那覇の中心街である県庁周辺。空港から「ゆいレール」で結ばれ、沖縄本島の各地へ伸びる多数のバス路線が集まる那覇バスターミナルもあります。国際通りのような観光地の賑わいとは違うオフィス街。地元の人たちが仕事終わりにふらりと立ち寄るような「おつかれさま」の酒場が点在しています。
具志堅家は、そんな地元の人々に愛される一軒です。近くのホテルで紹介されて来店する観光客の姿もあります。沖縄の郷土料理を普段飲みの値段で楽しめる良心的な酒場です。
お酒を飲む前に、まずは街さんぽ。酒場はそれ単体で楽しむよりも、街や風土と一緒に感じたほうがなお良いですから。からっとした空気と強い日差し。朱色と濃緑の木々のコントラストがキレイです。
暮れてきました。川の流れる街っていいですよね。久茂地川にネオンが反射して、飲みたい気持ちをかきたてます。
オリオンビールのぼんぼりに赤ちょうちんが目印の具志堅家。夜6時を過ぎると続々とお客さんが集まり、ほぼ満席の賑わいになります。沖縄の人は飲みはじめが遅いなんていいますが、のんびりしていたら満席になっちゃいます。
厨房に向いたカウンターと奥には座敷という配置。所狭しと泡盛の瓶と沖縄料理の品書きが並びます。今日のおすすめには、なんとUSステーキが。さすが、シメにステーキが当たり前という那覇らしさ。ティラジャーとは南国で食べられる巻き貝で「マガキガイ」が正式な名前。その横に「生カキ」と書かれていますが、ティラジャーは牡蠣とは全く異なります。五勺お猪口ほどのサイズです。
塩てびち、ソーキ、そして山羊料理の文字。酒場には土地の色があり、郷土酒場以上に内容が濃いことも多いです。
沖縄の二枚貝といえば、ヒトのサイズほどまで成長するシャコ貝が知られていますが、牡蠣も存在します。近海マグロの産地でもあり、島ダコをはじめ有名無名問わず様々な刺身が食べられるのも魅力です。
さて、お酒を選びましょうか。手元のメニューには高級なものがあり、沖縄の国民酒である泡盛は300円台で飲めるものがカウンターにずらりと並び、その瓶から選ぶようになります。
ビールはドラフトでオリオン、瓶にはキリンとアサヒもありますが、言うまでもなく圧倒的にオリオンが飲まれています。
沖縄は豚食文化。豚の味噌漬けをお通しです。キンキンに冷えてやってきたオリオンを片手にもって、乾杯!那覇の気候にこの爽やかな喉越しが爽快で最高です。
お隣の常連さんと一期一会の会話をしながら料理選び。ここは何を食べても美味しいよ、と言われてしまうと、ますます悩みます。スクトーフは380円ですか、スーチカー(480円)も食べたい。
500円から600円のチャンプルーたち。アーサやもずくの天ぷらもあります。沖縄の人たちは沖縄料理が観光用ではなく根付いた郷土の味になっていることが伝わってくる品書きです。
セーイカに山羊刺し、マース煮まで揃います。
ここはひとつ、王道の沖縄料理「ラフテー」といきましょうか。さっきからいい匂いを漂わせています。クツクツに煮込まれ、しっとりやわらかく箸がすっとはいります。甘めのタレの風味に呼ばれるように、一口。とろける脂に豚の甘い旨味がガツンと味覚を支配します。
こうなると、泡盛を欲してしまうのは酒飲みの性。パワフルな沖縄料理に調和するには、しっかりコクある泡盛でしょう。島唄にする?久米島の久米仙にする?普段飲めない銘柄も良いですね。
沖縄はカラカラ(じょかのような酒器)しかり、徳利であっても基本は一合ほどたっぷりとでてきます。氷と水が出るのも基本で、居酒屋で料理と合わせるならば圧倒的に水割りが多数派です。私もそれにならって、泡盛を水でわっていただはます。
おすすめメニューの「今日のチャンプルー」を聞けば、菜の花とお麩のーチャンプルーとのこと。旬の食材を強い火でちゃちゃっと調理して、沖縄らしい味付けに仕上げて完成です。コーレーグースをかけて味を引き締めるもよし、そのままでも酒の肴にぴったりのコクある一品です。
開放感いっぱいの沖縄。居酒屋も明るく楽しく、地元の皆さんも外向的です。カウンターでお店の方や居合わせたお客さんとの交流も含めて、沖縄の夜は一層楽しくなるはず。
那覇で飲むときに、正統派の大衆酒場をお探しならばここもおすすめです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
具志堅家
098-867-0475
沖縄県那覇市久茂地1-4-7
17:00~24:00(日定休)
予算2,000円