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街に根付いた食堂は、観光名所以上の土地の色を感じさせてくれものです。戦後直後からの長屋の奥に、「食事の店 自由軒」はあります。
ここは道北経済の中心・旭川。明治時代に開拓され碁盤の目に整備された近代的な街も、一世紀をこえる歴史を持つといい具合に燻されてくるものです。古くからの飲食店街は、有名な横丁に勝るとも劣らない味な店が連なっています。
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旭川は道北・道東へのターミナルです。最北の街・稚内や道東・北見やオホーツク地方の網走を結ぶ特急列車が発着する旭川駅へやってきました。
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街の玄関に相応しい堂々とした駅舎には、ホテルのほかにショッピングモールやシネコン、病院も併設され、人通りも多いです。
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旭川駅北口からまっすぐ北へ伸びる平和通買物公園が街の繁華街を貫いています。駅に近いエリアには商業施設やアパレル店が並び、その奥に飲食店街が広がります。
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北へ歩いていると途端に増えてくる昭和の景色に驚きます。老舗で飲むことがなにより好きな私にはまさに楽園。建物は古く薄汚れていても、店によっては活気が溢れています。
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小路に向いた飲食長屋は、対面が駐車場になり、片側だけが残っています。いつか、このおふくろも覗いてみたいものです。
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歓楽街を歩くこと10分。細い路地の入り口にたつ行灯に「自由軒」の文字を発見。
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食事の店とありますが、お酒が用意されていますし、夜の時間は飲み屋となります。今回は、食堂の昼酒といきましょう。
創業は昭和24年。趣ある店構えそのものが美味しそうです。
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テーブルが数卓に厨房を向いたカウンター、二階には座敷もあります。
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なにはともあれビールで始めましょう。樽生は、道央千歳にあるキリンビール北海道千歳工場でつくられた一番搾りです。では乾杯!
アコールは、生ビール中ジョッキ及び黒ラベル瓶ビール550円、日本酒は500円、ワインも充実しています。洋食屋と食堂、飲み屋の間の子のような品揃えです。
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味噌汁が丼ぶりいっぱいにでてくるとか、カニコロッケやホッケフライなんていうものもありますが、メインはなんといっても豚料理。豚塩焼き、ロースカツなどあるなか、ここはポークチャップを肴にしました。
肉ライスが名物で、そのごはん抜きがポークチャップ。ビールと最高にマッチする豚ロース炒めです。
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とろみのあるソースは甘酸っぱくどこかウスターソースのよう。注文を受けてから一枚一枚切り出してフライパンでソテー。忙しいランチの時間でも丁寧な仕事をされていて、カウンターから調理風景を眺めるのもまたお酒のつまみになります。
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ポークチャップは北海道で定番の料理。各店で個性がありますが、こちらは厚切りのとんかつ用ロースで、肉質はぎゅっとつまったようなものてはなく、ほわっとした柔らかさ。玉ねぎも肉汁を吸っています。
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一人前のボリュームがすごいので、最初は食べきれるかと不安になるものの、ビールをおかわりして飲んでいるうちに、むしろ「もう食べきっちゃった」という感覚になります。
旭川へ訪れた際は、土地の味をぜひ楽しんでみてください。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 自由軒 |
住所 | 北海道旭川市五条通8丁目左2 |
営業時間 | 営業時間 11:30~14:00 17:00~20:30 定休日 日曜日 |
創業 | 1949年 |