宮古島『ぷちまあと』最南端の角打ちで、おとーり体験。島の夜は泡盛とともに。

宮古島『ぷちまあと』最南端の角打ちで、おとーり体験。島の夜は泡盛とともに。

2019年8月2日

日本最南端の角打ちは、おそらく宮古島にある「ぷちまあと」。夜遅くなるとみゃーくんちゅ(宮古島民)が集う地元密着の酒場です。

「こんびにえんすまっちゃあ ぷちまあと」という、なんともふわっとした屋号の電照看板が目印です。宮古島の繁華街・平良から500mほど離れた場所にあります。営業開始は20時から21時くらい。沖縄の人は飲み始める時間が遅いという話が本当なんだと実感します。

そんなこんなで、平良の居酒屋さんで軽くお腹を満たしてから、ぷらぷらスマートフォンの明かりを頼りに酔い醒ましつつ「ぷちまあと」へ。

 

お昼はコンビニ、夜は角打ち。日中はおばあちゃんがお弁当を売り、夜になると店主の伊波さんと女将さんが酒場営業をはじめます。閉店は太陽が昇る頃。

宮古島で生まれ育った伊波さんと結婚された女将さんは、なんと東北のご出身。おしどり夫婦の優しい雰囲気がとても心地良いです。

もともと個人系のコンビニ(売店)だったところに、伊波さんのご友人が飲みに集まるようになって、そのまま飲める店にじわじわ変わってきたのだそう。

 

品揃えは本土の角打ちもびっくりのレベル。ビールだけでも、本土大手4社に沖縄のオリオン、加えてコロナやバドワイザーまで揃えています。甲類焼酎はキンミヤがありますし、ホッピーだって白・黒揃っています。

田酒に久保田に、ワイン各種。そして、もちろん島の酒・宮古の泡盛が勢揃い。

 

「8時ぐらいに一人で来る人、珍しいねー!なにしに来たの?」

と笑いながら迎えてもらい、まずは上品に輸入ビールなど。このあと、延々と泡盛を飲むことになるのですが…。

南国の陽気と潮の香りに誘われて、メキシコビールのコロナ・エクストラで乾杯!

 

並んでいるお酒・食べ物はすべて自由に持ってきて、そのまま開封OK。お会計時にまとめて精算です。馬刺しやお刺身も置いています。

 

沖縄の缶詰といえば、チューリップTULIPポークランチョンミート。一人だと食べ切れなさそうです。

 

コンパクトに纏まっていて、全体的にキレイ。どこか謎めいた装飾があって、狐につままれたような気分。あ、宮古島には狐がいないから、やっぱり現実ね。

 

角打ちで食べ物に迷ったら、プロセスチーズで間違いなし。6Pチーズを食べようとしたら、きれいに盛り付けてくれました。

 

「お客さん来たらにぎやかになるから、それまでおじちゃんと乾杯だ。」と伊波さん。昨日飲みすぎたそうで、水のようなものを飲んでいらっしゃいますが、聞けばやっぱり泡盛入り。

続いて、キリンのラガービールをカシュッっと。コースターまで用意してくださって、いたれりつくせり。

 

キリンを飲んだので次はアサヒを飲まないと、なんて冗談を言いながら、アサヒブランドの南国チューハイ「パインとシークァーサー」を。果汁系ながらドライな味でクセになる味です。今度は、かちわり氷と、チョコレート菓子がサービス。角打ちというより、新宿ゴールデン街にあるようなスナックに近いです。

 

さぁ、いい感じになってきました。そろそろ、島のお酒にいきますか。宮古島のナポレオン「太郎」(池間酒造)は、伊波さん推薦の泡盛。社長のお名前が「太郎」ということで、この名前だそう。

 

まろやかで喉越しがよく、ほんのり甘味を感じる美味しいお酒です。

カウンター席で隣になった常連さんも交えて、乾杯!

カウンターで同席した人は、人を治す人。続いて集まってきた方は、リゾートで人を楽しませる人。ほかにも、空を行き交う人、島を守る人、海を守る人など、宮古島に集う様々な人たちが常連さんで、店に置かれたお客さんが勝手に記録する常連さんのタイムカードには、そうそうたる職業が書かれています。ときにはアーティストもスポーツ選手も、みんな入り混じって、酔っ払い同士のフラットな関係で、毎夜大宴会となっていきます。

 

カウンター席のほかに、まるで会議室のようにコの字に配置されたテーブルがあり、ここが集いの場。

 

そんなぷちまあとで人気のお酒が、マスターがつくる「ミルク酒」。カクテルといえば聞こえがよいですが、なかなか強烈なお酒です。

ベースはもちろん泡盛で、これに氷とたっぷりの練乳を入れて出来上がり。一般的な練乳でよいわけではなく、「ワシミルク」が指定品です。缶に鷲(わし)が描かれているので「ワシミルク」と呼ばれていますが、商品名は「ネスレ イーグル 植物油脂入りコンデンスミルク」。なんと世界最大の食品企業・ネスレの製品です。本土ではほとんど見かけません。

 

さらに、缶コーヒー・ブラックを数滴垂らすのが隠し味。これで泡盛のアルコール感が打ち消され、普通に甘い牛乳を飲んでいるように錯覚します。あぁ、たいへん。蓋付きのピッチャーに入れていたのは、これから始まる「おとーり」のため。「おとーりまわします」宣言!

 

これがおとーりグラス。飲む人の強さによって選べるライン入り。おとーりとは、宮古島の飲酒文化を代表するものです。

おとーりは、その場にいる全員が、一人ずつ挨拶など言葉を話した後にグラスのお酒を飲み干します。そのままグラスをまわして、最初に始めた”おとーりの親”だった人が注ぎます。また簡単に述べたあとに飲み干す…、これを繰り返し、一巡すると親が交代となります。こうすることで、初めて会う人でも簡単に仲良くなれちゃうというのが「おとーり」の良いところ。

コの字カウンターになっているのは、そうしておとーりをまわして会話が盛り上がるためなんですね。

 

無茶な飲酒ではなく、楽しい飲酒。宮古島に暮らす人達と、お酒を囲んで楽しいひとときを過ごしました。ガイドブックに掲載されている観光名所にはない、リアルな島の雰囲気を体験できる素敵な角打ちです。

酒場好きの方でしたら、宮古島でここに立ち寄らずして島を離れるべからず(笑)

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)