酒場好きの店主が始めた、酒場好きのための店『大衆酒場こいさご』。今後、人気店になること間違いなし。飲兵衛の心をくすぐるお酒や料理の数々に思わずうっとりします。座って落ち着いて飲める個人経営の大衆酒場が少なくなった大井町には、こういう店が必要でした。営業時間は14時からで、昼飲みに対応しています。
目次
繁華街の反対側に誕生した、優良店
東京都品川区・大井町に、2022年7月7日、一軒の大衆酒場が誕生しました。店名は『大衆酒場こいさご』。
店主の綿貫 和人さんは、これまで外食産業とは無縁の業界で、営業職を務めてきた方。根っからの大衆酒場好きで、首都圏の酒場を飲み歩いているうちに、理想の酒場を始めたいという思いが高まり、一念発起で『大衆酒場こいさご』をオープンしました。
店名は綿貫さんのお父さんの出身地である栃木県小砂村(現那珂川町)からきています。
開業するにあたり、酒販店、ビールメーカー、食肉卸など、関係する人々との良縁に恵まれたそうです。「飲食業未経験での開業を丁寧にサポートしてくれた」と綿貫さんは話します。
店のコンセプトは、酒場好きである店主の思う最高の酒場をつくること。各地にある名酒場にヒントを得えています。
外観
東小路飲食店街などJR大井町駅駅北側が飲み屋街の中心ですが、『こいさご』は、周囲に飲食店がほとんどない東京品川病院(旧東芝病院)寄りに開店しました。偶然通りがかって飛び込みで入るような場所ではありません。
内観
その代わり、路面店で店内は広々。ゆとりをもった配置に、大きく構えたコの字カウンターが広がっています。カウンターで23席ほど。今後、席数を増やせるスペースも確保されています。
隅々まで思い入れが込められた内装。テーブルとイスの高さのバランス、カウンター前に立ち上がりがなく見通しの良い造りなど、筆者もとても心地よく感じる空間です。カウンターの塗装など、店主自ら施工した部分も多いといいます。
カウンターの内側にはボトルキープの棚が設置されています。取材時はまだ新品のボトルが並んでいますが、あっという間にキープボトルでいっぱいになるでしょう。
品書き
お酒
お酒に特定のメーカー色は少なく、どれも店主の好みで選ばれています。
ビール
大樽(樽生)はキリン一番搾り生ビール:350円と、一番搾り〈黒生〉:350円。一番搾りと黒生のハーフアンドハーフ:350円もあります。
瓶ビールは赤星ことサッポロラガー中瓶:500円のほか、店内にポスター等はありませんがアサヒスーパードライ中瓶:500円も用意されています。
酎ハイ・サワー類
ニットク製のマルチサーバーが設置されており、ビールだけでなく酎ハイもサーバーから注がれます。酎ハイ(ベースは宮崎本店キンミヤ焼酎):250円、レモンサワー:280円、バイス:350円など。ホッピーセット:350円、梅割り:280円。
立ち飲み価格どころか、それより安いかもしれません。
ハイボール
キリンウイスキー 陸ハイボール:300円。
日本酒
定番酒は全国区の有名銘柄ではなく、麒麟山伝統辛口:350円。今後、売り切りの地酒を増やしていく予定とのこと。
おすすめメニュー
本まぐろ:450円、マダコ:450円、〆サバ:350円、小肌:350円、カツオカツ:400円、豚しゃぶ:450円、豚足:350円、ガツ刺:300円、からあげ:350円など。
定番料理
定番料理は短冊から選びます。
まぐろ刺:450円、イカ刺:300円、貝刺:450円、煮込み:280円、肉豆腐:200円、重ネ:480円、とり天:250円、舞茸天:200円、ちくわ磯辺揚げ:250円、焼売:300円、春巻き:250円、串カツ:250円、エビフライ:250円、イワシフライ:250円、ハムカツ:300円、納豆オムレツ:350円、生姜焼き:400円など。
お通しはありません。
「わかってるね」と心の中で言いたくなる、飲兵衛好みのお酒と料理
キリン一番搾り生ビール(350円)
目移りするものの、一杯目はやっぱり生ビールです。何と言っても、今の時代には珍しい条件なしの1杯350円の安さですから。銘柄はキリン一番搾りです。状態抜群。それでは乾杯!
