西国分寺までやってきました。中央線は新宿、中野、高円寺…と吉祥寺まではお昼からやっているような老舗が点在しているのですが、三鷹以西はなかなか厳しい。そう思っているそこのあなたへ。
いやいや、むしろ三鷹以西は味のある地域密着系酒場の宝庫で、昼酒とまではいかなくとも、夜は遠征する価値のある飲み屋が実は多いんです。
西国分寺駅は武蔵野線と中央線が交差する乗り換え駅。ターミナルというポジションは前後の国分寺と立川に任せて、ここは閑静な住宅街が広がっています。飲み屋街といえるほどの道はないのですが、駅前に一軒、創業40余年の老舗酒場があります。周囲は静かな個人経営の喫茶店くらいで、アパートや低層型マンションに囲まれた落ち着いた立地なのに、ここだけものすごく賑わっているのが不思議。
今回はそんな西国分寺の特異点的存在、地元密着の名物もつ焼き店「鳥芳」をご紹介します。木のぬくもり感じる暖かい雰囲気ですが、2階建てで結構広い。一階にも二階にもカウンターがあり、テーブル席はあるもののメインは一人飲みといった空間です。
軒先にある手入れの行き届いた植木鉢ときりっと白い暖簾、店内から漏れる静かな笑い声と暖かい光。無意識でも吸い込まれてしまいそう(笑)
取材時も一階は満席。多くは地元の方で10年・20年の常連が当たり前。一旦帰宅して、普段着につっかけに着替えてからやってくるような人が多い。ベッドタウンの酒場ならではの落ち着いた感じがあります。
二階では一組の会社員が宴会、あとは地元の若夫婦や初老の紳士が静かに燗酒を飲んでいるといった客層。
それでは、まずはビールで乾杯しましょう。瓶ビールは大びんの黒ラベルが750円、生ビールはヱビスで中ジョッキが630円で、大ジョッキは780円という価格設定。地元東京・福生の地酒「嘉泉」が460円。
生ビール中と150円の価格差で、どかんと巨大な1Lジョッキになるので、瓶ビールや中生が割高に感じる人にはこれが断然おすすめ。ヱビスの1Lクラスがこの価格。いっぱい飲む人はお得だね!
それでは乾杯!
こちらがドリンクメニュー。ビールと日本酒が人気ですが、おもしろいのは焼酎セット。レモンサワー割や調布で製造されるホッピー割などがすべて580円となっています。なんと焼酎は1合ほど入る徳利に入って登場します。なので、普通に考えれば、ホッピーのナカ2杯分の焼酎なるわけで、これも見方次第ではお得なんです。メニューの奥のからくり、楽しくない?(私だけ?)
季節メニューでは漬物などが旬のものを取り入れています。食べ物はチレヌタ(450円)が名物で、珍しい脾臓とネギ・ニラのヌタ料理で、レタスと一緒に食べるサラダ風のもの。ボリュームがあるのでひとり酒で梯子予定の方はご注意を。
創作といいますか、あまり見かけないもつ料理があるので勉強になります。
カウンターからの視界は、老舗感たっぷりの厨房です。店員さんは結構若く、ハキハキとした感じ。このへんはなんとなく中央線の他の老舗もつ焼き店と似ていて若返りがおきているように感じます。
喉が渇きすぎていましたから、二杯目の大生にシフト。割り箸すら開けていないという…(笑)
ささみとザーサイの和えもの。甘酸っぱい味付けにザーサイの塩気が混ざり絶妙な味のバランスです。鶏のふわっとした舌あたりの中に混ざるコリコリとしたザーサイの噛みごたえがあいまって、なかなか楽しい。
つくねとハツ。串は1本から注文可能で、タレと塩から選びます。タレは甘めでさらっとしています。炭火で焼いているので香ばしさがあり、タレにはいっている隠し味の様々な風味も混ざり心地いい。
タンとチレしそ巻き。くきゅくきゅとした食感のチレは中に旨味がぎゅっとつまったとろとろの部分があり、そこにシソの風味が重なってくるので食べていておもしろい。ピリ辛の味噌をつけてすっと口に含めば、ビールや日本酒が恋しくなります。
お燗の嘉泉をもらって、もう少し食べ進めましょうか。
カウンターの席間は結構狭いのですが、店員さんもお客さんも心得ている感じの人ばかりで、ぼーっと飲んでいるととろけていきそうな心地よさがあります。
西国分寺の酒場、今日はちょっぴり遠回りして飲みにいきませんか?
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鳥芳
042-323-9956
東京都国分寺市泉町3-37-25
16:30~23:00(日祝定休)
予算2,100円