水が綺麗な土地には、美味しい山・里・海の幸あり。中国地方で一番高い山、秀峰大山に抱かれた自然豊かな鳥取は、美味しいものがいっぱいです。
鳥取の食材で必ず名前が上がる大山地鶏は首都圏ではブランド鶏としてもてはやされていますが、鳥取県の酒場に行けば意外なほど”あたりまえ”に食べられていて驚きます。老舗の焼き鳥店が豊富で、訪れる際は一軒は立ち寄られてみてはいかがでしょう。
今年も日本海側の雪はすごかった。日中は積雪もなく快晴でしたが、みるみるうちに暗くなり、夕方から吹雪となった2月のある日。鳥取駅前の酒場で一期一会の会話で教えてもらった店、その名もずばり「焼鳥屋」へ向かいました。
ここ鳥取市末広温泉町は、鳥取県庁やJR鳥取駅にも近い飲み屋街。さすがにこの天気だと、はしご酒をする人の姿もわずか。それなのに、酒場を覗いてみると何故か満席なほど賑わっていることが多々。冬の地方都市の飲み屋あるあるネタのひとつです。
末広温泉町で長年続く人気の「焼鳥店」。界隈で知られた老舗です。テーブル1卓とコンパクトなカウンターが配されただけのこじんまりとした酒場です。ご夫婦で営まれています。
ビールはサントリー・ザ・モルツ(500円)。懐かしいデザインのジョッキがいまだ現役なことに、その歴史を感じつつ、美味しい一杯でまずは乾杯!
酎ハイは400円、日本酒は瑞泉、美人長、諏訪泉、日置桜と地酒が揃います。純米酒でも420円とお手頃です。
ネタケースに並ぶ鶏は、どれも冷凍ではなくフレッシュなもの。開店前にじっくり時間を書けて仕込んでいるそうです。
串のお供には冷やしトマトがぴったり。もちろん地元の野菜を揃えています。看板料理の焼鳥はかわ、ずり、きもなどが100円、ねぎまやつくねは150円と、地鶏でも普段の飲み屋値段というのが素敵でしょ。鮮度抜群の鶏をつかった地鳥たたきは店の人気メニューだそう。
ぼんじり、せせり。備長炭でじっくり焼き上げ、弾力とジューシーさが両立しています。
1本は大きくないものの、濃厚な味は主張が強く、お腹にたまらずお酒を進ませる素敵な肴と言えそうです。ご夫婦との会話から、鶏の焼き方やお店こだわり、町の歴史などを聞きつつ摘んでいきます。
お酒は香住鶴。山廃特別純米です。県境をこえてすぐ、兵庫県でつくられるお酒で鳥取の市街ではおなじみの土地の酒です。ほのかな酸味と優しく包まれるコクを楽しむ一杯。こういう焼鳥屋ならばコップに注がれたほうが似合います。
透き通った出汁をつかった上品なおでん(100円から)。焼鳥の合間にちびりちびりと摘んで、お酒をきゅっと飲めばいい気分です。
こじんまりとした飲み屋で笑顔が素敵なご夫婦が迎えてくれる「焼鳥屋」。時間によっては満席になるよとお隣の常連さん。今日は遅めの訪問なのでゆっくり楽しめました。
美味しい鶏で地酒で一献やりたいときにいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
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