荻窪「二代目 鳥七」 荻窪らしいお店。渋さと若さのいい塩梅。

荻窪「二代目 鳥七」 荻窪らしいお店。渋さと若さのいい塩梅。

荻窪で飲んだこと、ありますか?なかったら、もったいない。すっかりブランドタウン化した吉祥寺にだって負けず劣らず、毎晩でも梯子したくなるような、素敵な飲み屋がいっぱいです。

中央線の杉並4駅のなかで唯一、電車が地上を走り、線路脇の駅前バスロータリーは再開発で若干広がったものの、まるでジオラマの世界のようにごちゃごちゃした雰囲気が残っています。そこから伸びる、昔ながらの商店街や細い飲み屋通りは変わっていなくて、うねうね流れる善福寺川も昭和後期の景色そのままです。

荻窪駅に降りると、気分は軽くタイムスリップです。思い出の道を歩いたあとは、縄のれんをくぐりたい。今回は「二代目 鳥七」を目指します。

 

鳥七は何十年も続いてきた南口の焼鳥屋さん。そのあとを受け継ぎ、鳥七の建物、屋号をそのままに再スタートさせたのが現在のご主人の伊藤さんです。店名の”二代目”はそんな背景から。

 

うっとりするほどに渋く大人のかっこよさが漂う店内で、腕を振るう二代目のご主人は30代。荻窪の町もまた、受け継がれてきた町並みの中で次の世代が挑戦しているように思え、店の姿と街の姿が重なります。

 

焼き台を囲むL字のカウンターだけの小さなお店。お客さん同士の距離も近く、心地よい一体感があります。一杯目は悩む必要はありません。店の雰囲気にぴったり似合うセピア色のビール、サッポロ赤星(中びん600円以下税別)で乾杯。

今日は泡を少なめに、ちびりとひとくち。

ビールは樽生なし。瓶で赤星ことサッポロラガーと、黒ヱビス(小瓶550円)から選べます。

 

酎ハイ類は400円。香ばし茶割りは特長がありますので後ほど飲みます。お酒は定番をキクマサ(7勺※126ml程度400円)に、一升瓶で色々揃えた純米酒(600円~)が楽しめます。燗つけは銅壺を使った湯煎なので、こちらもぜひ。

 

売り切り銘柄もある純米酒は黒板で確認できます。

 

メインの焼鳥に加え、黒板メニューでは野菜の小皿料理がいくつか。冷やしトマトらっきょ酢仕立て(340円)。

 

どの料理もほどよいアレンジがあって楽しめます。焼鳥ができるまでのつなぎ役としてだけでなく、こちらを中心にちびちび瓶ビールを傾けたくなる内容です。

 

焼鳥は1本(130円~)から注文可能。じっくりと丁寧に串の位置を調整し、ときどきリズムよくうちわで炭の火加減を調整するご主人。脂が燻されて店内にいい香りが広がると出来上がりです。

もも(180円)。パリっとした皮は、鶏の旨味と塩気が絶妙。これでビールが進まないはずがありません。

 

甘めのねっとり系のタレをまとったつくね(180円)。注文が入ってから串にひき肉を巻きつけていき、遠火で焼いていきます。しっとりとしてコク深い味わい。

 

黒板メニューから豚ガリコーン(230円)。スナック菓子ではなくて、文字通り、コーンとガリ(生姜)を豚バラで巻いたもの。正直、ネーミングだけで注文してみましたが、クセになる美味しさで驚きました。

 

野菜串からししとう(160円)。

 

香ばし茶割りがこちら。水割りの焼酎に香ばしい玄米茶のパックをいれたものです。しばし混ぜるとこのように濁りのあるお茶割りが出来上がります。このパックで2杯目、3杯目ととれますので、お茶割り好きにはたまりません。

 

L字の角には燗つけ用の銅壺が。ぽくぽくのぼる湯気をみていると、お燗酒が飲みたくなるものです。

 

白隠正宗は沼津のお酒。醸造元の高嶋酒造は純米蔵で、ここ「二代目鳥七」で提供される辛口純米は同ブランドのスタンダードな銘柄です。

 

ちろりでつけて、徳利で供されます。おちょこが可愛らしくて素敵です。

 

お店が暖簾を掲げる時間は午後3時。早い時間から飲み始めるもよし、夕暮れの路地を眺めつつ飲むもよし。

二代目のご主人は、なんとお隣の酒場「煮込みや まる。」の女将さんの旦那さん。このあと、鳥七からの「まる。」への梯子酒となりました。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

二代目鳥七
03-3398-1057
東京都杉並区荻窪5-29-6
15:00~23:00(日祝定休)
予算2,500円