小肌(350円)
ホワイトボードに書かれた献立から、すぐにでそうな小肌を頼みました。夏が旬、柔らかく旨味は濃厚です。
サッポロラガー(500円)
「キリンだけでなく、赤星も置きたかった」と、サッポロラガーも用意しているのは店主の好みから。現存する日本最古の銘柄、貴重な熱処理ビールのサッポロラガーで、改めて乾杯です。
なす天(200円)
料理は60品ほど。飲食未経験とは思えないほどの品揃えに驚きますが、料理の手際の良さ、そして盛り付けの丁寧さにも驚かされます。
大きくて食べごたえのあるナス。どれも一人前サイズでその分価格を抑えています。
梅割り(280円)
つづいて梅割りをいただきます。注文した理由は、割材が下町酒場の定番のエキスではなく、あえて合同酒精の「梅の香 ゴールド」を使っていることから。
キンミヤ25度を注いでから、梅の香ゴールドをポチョンと垂らして完成です。
梅割りのエキスにもいくつか種類がありますが、店主の好みから梅の香ゴールドを選んだそう。甘すぎず、料理の旨味を引き立てる味です。度数が高いので飲み過ぎにご用心。
重ネ(480円)
梅割りがあるならば、料理は煮込みを選びたい。重ネは、蘇我の老舗酒場などで食べられている肉豆腐とモツ煮込みを文字通り「重ねた」ものです。
酒場の定番料理である煮込みを準備するにあたり、各地の煮込みの有名店を趣味を兼ねて食べ歩いたそうです。それに加え、精肉卸の熱心な協力もあって完成したといいます。
モツ(主にシロ)はトロフワ食感で一部にプリプリとした心地好い食感があります。クサミは皆無で旨味濃厚。甘くきつね色に煮込まれた肉豆腐もなかなか。にんにく唐辛子がついてきて、味変(味を変化させる)が楽しめます。
酎ハイ(250円)
マルチサーバーから注がれるキンミヤの酎ハイ。ガス圧高めでキレのある美味しさです。甘くない酎ハイが好きな方は、250円という安さもあってリピートしそうです。
とり天(250円)
店主にオススメの料理を尋ねると「とり天はいかがでしょう。地養鳥という銘柄鶏を使用しているんです」とのこと。
さっそくいただきました。地養鶏は千葉県・茨城県で飼養されている鶏。
歯ごたえがあり、シャキシャキとした食感と、噛むほどにあふれる旨味が特長です。
陸ハイ(300円)
そんなとり天にあわせるお酒は、キリンビール富士御殿場蒸留所でつくられる原酒を主体にした、ほんのり甘い香りのハイボール「陸ハイ」。キリッとした澄んだ口当たりで、揚げ物との相性は抜群です。
陸ハイが300円というのは、平均的な立ち飲み店よりもさらにリーズナブルです。この組み合わせだけでも、また飲みに行きたくなります。
日本酒 麒麟山(350円)
一般的に酒場の定番日本酒といえば、焼酎と同じ酒造会社の銘柄や、灘など酒どころに拠点を構える全国区の日本酒メーカーの普通酒があたりまえ。まさか、麒麟山酒造(新潟県東蒲原郡阿賀町)の麒麟山伝統辛口がでてくるとは思いませんよね。奥阿賀産米のみで仕込む麒麟山の代表銘柄です。
目の前で一升瓶から注がれます。冷えているので、より淡麗辛口が際立ちます。メリハリのあるお酒で飲み飽きません。
ポテトサラダ(250円)
そんな麒麟山には、ポテトサラダをチョイス。ゆで卵を含む、きゅうりとハム、そして適度につぶされたジャガイモ。色合いといい、マヨネーズのバランスといい、手作りならではのベストバランスです。
キンミヤボトル600ml(1,200円)
ボトルキープは、宮崎本店(三重県四日市市)のキンミヤ焼酎の600ml瓶(1,200円)と、小正醸造(鹿児島県日置市)の本格焼酎(米焼酎・麦焼酎ブレンド)メローコヅル磨の720ml瓶(2,000円)の二種類で可能。キープ期間は1ヶ月です。
普段、多くの酒場を巡っている筆者は特定の店にボトルを入れることはほとんどないのですが、あまりにも気に入ってしまい、1本いれました。
飲み方は炭酸水(100円)とコダマ飲料のバイスエキス(100円)で、バイスサワーにしました。なんて楽しいひとときでしょう。後半は完全に取材を忘れて、杯を重ねるだけでした。
ごちそうさま
店主の綿貫さん。『大衆酒場こいさご』の店頭にて
リーズナブルな価格設定は、たくさんのお客さんに通ってほしいからと話す綿貫さん。物腰がやわらかく誰からも好かれそうな方です。
会社員時代、休日はお昼から飲み歩いていたのだそう。自分ではじめる店も、できればお昼飲みできる店にしたかったと言います。『大衆酒場こいさご』は、14時開店。
駅から遠くはないのですが、ややわかりにくい場所にあります。それでも、きっと評判が評判を呼んで、大人気店になることでしょう。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大衆酒場こいさご大井町本店 |
住所 | 東京都品川区東大井6-1-7 1F |
営業時間 | 営業時間 14:00~23:00(L.O.22:30) 日祝14:00〜21:30 日曜営業 定休日 土曜日、水曜日 |
開業年 | 2022年7月7日 |