指宿「青葉」 駅前で半世紀。郷土の食材とぢょかで楽しむ旅酒時間。

指宿「青葉」 駅前で半世紀。郷土の食材とぢょかで楽しむ旅酒時間。

鹿児島県は食の宝庫です。指宿のかつお、錦江湾のきびなごや真鯛、陸にあがれば豚、鶏、牛に鰻まで。北海道や日本海側とも違った主張の強い肴が揃うこの地は、何度行っても楽しい出会いがあります。今回訪ねたのは、薩摩半島の南端、開聞岳に抱かれた温泉街「指宿」です。

ここ指宿で半世紀続く老舗の飲み処「青葉」は、地のものでつくる郷土料理と焼酎を飲ませてくれる定番の店。お昼の一杯を楽しもうと暖簾をくぐります。

 

指宿は鹿児島市街からおよそ50キロの距離。鹿児島中央駅からJR指宿枕崎線で50分ほど。海際を走る風光明媚なローカル線です。

 

かつて東洋のハワイというキャッチフレーズで新婚旅行先としても賑わったこの街は、確かに常夏のムードそのものです。観光地らしい駅前にテンションがあがります。

 

学生の頃にも旅行で来たことがあるのですが、あの頃より少しさびしくなっているのがせつないです。でも、変わらぬ温暖な気候に癒やされることは間違いなく、このまま砂風呂へ行きたい気分。

 

駅から10分ほど歩くと海に出ます。遠くに見えている対岸の陸地は大隅半島。指宿からフェリーがでています。

 

そんなこんなで、街歩きなどを楽しみ、美味しそうな海を眺めたあとはいよいよ目的の青葉へ。店構えは新しくされていて、黒豚・地鶏の看板が目を引きます。

 

家族経営のお店。JR指宿駅から徒歩3分ほどの立地。昔は鉄道旅行者で賑わった駅前食堂的な存在だったと聞きます。現在は地元の方が多く、それでも観光特急が到着するとどっと観光客が訪れるなど、お昼からなかなか賑やかなお店です。

 

指宿は温泉うなぎのブランド知られた鰻の名産地。市内には老舗の鰻店などがいくつかありまして、ここ青葉でも地元の鰻が食べられます。とんかつ(定食1,420円)、豚しゃぶ(1人前2,160円)、黒さつま地鶏に、もちろん薩摩半島海の幸いろいろ。食堂時代からの看板メニュー「中華麺特製黒豚ちゃんぽん」は、青葉創業の昭和28年から脈々と続く一品です。

 

ごはんものだけでなく、お昼から地のもので一杯やることは可能。黒豚トロトロ焼き(640円)、黒豚軟骨みそ煮(540円)、きびなご刺し(670円)、かつおタタキ(830円)など、いい感じじゃないですか。

 

まずは、なにはともあれ定番のビールから。暖かい街を歩いたあとだから、今日も今日とて格別です。では乾杯!

 

ビールは樽生(中ジョッキ500円)に加え、中瓶(570円)もあり、こちらはキリン一番搾りもあります。酎ハイ(360円)のエクステンションとして、かごんま酎ハイなるものがあり、パッションフルーツの酎ハイ(400円)も気になります。

 

焼酎は20種類ほど。減圧でクセ抑えてコクのあるものや、昔ながらのぐっとくる力強い常圧の銘柄など様々。ロックやお湯割り(グラス310円から)もよいですが、やはりここは黒ぢょか(グラス2杯分の値段)の前割り燗を楽しみたいものです。

 

おとなり枕崎は日本有数のかつお水揚げ量を誇る漁港で、鹿児島全体でかつおは名物食材です。

 

同じく南国ムードあふれる高知同様、かつおの炙りが一般的。

 

がっと強火をあてて皮をぱりっとさせたあと氷でぎゅっと〆たもので、引き締まった身からは噛むほどに旨味が溢れてきます。高知ならば、ここで日本酒なのですが、不思議と似たような料理でもこちらでは無性に焼酎が誘われます。

 

おまちどうさま、黒ぢょかの登場です。前割りされた焼酎はマイルドで、これが直火でつけられていい塩梅になるんですよね。お猪口にちょいと注いできっゅと飲めば、いい気分。

 

もう一品は、黒豚の角煮温玉添え(900円)。

 

黒豚の角煮は、居酒屋から食堂、とんかつ専門店までいたるところにある定番。東京の居酒屋の煮込み的な立ち位置に近く、それぞれお店の個性が光る楽しい一品です。こちらは甘さ控えめ、ぷりっとした油ともちもちとした肉からでた旨味でいっぱいです。盛り付けがオシャレでびっくり。

 

郷土料理に舌鼓をあったあとは、九州最南端と思われる指宿駅前の角打ちへ。岡村商店は駅前広場に面したお土産も扱う酒販店で、優しい女将さんが「どうぞ飲んでいってね」と迎えてくれます。

 

指宿だけでも6つも焼酎蔵がある、まさにここは焼酎半島。近隣の町を含む地の焼酎が一通り揃っていて、店内で飲めるコンパクトな割り済みカップもあるので、お酒好きならばぜひ立ち寄って一献を。

 

店の一画に設けられた休憩スペースで、頂くお酒は薩摩ゴールド。JRの車内販売などでも売られるおなじみの地ビールです。

 

駅前には足湯もあるので、足湯&ビールなんていう贅沢もできちゃいます。※入浴前の飲酒は危険です。

南の街で、地元の食材と土地の酒で楽しむひととき。いいものですね!指宿は規模は小さいながら老舗の飲み屋が何軒か集まる飲み屋街もあります。今度は夜にじっくりめぐりたいものです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

さつま黒豚と郷土料理 青葉
0993-22-3356
鹿児島県指宿市湊1-2-11
11:00~15:00・17:30~22:30(水定休)
予算2,500円