東室蘭「安兵衛」 1977年創業。仲良し家族が切り盛りする海鮮居酒屋

東室蘭「安兵衛」 1977年創業。仲良し家族が切り盛りする海鮮居酒屋

2019年9月21日

室蘭は北海道開拓初期の頃より、道央における太平洋側の海の玄関口として栄えた歴史があります。1892年(明治25年)に鉄道が開通し、道内各地で採掘された石炭は室蘭港で船に積み替えられました。

1907年(明治42年)には室蘭に日本製鋼所室蘭製作所が完成し、以来、鉄の町と呼ばれ、北日本最大の重工業都市として成長していきました。

工業都市には、たくさん働き、そしてたくさんお酒を飲む人々が暮らします。室蘭も例外ではなく、室蘭駅と東室蘭駅、2つのターミナル駅前を中心に立派な繁華街がつくられていきました。そして、「室蘭やきとり」に代表される多くの大衆酒場料理が誕生します。

焼鳥はもちろんオススメですが、ここは同時に港湾都市でもあって、魚介類で飲むというチョイスも外せません。東室蘭で42年続く「安兵衛」は”魚喰い”にぜひ訪ねて頂きたい居酒屋です。

地元で「大衆居酒屋で飲むなら安兵衛!」と言われる安定の店。大きな戸建てと広い店先。店内は暖簾をくぐってすぐ土足を預ける方式で、ぬくもりたっぷりの地元木材を多用した空間にほっとします。BGMは三味線で、気分は「飲むぞ飲むぞ」。

丸太のテーブル席のほか、宴会向きの個室と、掘りごたつ式のカウンターという配置です。

強面の大将を前にしてちょっぴり緊張のカウンター。まずは恵庭育ちのサッポロ黒ラベル(500円)で乾杯!

ビール(中瓶500円) や酎ハイ類(400円)、リキュールはサッポロ系。日本酒は大将のお気に入り、京都は伏見の玉乃光、一本。

ほっきにつぶ、甘海老、たこ、イカ、その他旬のものなど。仕入れ自慢の大将に相談しながら、ぜひともイチオシの魚介を選んでください。

焼き物はほっきやハラス、さんまなど。メニューの左上の項が「バターもの」というのが実に北海道らしいですね。料理はほとんどが千円未満で、一人でちびちび摘むにも優しい内容です。

※メニューの大きな画像はこちら

名物は40年以上前から人気の焼き玉まんまというバター醤油味のおにぎりや、ニンニクが効いた胸肉の竜田揚げ風のとりやすべえなど。

まぁこれで飲んでいてよ!と大将が盛り付けてくれた一皿。松前漬け風の浅漬で、昆布のぬめりを纏った野菜はみずみずしいのに旨味がぎゅっと詰まっています。

室蘭のお隣、苫小牧はホッキ貝の水揚げが北海道1位。室蘭も同様にホッキ貝漁が盛ん。刺身で頼むと、コースターほどに大きく身は肉厚でぷりっぷりのものが、大将の巧みな包丁さばきで素早く登場。鮮度抜群、ここで食べる価値を感じる逸品です。

醤油もなんと特製。お店でつくる昆布しょうゆは濃縮された昆布のコクがあり、刺身を始め様々な食材の味を引き立ててくれます。

このお醤油、実は取材後にお土産で頂いたのですが、あっという間に使ってしまいました。

大将と女将さんはまさにおしどり夫婦。娘さんも加わって楽しい会話に花が咲き、初めて来た居酒屋とは思えないほど、飲んでいて心をあったかくしてくれました。これも食べてみて、と出していただくマグロ漬けや自家製塩辛などは、何度もうなずいてしまうほどの美味しさです。

「北の大地で飲む玉乃光はまた違った印象になるよ」

雪のようにフワフワで、ほんのり甘くあとからジワジワと体を暖めてくれる美味しい「しばれ酒」(1パック1,300円)。

まるでハンバーグのようなこちらはつくね(500円)。野菜たっぷりのつくねに、コクのあるあんがかかります。手頃でボリュームもある人気料理。

ねじり鉢巻がトレードマークの大将の村上さんを中心に二代目と女将さん。安兵衛の看板も大将が彫ったのだそう。スノーボードのインストラクターもされているそうで、多趣味でセンスがいい、素敵な”おやじ”さんです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

安兵衛
0143-45-5102
北海道室蘭市中島町1-10-14
18:00~24:00(日は22:00まで・水定休※第4水は営業)
予算3,000円