ミュンヘン「ホフブロイハウス」 500年続く、世界で最も有名な居酒屋

ミュンヘン「ホフブロイハウス」 500年続く、世界で最も有名な居酒屋

2019年4月30日

ドイツ・ミュンヘンのホフブロイハウスの開設は1589年。バイエルン公・ヴィルヘルム5世によってつくられた王立のビール醸造所です。日本はその頃、安土桃山時代。この年は、摺上原の戦いで伊達政宗たちが合戦をしています。そのような時代から続く由緒ある場所で今日も飲めるというのは素晴らしいこと。

歴史と同時に、ここは世界で最も有名な居酒屋であり、地球上のすべてのビールファンにとっての聖地です。

現在も国立ホフブロイハウス醸造の直営と聞くと、敷居が高そうに感じる「ホフブロイハウス」。ですが、実はとっても気軽にぶらりと寄れるお店でした。今回は、ぶらりミュンヘンの街を歩き喉を乾かし、500年の伝統で潤しましょう。

 

バイエルン州の州都・ミュンヘン。この地で1516年4月23日、バイエルン大公ヴィルヘルム4世が公布した「ビール純粋令」が有名です。その内容は”ビールには成分として大麦とホップと水だけが使用されねばならない”というもの。この条例は現在も活き続けています。

そんなビールの都であるとともに、BMWやシーメンスといった世界的な企業が本社を構える工業都市でもあります。

 

日本からミュンヘンへは、東京・羽田空港からANAの直行便が就航しており、機内でビールを飲んでいるうちに着いてしまいます。ガラスのアーチが美しいミュンヘン国際空港(上写真)には、なんと空港内にもブルワリーがあります。

 

空港から街の中心へはドイツ鉄道(DB:Deutsche Bahn)の連絡列車で40分ほど。ミュンヘン中央(München HBF: Hauptbahnho)駅に到着。ここからドイツ国内外の街へ多くの特急列車ネットワークが伸びています。

 

街の中心街、シティホールやミュンヘン大聖堂(聖母教会)へは、ミュンヘン中央駅から徒歩でぶらぶら10分ほど。旧市街は中世の町並みが残りいくら歩いていても飽きません。あまりにも美しい街並みに、ビールを飲むことも忘れかけ、ため息がでるほど。

 

ビール、忘れている?

そんなはずがありません。街中にある伝統的なビアホールやレストランでは、お昼間からテラス席で乾杯をするドイツ人でいっぱい。さらに、 9月の第 3 土曜日の正午から始まるオクトーバーフェストは、世界一のお酒のお祭りです。会場だけでなく街中にビールの香りが漂うほどで、世界中から600万人がこのイベントを目指してやってきます。

 

念願のオクトーバーフェストに行くことができ、見知らぬ地元のヒゲのおじさんたちと「Ein Prosit der Gemütlichkeit」を合唱しながら1Lジョッキをぐいぐい飲んだのはいい思い出です。

 

ミュンヘンのビールは朝からはじまります。ミュンヘン国際空港やドイツ鉄道ミュンヘン中央駅のキオスクでは当たり前のようにドラフトビールが売られていますし、ホテルや街のレストランでの朝食でも元気に飲んでいる人を見かけます。

だからといって、気後れしてはいけません。朝から飲める街、東京の赤羽や大阪の京橋の延長線上にあると無理やり解釈すれば、なんとか納得できるというもの。ホテルの朝食を控えて、目指すは旧市街中心部の近く、目的の「ホフブロイハウス」です。

 

店内に入ると、高い天井に美しい天井絵。はっと息を呑むほどの美しさ。「美しすぎる○○」なんていう表現が多い昨今。いやいや、この空間こそ、美しすぎるビアホールでしょう。

 

まるで教会のような店内。天井の高いこの部屋はシュウェム(Schwemme)と呼ばれ、かつてビール醸造に使われていた空間です。現在は常連さんがマイジョッキで楽しむ、常連テーブルが中心です。

躍動を続けたヨーロッパの歴史において、ここホフブロイハウスは幾多の舞台となりました。1920年、ここで開かれた集会は知られています。(センシティブな内容のため割愛)

 

建物は広く、複雑です。取材時は営業前のためお客さんがいませんが、お昼を過ぎた頃には席に戻るのも一苦労。迷わないように気をつけましょう。

中庭を使用したビアガーデンや家族連れでも使いやすい二階のレストランなど、用途はさまざま。ただ、王道のビアホールといえば、やはり一階でしょう。

 

ホフブロイは創業のころはダークビールのみを作っていて、その後ヴァイツェンなど銘柄を増やしていったと、スタッフのお姉さん。ホフブロイダークビールという銘柄で、まずは原点を味わうのが良さそうです。

メルケル首相もニュースでビールを飲むシーンが度々報道されていますが、とにかくビール好きが多い国。ビールの量も法律でコントロールされていて、ジョッキに書かれたメモリより少ないと法律違反になります。そんなことから、ホフブロイハウスに限らずドイツではビールグラスやジョッキには原則メモリが書かれています。ホフブロイハウスは、正1Lで9.20€、0.5Lで4,90€です。

 

ビアホールのメニューといえば?日本だと、初のビヤホールである銀座ライオンのイメージもあって「フライドチキン」を想像しがちです。本場、ミュンヘンのホフブロイハウスでは、地元バイエルンの肉料理が揃っています。白いソーセージのヴァイスヴルストはその中でも主役でしょう。

メニュー(オフィシャルサイト・pdf)

時間は9時過ぎ。この日、一番乗りは地元の常連のお父さん。恐縮ながら二番目のお客さんとして飲ませていただくことになりました。では改めて、乾杯!、いえ、プロージット(Prosit)!

 

温度はほどほどに冷えていますが、ぐいっと飲むものではなく、ちびちび味わっていきます。ダークビールで気分はモーニングコーヒー。

 

香ばしいキャラメルのような麦の香と、控えめながら余韻が華やかホップ。キレがよくてぐいぐい飲めます。※国内外問わず適正飲酒を。

500年続くバイエルンビールの原型がここにあります。

 

バンドチームによる生演奏もあって、日本国内で開催されるオクトーバーフェストでお馴染みの曲も流れます。気づけば見知らぬビール好きと意気投合するかも?

常連さんはテーブルが決まっていますので、主のような方が自分のテーブルにやってきたら、笑顔でほかの場所へ移るのがルール。ラフに飲めますが、伝統と格式は大切に。

そうそう、大戦中も地階に保存していたビールジョッキは戦災を免れたそうです。ベテランの人はものすごい年代物のジョッキで飲んでいます。

ドイツの歴史を舌と喉と空気から感じられるホフブロイハウスへ飲みに行ってみませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

ホフブロイハウス Hofbräuhaus München
+49 89 290136100
Platzl 9, 80331 München, ドイツ
9:00~23:30
予算25€