室蘭「鳥辰本店」 鉄の街を支えた豚のやきとり。街の歴史で飲む

室蘭「鳥辰本店」 鉄の街を支えた豚のやきとり。街の歴史で飲む

室蘭といえば、鉄工業の街です。明治時代より北海道有数の工業地帯として栄え、現在も白鳥湾一帯に新日本鐵住金、造船、石油化学と重工業が操業しています。北海道観光というと室蘭はやや影が薄い街ですが、酒場の視点からみれば、工業の街にこそ素敵なお店は多いものです。

室蘭を代表する酒の肴といえば「室蘭やきとり」。輪西の屋台で始まった北海道玉ねぎと豚肉を打った”鶏じゃないやきとり”は街の名物です。

今回は、そんな室蘭で、昭和30年代よりやきとりを看板に掲げた老舗「鳥辰」をご紹介します。

 

室蘭は比較的アクセスのよい街です。札幌や新千歳空港(南千歳駅乗り換え)からJR室蘭本線の特急すずらん・北斗が高頻度で結んでいます。南千歳からは1時間程度です。函館方面へも2時間弱で結ばれています。

また最近では、2018年6月より宮古・室蘭「シルバーフェリー」が就航し、岩手県から室蘭までの船旅でも注目されています。

 

室蘭の玄関口は噴火湾に突き出した絵鞆(えとも)半島の付け根に位置するJR東室蘭駅です。半島の先にある旧市街「中央町」にある室蘭駅へ直通する列車がありますが、多くはここで乗り換えとなります。

 

輪西、御崎、母恋と半島の工業地帯の中を細かく停車していくと、終点の室蘭駅。駅舎や駅前ロータリーは明るくきれいで、高校生や通勤客で結構賑わっています。

 

目指す鳥辰は、室蘭駅から徒歩5分ほどの場所です。かつての繁栄を感じ、現在は静まり返っている中央町ですが、鳥辰はまるで街中の飲み客を吸い寄せたかのように大変な賑わいとなっています。

 

1951年(昭和26年)に小さなラーメン屋として創業され、サイドメニューのやきとりが人気になって、昭和30年代からやきとりメインの居酒屋となったそうです。

現在は3代目が暖簾を守り、お客さんも親子三世代。街の現在進行系の歴史がここにあります。

 

ここは北海道。北海道開拓使のシンボル・北極星を掲げたサッポロビールが似合いますね。ピカピカのビールディスペンサーから、昔ながらのたっぷり入る中ジョッキに注がれて登場です。霧状の泡がもやもやしている抜群の一杯です。

では乾杯!

 

生ビールはサッポロ黒ラベル(520円)、瓶では140年以上続くブランド・サッポロラガーです。

 

日本酒はやっぱり旭川の男山(合同酒精)ですね!室蘭のお酒「欄の舞」(650円)も気になります。

 

看板料理のやきとりは150円からで、精肉、タン、ハツ、レバー、シロ、ガツ…そして鶏、海鮮、野菜とバラエティ豊か。となりの作業着姿のお父さんが頬張っている骨付きザンギ(650円)も気になります。

小上がりではお子さんがつぶ貝刺し(900円)でジュースを飲んでいます…、渋い。

冷蔵ショーケースにはピチピチの魚介類が並んでいて、なるほど魚料理も良さそうです。

 

季節限定の料理も多く、春から秋にかけてトマトの美味しい季節は地元産の立派な冷やしトマトが用意されています。これは絶対食べるべきと常連さん。

 

ラーメン屋さんからはじまった鳥辰は、夜9時以降になるとラーメンが解禁となります。

 

実は、着席と同時にやきとりのオーダーを聞かれました。一般的には最初は「飲み物どうします?」から始まるものですが、さすが室蘭。やきとり、ビール、おつまみの順に注文。眼の前で手際よく、めちゃくちゃよく切れる包丁でささっと盛り付けてくれた冷やしトマトがやってきました。

北海道は魚や肉類が注目されますが、野菜も美味しいですよね。酒場の冷やしトマトが大好きです。

 

それにしても、生ビールの状態がよいです。あえて「良すぎる」と言いたいくらい。きれいなレーシングができました。

 

やきとりと並ぶ名物がこれ、カニシューマイ(3個600円・5コは850円)。焼き場と板場の間に蒸し器があり、常にポクポクと蒸し焼き中です。

 

赤くカニが透けてみえるほど、ぱんぱんに毛ガニが詰まっています。

 

こうしている間も、次々やきとりが焼かれていきます。皆さん10本など結構な単位で注文されるので、焼台は大変なことになっています。これで注文を忘れないのは、さすがベテランの技です。

 

「はい、やきとりね!」

これがまた大きい!創業当初のサイズを維持されているとのこと。照り照りのタレはお肉に絡むみたらし風。やや甘めでお酒かみりんのようなコクが効いています。

玉ねぎを挟むのが「室蘭やきとり」で、鳥辰は玉ねぎも甘みのある中心部分のみを使うというこだわりがあります。

 

また、やきとりに洋辛子をつける食べ方も室蘭が発祥と言われています。しっかり辛い練り辛子。昭和初期、屋台でおでんと一緒にやきとりが食べられていたことから、おでん用のからしを付けたのが始まりだとか。(諸説あります)

 

食べごたえたっぷり、頬張れば思わず笑顔になるこの味。飲み込むと同時に赤星(サッポロラガー)で追いかけて、そのまま「プハーっ」って。

 

一人なら1本からお願いできるやきとり。マスターおすすめのレバーもあと引く美味しさですし、むちむちのシロもタレとよくあいます。原点となった精肉ももちろん追加で欲しくなる美味しさです。

室蘭の土地の味”やきとり”は、東京のもつ焼きを愛する人にもぜひオススメしたいおつまみです。

北海道へお酒を飲みにいきませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

鳥辰 本店
0143-23-3938
北海道室蘭市中央町2-4-17
17:00~24:00(土日祝は16:30~・月定休※月曜祝日の場合、火曜日)
予算2,000円