反町の老舗酒場として知られる「鳴門」(昭和31年創業)が移転したのは2018年。
以前の店舗は木造アーケードの中にあり、昭和30年代の風情をそのまま残した建物でした。座席は7つほどしかなくて、なかなか人気で入れないことも多かったのですが、新店舗は幾分広くなっています。空間から感じる味わいは変わってしまいましたが、それでもご主人の手間ひまかけた美味しい焼鳥は健在。店を継ぐまでは、長年、中華料理店で腕を振るっていたご主人がつくる中華な一品料理も人気です。
反町や東神奈川の飲み歩きには欠かすことのできない一軒。さぁ、新店舗の暖簾をくぐってみましょう。
写真は移転前の「鳴門」。
移転して、キレイになってもカウンターの店
温厚なご主人が迎えてくれる、ほっとできるカウンター。奥行きがあって、隣席との距離も余裕がある、ちょっぴり贅沢な空間です。移転後はビールがキリンになりました。それでは、キリン一番搾りの樽生(500円)で乾杯!
ビールを筆頭にして、品数をしぼったシンプルな飲み物メニュー。老舗らしい、すっきりした顔ぶれです。
看板料理の焼鳥は1本150円(一人でしたら1本単位で注文可能。数人の場合は、できれば人数分を。)。近くの市場から仕入れたお肉で、注文を受けてから串打ちを行うのが「鳴門」流。ハツ刺しは扱いなしの日もあります。
サイドメニューが豊富で、常連さんそれぞれに好みの一品がありまして、旧店舗時代にお隣のお客さんに色々教わったものです。その方は納豆をかき揚げにした「納豆天」がイチオシとのこと。
中華料理のバラエティは、焼鳥屋のサイドメニューの域をこえていると思いませんか。
名物はピータン豆腐と手間をかけるつくね
串は少し時間がかかりますから、お通しの代わりとしてすぐでる料理、ピータン豆腐(450円)を注文。ピータン、きゅうりを同じくらいのサイコロ状に切り、硬めの豆腐にかけています。本格的な味付けで、これで十分に一杯、二杯のお供になってくれます。
カシラが焼き上がりました。
塩味の場合は辛味噌が添えられます。といっても埼玉・東松山のもつ焼きにあるような赤い味噌ではなく、甘さをもった少しさらっとした味噌で、これが肉汁たっぷりのモツとよくあいます。さり気なく黒胡椒が振りかけられているのもおいしさのポイント。
つくねは注文を受けてから団子状に丸め、それを中華鍋で一旦素揚げし、そこから串打ち、タレにつけて提供という、なかなか手間ひまかけてくださる素敵なおつまみです。中はふわっとしていて、外はかりっと。結構大ぶりなので、満足感いっぱいの一串です。
これまた丁寧に仕上げてくれるしそ巻。
鶏は歯ごたえがありむちむちとした感じ。噛むと肉汁が溢れ、それを紫蘇が巻き取るようにして、余韻はかなりさっぱりとしています。定番のカシラ、中華と焼鳥屋の技がミックスしたつくね、そしてご主人の技を感じるしそ巻き。鳴門のおいしい3本をぜひお試しください。
酎ハイはちょっぴり濃い目。こうしてのほほんと過ごしていると、まるで高級な焼鳥店のカウンターに居るような錯覚になる新店舗。それでも、献立や金額はほとんど昔のまま。
散歩がてら訪ねるのにぴったり
さて、ここからは反町駅だけでなく東神奈川駅周辺へも徒歩数分の距離で、ふらりとはしごをするのに丁度いい場所です。もう一軒いかがですか。東神奈川の市民酒場か、反町のバルか、角打ちも近くにあります。
60年続く老舗で心地よいひととき。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)