直江津で魚をつまみに日本酒を飲むならば「軍ちゃん」が定番。地元の方の情報で訪ねたそのお店は、まさに港町の名居酒屋。板場で包丁をにぎる主人は、能生漁港などであがる魚を揃えるために漁協地方卸売市場で自ら競りに参加し、朝水揚げされた魚はその日の夜にはテーブルに並びます。
北陸新幹線の上越妙高駅から、妙高はねうまラインで15分。越後の国府が置かれた歴史と、交通の要衝として栄枯盛衰の中で落ち着いた町並みを残してきた新潟県上越市「直江津」で、美味しい魚とお酒で一献を楽しみましょう。
軍ちゃんは1992年の創業。魚を扱ってきた現在のご主人が開いた海鮮居酒屋。直江津のほかに、同じ上越市内の高田にも店を出しています。高田のほうが新しく広い座敷なども完備されています。
平成の開業とはいえ直江津店はどっしりと構えた街の名店の佇まいそのもの。老舗居酒屋が好きという方にもおすすめできるお店です。
ご主人の前、冷蔵ショーケースが並ぶカウンターが一人飲みの特等席。ケースの中で高級魚・甘鯛やのどぐろ(アカムツ)、ソイ、カサゴなどがつやつやに輝いています。
ビールは樽生、瓶ともにサッポロ黒ラベルとヱビスの2銘柄。新潟県は日本人初の醸造技師・中川清兵衛の出身地です。日本酒の前に一杯のビール(540円・以下税別)もいいものです。
それでは乾杯!
日本酒の品揃えはさすが酒の名産地。能鷹(田中酒造・上越市)、鮎正宗(鮎正宗酒造・妙高市)、妙高山おやじ(妙高酒造)などの地元銘柄から、全国区の雪中梅や麒麟山、八海山に〆張鶴と全部で20種類以上も揃っています。1合378円からと手頃な価格で、普通酒から生酒、特定名称酒まで製造方法も様々。天福、雪中梅、鮎正宗の3つを楽しめるくびきセット(864円)なども楽しいです。
さてさて、お酒も決まったところで旅の目的、地魚三昧といきましょうか。魅惑の顔ぶれが並んでいて、どれもこれも食べたくなります。刺身、焼き物、煮もの、どんな食べ方が良いかを聞いてみるのも楽しみのひとつです。
小鉢料理も珍味が勢揃いしていて圧倒されます。天ぷらの筆頭はふぐ白子天。甘海老よりも一回り小さく汽水域に生息する砂海老はかき揚げで。
魚は握り寿司で用意してもらうことも可能です。どれもこれも食べたくなる魚ばかりです。
一人前(8品) 1,580円の刺盛りからスタート。すべてが地物でご主人が仕入れてきたもの。透き通ってコリコリとしているイカ、もちもちのカレイやホウボウ。豪華絢爛、絶品揃いに魚好きならばテンションが上がらないはずがありません。
ボリュームがよく、盛り付けは丁寧。包丁の入り方もよくて魚介の味を引き立てています。
盛り合わせにはボタンエビも加えてもらいました。新潟沿岸は海老の種類が豊富ですが、鮮度のよいボタンエビは格別です。
あわせるお酒は能鷹 大吟醸 杜氏魂。新潟らしい淡麗な味と、大吟醸らしい香りと旨口を楽しむ一杯。刺身との相性が抜群にいいです。
カサゴ(1,800円より)は煮付けで。強面の魚なのにどうしてこう繊細な味なのでしょう。こぶりながら肥えたよいものです。かなり濃い目にみえるタレは、カサゴを煮付けにするならこれくらいでないと、味が染み込まないのでしょう。身質のよさを感じる弾力と甘さは、お酒も誘います。
次のお酒は純米吟醸鮎。雪国新潟でも特に豪雪地帯として知られる妙高のお酒です。吟醸香は控えめで、口当たりはやわらかく、酸味の少しある余韻が続きます。
美味しいお酒と美味しい魚があれば、いつだって笑顔になれます。日本海から吹き付ける風に煽られてこわばった顔も、ここにくれば誰でもほぐれます。
カウンターは地元のお酒好きの方の姿も多く、宴会も盛んに開かれているにぎやかなお店。交通の要衝・直江津の駅近くにあるお店なので、近所の方は列車で帰宅するにも便利だと話します。
温厚なご主人との会話も楽しく、このあともじっくりとお酒を楽しみました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
軍ちゃん 直江津店
http://www.gunchan.net/
025-545-2728
新潟県上越市西本町1-14-2
17:00~22:30(ランチ営業あり・不定休)
予算4,000円