ロンドン「ソールズベリー(The Salisbury Pub)」 劇場街で120年、絢爛なパブで風土に浸る

ロンドン「ソールズベリー(The Salisbury Pub)」 劇場街で120年、絢爛なパブで風土に浸る

イギリスやアイルランドは、街のいたるところにパブがあります。日本の居酒屋と同じような利用シーンがメインになりますが、それだけでなく、パブの名の通りパブリックな場として人々の交流にも欠かせない存在です。

ペールエール、ビターエール、ポーター、スタウト…、イギリスやアイルランド発祥のビールは世界中に広まりました。加えて、アメリカを中心としたクラフトビールブームがイギリスへ逆輸入され、より一層バラエティ豊かで上質なビールが登場。イギリスにおけるビール文化の発信をパブが担っています。

さあ、魅惑のビールがあふれるロンドンのパブへ飲みに行きましょう。

 

フランスのビストロでワインをたっぷり飲んだ翌朝。パリの玄関、パリ北(Paris Gare du Nord)駅から、国際特急ユーロスターに乗ってロンドンへ。ヨーロッパ大陸とグレートブリテン島の間には、ご存知、ドーバー海峡がありますが、列車はユーロトンネルで海をくぐり抜け、わずか2時間15分ほどでロンドンにつきます。

 

ロンドン側のターミナルは、セントパンクラス駅。まるで美術館のような立派なつくりです。巨大なアーチ天井に囲まれたプラットフォームの先には、やはりイギリス、ここにもパブがあります。

 

セント・パンクラス駅に隣接して、イギリス国内の近郊列車やスコットランド方面への特急列車が集まるターミナル「キングス・クロス駅」もあります。イギリス生まれの冒険物語「ハリーポッター」シリーズでも登場する駅で、ここから魔法魔術学校へ行く特別列車が発車していました。

 

物語のなかで、特別列車が発車する「9 3/4番線」へ、いままさに飛び込もうとしています。ロンドンの定番撮影スポットで、マフラーも貸してくれます(笑)

 

(Harry Potter and the Cursed Childというミュージカルも公開されています)

さて、だいぶ話が遠回りをしてしまいましたが、実は今回向かっているパブはロンドンの演劇と深い関係があるからです。

レスター・スクエアとコヴェント・ガーデンは、ロンドンの劇場が集まるエリア。映画やミュージカル、芝居が繰り広げられるこの地で、120年以上続いてきたパブ「ソールズベリー」を目指します。

 

この地で1898年に建てられたトラディショナルなパブ。ヴィクトリア時代のパブは、他の一般的な店と比べても抜きん出てきらびやかです。

 

営業時間は午前11時から通しで夜中まで。早い時間は界隈で働くビジネスマンがビール片手にリキッドランチを楽しみます。オシャレをしたマダムは、これからミュージカル鑑賞でしょうか。店員さんによると、演劇関係者も多く、ステージに立つアーティストにもここのファンが多いのだそう。

 

店内中央には巨大なコの字カウンターが中央があります。まるで日本の酒場みたい。

ハイチェアのスタンドやラグジュアリなソファ席など様々なスペースが提供されていますが、店の歴史を感じるのはカウンター奥の暖炉がある立派な小部屋です。差があるこれらのスペースは、かつて身分によって飲む場所が異なっていた頃の名残。

いまはソファもスタンディングもあらゆる方をウェルカム。

 

イギリスのパブは、キャッシュオンスタイル。カウンターでビールや料理を注文し、代金と引き換えにビールをもらったら、あとはお好きな場所でどうぞ、というスタイル。ビール一杯の少額決済でもみんなクレジットカードを躊躇なく使っています。

「どこでもどうぞ」、と言われたら、やっぱりビールのポンプが並ぶカウンター席が私にとっての特等席。

 

30種類ほどある樽詰ビールに加え、さらに膨大な瓶ビールがあるなか、Portobello Brewing 社のエールを1パイント(568ml)をチョイス。じっくり深みのある味、わずかにスパイシーで後味はさわやか。ずっと飲んでいたいビールです。

 

ギネスはアイルランドのビールですが、ロンドンのパブなら、ほとんどのお店で扱っている大定番。どっしり大きく飲みごたえあるパイントグラスを、ちびりちびりと味わうように飲み勧めます。

 

料理は10£前後で、パブ料理の定番が勢揃い。イギリスの料理はビールとあわせるととっても美味しい!その最たる例がフィッシュアンドチップス(£13.79)でしょう。

フレンチフライの上に巨大な鱈のフライが豪快にのっています。

 

とにかく分厚く、みずみずしくてホクホクな仕上がり。ボリュームがあるという魅力ではなくて、大きいからこそのジューシーさが特長です。

 

次々やってきては、一杯引っ掛けて数分で店を離れていくお客さんたち。店の奥では明るいうちからデートでジンやウイスキーを楽しむ年配のご夫婦。そんなロンドンの人々の暮らしの中にビール片手に溶け込める素敵なひととき。

日本の酒場、海外の酒場、場所は違っても、その地で暮らす人々の息遣いが感じられる酒場は、変わらない魅力です。

 

お店から10分も歩けばテムズ川。3杯飲んで少しいい気分になったので、酔い覚ましにお散歩を再開です。

劇場街の華やかなパブで一杯、皆さまもぜひ!

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

The Salisbury Pub
eneking-pubs.co.uk
+44 20 7836 5863
11:00~23:00(平日以外は、閉店時間が異なります。)
90 St Martin’s Ln, Covent Garden, London WC2N 4AP UK
予算£20.00