牧志『大衆食堂ミルク』家族で40余年。マチグァーのめし処でお昼酒

牧志『大衆食堂ミルク』家族で40余年。マチグァーのめし処でお昼酒

2022年7月13日

ディープな店構えでも入れば楽園という店は多いものです。沖縄の牧志公設市場に近い『大衆食堂ミルク』はまさしくそんな一軒。地元の人々が贔屓にする日常使いの大衆食堂で、市場の店らしく朝10時から営業しています。家庭的な雰囲気の中で飲むオリオンビールは格別です。

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店内の様子がわからないいぶし銀の店構え

「マチグァー」とは、沖縄の言葉で市場のこと。牧志公設市場周辺に広がる迷路のようなマチグァーは、ほかの地域にはない独特な雰囲気があり、いくら歩いても退屈しません。コンクリート剥き出しの建物が、複雑に、多層的に重なり合い、アーケード商店街と一体化して複雑に広がっています。迷宮のような雰囲気に呑まれると、Googleマップを見ながらでも方角を見失いそうです。

近年は低価格をウリにする「せんべろ酒場」をはじめとした居酒屋の出店が続き、マチグァーは混沌とした魅力を増しています。

外観

そんな迷路の中にある『大衆食堂ミルク』は、40年以上続く地域密着の大衆食堂です。マチグァーで働く人々の食事処として、朝10時から夜は19時過ぎまで、通しで営業を続けています。

店を切り盛りするのはベテランのご夫婦で、ご主人が厨房の担当、女将さんが接客をしています。特徴的な『ミルク』という店名は、牛乳のミルクのことではなく、弥勒菩薩(みろくぼさつ)の「弥勒」からきています。

内観

使い込んだサッシのドアにくもりガラスという入り口は、外食好きの人もドアノブに手をかけるのに勇気がいりそうです。ですが、入ってしまえば、逆にそれが居心地を増しているように感じます。人の家にお邪魔して食事しているような気分になるのです。

扉についたドアベルが「カラカラン」と鳴ると、女将さんが「はーい」と出迎えてくれます。

テーブルが6卓に調理場に向いたカウンターが数席というコンパクトなつくりです。お客さんはベテランの常連さんや、近所からごはんを食べに来た家族連れが先客で、あとから来るお客さんも女将さんの顔なじみばかりのようでした。

品書き

お酒は、オリオンビール:500円。

料理は店の大きさにしては品揃えは多い方でしょう。

イカスミ汁:1,000円、ソーキ定食:900円、ソーキ汁:650円、エビフライ:750円、カツ丼:650円、やきそば:500円、すき焼:600円、オムライス:500円、チャンポン:500円、ヘチマ炒め:600円、沖縄そば:400円、刺身定食:750円、煮付:650円、ポークタマゴ:500円、味噌汁:500円など。意外にも常連さんはオムライス:500円を頼む常連さんが多いです。

沖縄の家庭的な料理が一通り揃っているようで、どれも食べてみたくなります。

街の暮らしに溶け込むような気分

オリオン ザ・ドラフト中瓶(500円)

マチグァーのおじー、おばーのめし処。沖縄の言葉を話すお客さんたちに囲まれて、沖縄ローカルなテレビの音をBGMにオリオンビールを飲めば、私も沖縄色に染まった気分がしてきます。忙しない日々を一瞬忘れて、のんびりと乾杯。

お通しは島らっきょう(サービス)

1本目のビールにはサービスで特製の島らっきょうの塩漬けをだしてくれます。ちびりとつまんで、ビールを一口。そしてそっと深呼吸。

とんかつ定食(600円)

しばらくすると、注文していたとんかつ定食がやってきました。メインのとんかつは皿からはみ出し、マヨネーズを和えたレタスの上にまで重ねられています。お椀ものは、なんと沖縄そばです。

これで600円なのですから、いかに『大衆食堂ミルク』が良心的かわかります。

とんかつは生姜焼きのロース肉のように薄く、それもまたレトロな食堂の雰囲気に似合っています。なにより、ザクザクの衣と下味のついた豚は、オリオンビールを猛烈に誘うのですから、飲兵衛的に嬉しいです。

テビチ定食(900円)

沖縄の定番郷土料理が一通り揃っており、そうした料理をつまみにするのも楽しいです。

こちらは、まるでおでんのような盛り合わせになった、豚足の煮付け「テビチ」です。甘辛い味付け。皮はプルプルとしており、箸で簡単に骨から剥がすことができます。それをご飯の上にのせて食べるもよし、オリオンビールを満たしたビアタンを口元に追いかけるもよし。

沖縄そばもついて1,000円未満なのですから、こちらも大変良心的です。

牧志で朝から市場酒をしたいときや、昼食がてら、ローカルな店で一本傾けたいとき、大衆食堂ミルクは最適な一軒ではないでしょうか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名大衆食堂ミルク
住所沖縄県那覇市松尾2-10-20
営業時間10:00~19:30(日定休)
開業年1970年代後半