三大酒処のひとつ、京都の伏見にある伏見稲荷大社。その東にある分社が東伏見稲荷神社です。創建は昭和に入ってからのことで、かつて上保谷と呼ばれていたこの地は神社にあわせ、東伏見となった歴史があります。
酒処伏見に由来のある地名ということで、お酒好きとしては親近感を感じる東伏見。多くの有名選手が練習につかった西武グループ東伏見アイスアリーナが有名ですが、飲み屋だって負けていません。
魚好きにおすすめは、味和い処かっぱ屋。長く続く大衆割烹で、家族経営のあたたかさと、ぱりっとした雰囲気をあわせもっています。
西武新宿線東伏見駅。典型的なベッドタウンらしい表情の駅です。
東伏見神社の誘致に西武鉄道が大きく関わった歴史があり、南口駅前には大きな鳥居も設置されています。
目指すかっぱ屋は、そんな鳥居のある南口から線路を挟んだ北側。駅前通りに面した場所にあります。
きれいな店構え、アイロンのかかたった暖簾。店内から賑やかな声もあわせ、入らずにして良いお店だと感じられるものです。
テーブル席と厨房に向いたL字のカウンターという配置で、早い時間から満卓になるほどに賑わいです。カウンターはお一人で飲みにくる常連さん風の方が集い、テーブル席もご隠居さんたちや家族二世代で飲みに来ているお客さんが楽しそうに過ごしています。
そんな空間に身をおいて、さぁ、一杯目はやはりビールでしょう。状態抜群、ピカピカのセパレサーバーから注がれた黒ラベルで、乾杯!
開店の17時から19時までの二時間は生ビール中ジョッキが300円(取材時・以下税別)、サワー類は250円と嬉しい値段。通常でも大瓶(黒ラベル)が620円と良心的です。定番酒は灘の酒「神鷹」。渋いチョイスも老舗大衆割烹らしさ。
何度かお邪魔していますが、ここのマグロ刺しは毎回頼みたい良質なもの。刺身だけで20種類くらいあるのは、店が人気で回転がよい証拠。活だこと北海だこ、タコだって2種類!旬の魚を満喫しましょう。
煮もの、焼きもの、そしてフライもとっても充実しています。価格も良心的で500円前後が中心。ついつい一品多く頼みたくなります。姫さざえの煮付け、のどぐろ一夜干し、穴子棒ずし、主役級の顔ぶれがずらり。
定番メニューもこの通り。東伏見で暮らすお酒メーカーの知り合いのイチオシは、かっぱ鍋だそう。
まぐろとタコの二種盛りをチョイス。大将の丁寧な仕事が伝わってくる刺身。
中トロといったところでしょうか。ねっとりしていて非常に美味。
こちらは天然ヒラメの昆布締め(800円)。盛りの良さもさることながら、適度に若く締められ昆布の旨味をまとったヒラメは、まさに酒の肴といったところ。
神鷹のぬる燗をちびり。ヒラメ昆布締めをそっと一口。活気ある店内の清潔なカウンターで心地の良いひとときです。
ぷりっぷり、濃い味わいがお酒を誘う生牡蠣。
ハッピーアワーのうちに、酎ハイも飲んでおきましょうか。レモンサワーや青りんごサワーは目黒区の割材メーカー・博水社のハイサワーが使用されています。甘くない酎ハイはお刺身にもあわせられます。
お通しのないお店ですので、すぐにでるおひたしなどの小鉢もぜひ。
王道、正統派。かりっとした衣と、絶妙な火の通り方でジューシーさを失っていない揚げ物も最高です。衣がじゅっと音を立てるような揚げたてのイワシフライ(500円)にソースを。もちろん刺身で出せる鮮度のよいイワシが使われています。
刺身で使わない部位はアラ煮で。それでも身をあえて多く残し、脂ののったすき身を堪能できるように作られています。
飲みに行く度に大きく変わる日替わりの献立。しかも種類が多いので何度通っても飽きることはなさそうです。頻繁に通われている常連さんの気持ち、納得です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
かっぱ屋
042-468-5674
東京都西東京市富士町4-14-15
17:00~23:00(日定休)
予算3,000円