久慈「小龍」 旅の昼酒にも最適。通し営業の老舗割烹で地酒・地魚

久慈「小龍」 旅の昼酒にも最適。通し営業の老舗割烹で地酒・地魚

旅先で飲むお昼酒はどうしてこんなに格別なのでしょう。できることならば、街一番の老舗で地元の食材やお酒が楽しめるお店があればいいのに――。

岩手県北東部、久慈(くじ)にはあります。

1953年(昭和28年)創業、割烹として久慈で最も歴史あるお店「小龍(こりゅう)」。なんと午前11時から午後10時まで通しでやっています。お客さんは震災復興関係で働ききている職人さんや漁業関係の人、そして列車の乗り継ぎ時間を利用して軽く一杯を楽しむ旅行者など。

地元の名産品のウニをつかったウニ丼をはじめ、うな重やとんかつ定食などのご飯物がありますが、メインは割烹の名の通り魚介類を使った一品料理。土地の味を楽しむのに最適な一軒です。

 

久慈へは東北新幹線も停車する八戸駅からJR八戸線で1時間50分。太平洋海岸線を沿ってを走るJR八戸線の車窓は美しく、絶景スポットが度々やってきます。白樺の林を抜けるとまもなく終着、久慈駅です。

 

人口約3万3千人の久慈市。北上山地と久慈湾の間に開かれた漁業と鉱業の町です。「北限の海女」が活躍する久慈は、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で一躍有名となりました。

 

久慈からさらに三陸を南下し、宮古、釜石、大船渡方面を結ぶローカル線「三陸鉄道」の北の起点であり、三陸めぐりの旅の拠点ともなっています。

 

久慈駅前には居酒屋が約20軒、寿司店が15軒と寿司屋が多いです。

 

駅から歩くこと5分。中心市街地にある「小龍」へ。一階は大衆割烹、2階は宴会や会食ができる広間となっています。

 

ランチタイムは定食を食べる近隣の会社員・公務員などの姿があり、カウンターではお昼から飲みたいご隠居さんが集まるような雰囲気。

笑顔がステキな女将さんが迎えてくれました。

 

生うに丼(2,500円)からはしせまり、天ぷら、やきとり、鴨料理となんでもある内容。定番メニューに加えて、今日の魚が説明され、きんきん(キチジ)、すい(クロソイ)、ひらめ、かんぱち、はまち、えび、さばが入荷しているそうです。

じゃあ、まずは地元の魚を2品お刺身でいただきましょうか。あ、その前にまずはビールを。

 

樽生(450円)、ビン(600円)ともにビールはアサヒスーパードライ。お昼の日差しに照らされて麦色に輝くジョッキは美しいです。では乾杯!

 

ビールについてくる小鉢は地元でとれたナスのおひたし。魚は華がありますが、さりげない地元野菜もまた旅先味探訪の楽しみのひとつです。

 

久慈は漁協自らしめ鯖加工をするなど、鯖料理が町の定番のひとつ。冬から春にかけて揚がる鯖は、脂、身のバランスが絶妙で、しっとりしながらも爽やかなの余韻が残る絶品と聞きますが、まさにそのとおり。

とれたてのひらめのコリコリとした食感に、じんわり広がる海の甘さもなかなか。

 

こうなると、俄然飲む気持ちが高まるもので、ここはひとつ、地元のお酒をお願いしてみましょうか。

 

定番で置いているお酒(450円)は、長年変わらず久慈市 陸中宇部の造り酒屋「福来」です、と女将さん。南部杜氏がつくる岩手・三陸の魚にあうお酒です。

 

冷(常温)でもらって、きゅっと一口。地元消費向けの銘柄特有の、飲み飽きないずっと飲んでいられるような味です。

 

合わせるおつまみは、磯の海女汁(600円)。三陸わかめやアカモクが入り、力強い磯の風味が漂います。素潜りでとる久慈のウニや、ホタテ、しゅうり貝などの貝類がたっぷり。液体おつまみとはまさにこのこと。お酒がちびりちびりと進みます。

 

冷酒はお店のオリジナルラベル、本醸造生酒。こちらも福来のお酒です。

 

もう一品食べたいな―ということで相談すると、地元の人に人気のおつまみで揚げだし豆腐(600円)はいかがですか?と教えてくれました。ぜひぜひ。

 

町の豆腐店がつくるお豆腐に、とろみたっぷりの餡をあわせた熱々の料理です。見た目の濃い味感と違って味は程よいあんばい。体を芯から温めてくれます。

カウンターで一緒になった地元にお住まいのお父さんと、丁寧な接客で街のことをいろいろ教えてくれた女将さん。一期一会の飲み屋話を軽く楽しんで、すっかりほろ酔いです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

割烹小龍
0194-53-2522
岩手県久慈市巽町1-12
11:00~22:00(不定休)
予算3,000円