佃煮やはちのこもあります。お昼から通しでやっているお店でこれだけ土地の味が充実しているのは嬉しいものです。

 

おそばは890円から。小生や日本酒1合(400円)と天ぷらせいろでさくっと飲んで行く人の姿もありました。

 

ビールを頼んだ際に、軽い付け合せとして頂いたウドの和え物。

 

まずはたまり漬け(400円)をぱりぱりと。野沢菜かと思いましたが、自家製できゅうりとナスでした。甘さあり辛すぎない優しい味です。

 

“こりゃたまらん”と、今井酒造店の若緑は特別本醸造。長野市内でつくるお酒で、千曲川水系で仕込んでいます。土地の酒と土地の食材、同じ水で育った組み合わせに間違いはありません。

 

舞茸天ぷら(800円)は想像以上に立派でした。

 

もちろん近隣の山々からとれたものだそうで、野趣のある大きさと、みずみずしくフレッシュな味。旅先グルメの楽しさを感じさせます。

 

たまり漬けと舞茸天ぷらがあれば、300mlの日本酒と向き合うのに十分なほど。居合わせたお客さん数人でお店の空気を共有する静かなひとときに、すっかりほろ酔いです。

最後はもちろんお蕎麦(ざるそば・890円)を。出雲、岩手とならぶ日本三大そばのひとつと言われています。そば粉は挽きぐるみで、「ざる」といっても海苔をふりかけないのが特長です。中細でコシがあり、スルスルと喉をながれます。

 

戸隠にある本店は、江戸時代から参拝者向けの休憩所として続いてきたお店ですが、駅前店もまた、長野の町を散策する合間の素敵な一杯処でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大久保西の茶屋 長野駅前店
026-228-7377
長野県長野市南千歳1-19-8
11:00~23:00(土日祝は22:00まで・基本無休)
予算2,200円