【休業】十条「天将」 食堂飲みの醍醐味、ここにあり。人情もおつまみです。

【休業】十条「天将」 食堂飲みの醍醐味、ここにあり。人情もおつまみです。

2018年8月10日

北区といえば、飲み屋好きに一目置かれる飲み屋街「赤羽」を擁する23区北端に位置する特別区です。赤羽は漫画やテレビ番組などで「酒好き集う街」としてお馴染みになりましたが、北区の梯子酒は赤羽だけに収まりません。

お隣の十条も負けず劣らずの歴史を持ちつ繁華街で、点在する老舗の飲み屋がいまも地元のお酒好きに愛されています。

お昼からお酒好きが集うお店は多々ありますが、この街の昼といえば食堂飲みの存在が大きいです。「大衆食堂天将」は、駅前の十条銀座商店街に構え、醸し出す老舗オーラはひときわ目立つ街のランドマーク的な存在です。今日はこちらで黄昏時の乾杯といきましょう。

 

JR十条駅は、ターミナル駅・池袋から2駅にもかかわらず、いまどき珍しい平屋の駅舎です。街の玄関の素朴さも、飲み歩きのわくわくした気持ちを掻き立ててくれるよう。

 

駅前も駅舎の佇まいに似て、ゆったりとした風景です。広い空、人情味あふれる商店街、少し前の東京へタイムスリップしたみたい。

 

「大衆食堂天将」の文字が立派です。和食・洋食の文字と食品見本が並ぶショーケース。まさに、絵に描いたような食堂がここにります。創業は1947年(昭和22年)です。

 

暖簾をくぐり扉をガラガラとあければ、元気の良いお姉さんが「ここか、このへんでどう?」と親しみやすい笑顔で案内をしてくれました。中央の大きいテーブルはお一人様が集うカウンター代わりの場所。はじめましての人同士もこのテーブルと店のムードからすぐに距離が縮まります。

右手には小上がり、左にもテーブル席。今日は地元のお酒好きグループが宴会を始めているようです。

 

生ビールはアサヒスーパードライ(中530円)、瓶ビール(大びん630円)はアサヒの他、珍しいキリンのクラシックなラガーです。昭和40年台、親の世代が飲んでいたあの苦い味は、こういう老舗には間違いなく合うものです。

では乾杯!

 

大衆食堂とありますが、常連さんのほとんどはお酒目的のよう。ささっと丼ぶりものを食べて帰途につくお兄さんを横にして、私はどっしり構えて夕暮れの一献を楽しみます。

まぐろ刺しは550円。値段からは想像つかないいほど肉厚の赤身がたっぷり盛られてきました。すじの少ない部分もあり、侮るなかれという一品です。

 

料理は壁にはられた品書きの他、店内に並べられたショーケースで選びます。看板に和食・中華とありますが、それだけでなく揚げ物も充実しています。十条名物のいりぶた、ハムエッグ、カレーコロッケ、とんかつ、マカロニ、みんな大好きナポリタン。300円から500円の価格帯で、毎日でも通いたくなります。

 

まぐろみそ(350円)は、大きくぶつ切りのまぐろの味噌漬け焼き。

 

博水社のハイサワーレモンを片手に、ちびりちびりと摘むのがなんとも言えない幸福感です。

 

常連さんが美味しそうに食べているマカロニに誘われて、こちらも便乗注文。こういうお店って、他の方が食べているものが猛烈に美味しそうに見えるんですよね。

 

ソースをかけて、下町の大衆味をしみじみ味わう時間。いもとマカロニの合わせ技、なかなかいいものです。

 

続いてホッピー(440円)。白ホッピーのみの取り扱いです。懐かしきセンゴク焼酎のロゴ入り酎ハイグラスに氷屋さんの氷と甲類がグラス半分ほどの水面で誘います。

 

氷に当てると泡だって気が抜けるので、そっと縁を沿うようにトトトと。この瞬間、たまりません。ビール、ハイサワーと進んでも、まだまだ喉が乾いていますから。

 

太陽も傾き、昼の強い日差しは落ち着き、優しく暖簾越しに差し込む明かり。ときどきやってくる常連さんとバトンタッチするように帰る方、皆さんの日常がここにはあります。そんなほっこりしたムードもまたお酒を進ませるアクセント。

素敵な食堂飲み、皆さんもぜひ。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

天将
03-3906-6421
東京都北区上十条2-24-12
10:30~14:30・16:00~20:00(日は19:00まで・火定休)
予算1,600円