荻窪「かみや」 1955年創業。おすすめは”ぬた”!荻窪で飲む人の大定番。

荻窪「かみや」 1955年創業。おすすめは”ぬた”!荻窪で飲む人の大定番。

2019年8月7日

かみやの暖簾をくぐったのは30年以上前のこと。荻窪生まれの私は、両親に連れられてよく「かみや」にいました。荻窪駅前で64年続く老舗の暖簾です。

JR荻窪駅西口からすずろん通りに向かう途中にあり、荻窪に暮らす人なら一度は前を通ったことがあるはず。

夕方4時半の口開けに合わせて、今日も先輩方がひとり、またひとりと暖簾の向こうに吸い込まれていきます。

「かみや」の店名の由来は、浅草の神谷バーにもつながるデンキブランの「神谷傳兵衛本店」から。といっても、当時は「神谷食堂」という店名で、お酒も飲める駅前食堂的な存在だったそうです。(写真提供:かみや)

昭和の荻窪を知る人には、現在の店舗よりも一代前の「神谷酒場」のほうが「あぁ、あの神谷!」と、当時のことを思い出すはず。「デンキブラン 神谷酒場 お食事」の藍色の暖簾がたまりません。(写真提供:かみや)

現在の店舗よりも倍はある大箱で、荻窪駅南口を行動の軸にしている人たちで明るいうちからにぎやかでした。

3代目が守る「かみや」は、お客さんも少しずつ世代交代。ベテランの常連さんが、家族や会社の若い人を連れて飲みに訪れる姿も多いです。かくいう私もその一人。老舗の酒場はただ飲食する場所というだけでなく、そこに訪れた人々の思い出が詰まっています。ここに来ると、笑ったこと、泣いたこと、たくさんの思い出がよみがえり、複雑な気持ちになります。

そして、ここで乾杯をすると、当時の人たちと一緒に飲んでいるような気持ちになり、最後は笑顔で店をあとにできる。酒場は素晴らしいのです。

よく冷えた大瓶のキリンクラシックラガーで乾杯!

昔ながらのたっぷり入るジョッキの生ビールは、こちらもキリンラガー(レギュラーラガー・中ジョッキ540円)、瓶ビールはレギュラーラガーに加え、クラシックラガーや一番搾りの選択肢もあります。

昭和の「かみや」の店先にも高く積まれた黄色のP箱。ここは昔からキリンです。

神谷バーやオエノン(合同酒精・元神谷酒造)と直接的な関係はなくとも、代表銘柄「デンキブラン」や「富貴」、旭川の「北の誉 にごり酒 親玉」などに「かみや」の歴史が残されています。

酎ハイ(ベースはもちろん合同ワリッカ)も用意あり。

自ら市場(現在は豊洲)に仕入れに行くのはむかしから。旬のもので安くていいもの仕入れ、手頃な値段で提供してくれる。長年の付き合いがあるから市場の卸も用意してくれる。流通から消費者まで、老舗酒場のいい流れがここにあります。

料理は300円から500円がほとんど。ずっと変わらない人気メニューばかりです。

ぬた盛り合わせ(480円)は、そんなかみやの料理のなかでも人気の一皿です。しゃこやとり貝、脂がのった中トロのようなマグロぶつなどが小鉢いっぱいに盛られています。仕入れ次第で内容が変わりますが、いつも大満足です。

自家製の甘くさらさらとした”ぬた”は日本酒をぐっと誘います。

お酒は先に紹介した合同酒精系に加えて、澤乃井(390円)なども用意され、しかも手ごろな価格でコップいっぱい入れてくれます。仕入れで変わる売り切りの日本酒も注目です。

今日はブリ刺し(580円)が美味しいよ!ぷりっぷりで鮮度抜群。盛り付けも丁寧です。

あさりトマト炒め(520円)など、洋風なメニューがじわじわ増えてきました。ピザ(550円)だってありますよ。

冬季ならば、1,000円台でリーズナブルなのに具だくさんな鍋がイチオシ。牡蠣鍋や鱈湯豆腐はもちろん、あんこう鍋もこの価格でなかなかいいものを出してくれるのです。

魚から揚げ物、焼き物、洋食まで揃う、街の定番酒場「かみや」。2,000円ちょっとでたっぷり楽しめます。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

かみや
03-3393-2963
東京都杉並区荻窪5-26-8
16:30~23:00(日定休)
予算2,000円