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杉並区で焼鳥といえば、皆さんはどちらがお好きですか?
中央線沿線にはやきとり(もつ焼き)と焼鳥(鶏焼き)の名店が勢揃い。中央線に乗って飲みに向かうとき、よりどりみどりな焼鳥店にいつも悩みます。
阿佐ヶ谷で焼鳥といえば、「鳥久」は外すことのできない選択肢。大将と女将さん、そして息子さんの家族三人で切り盛りされています。長く杉並で飲み歩いている人からは絶大な人気を誇る一軒で、家族二代で通われている方もいらっしゃいます。
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焼き台を入り口脇に配し、そこから店の奥へと白木のカウンターが伸びています。直線の中に、長年お客さんたちによって丸められてきた際のカーブが美しい。
カウンター8席はお一人、お二人のお客さんで賑わいます。テーブル席もありますが、お酒好きの皆さんで常に満卓になるほど。一人客ならば、ふらっと訪ねて1席空いているかも。それほどの人気店です。
ビールは昔からずっとサッポロ。温度、鮮度、洗浄がばっちりの樽生黒ラベル(440円以下税別)で乾杯!
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昔ながらのぴしっとした焼鳥酒場。お酒の顔ぶれも素敵な渋さです。瓶ビール(サッポロ黒ラベル中びん・540円)、サワー(380円)、松露酒造の芋焼酎心水(450円)など。ホワイトボードには、入れ替わりでこだわりの地酒を用意。価格も手頃です。
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鳥久はお通しの小鉢から美味しい。この日の出汁がきいた煮浸しは、極上の樽生と合わせてこのあとを期待させてくれます。夏季は冷奴みょうが添えなども。
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ずいぶんと久しぶりになってしまっていたのですが、鳥久の鳥たたきや鳥わさは変わらず絶品です。ささみ納豆は他ではあまり見かけない料理ですが、これがイチオシ。
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長く続く老舗人気店ならではの鮮度のよさや丁寧な仕事を感じる鳥久。ささみ納豆は単純そうにみえて、これがまた美味しいのです。
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豚を含まない、鶏だけの焼鳥。それでも1本150円前後と嬉しい値段です。1本から注文可能。まずはやき鳥(ねぎま)とつくねを。甘めで粘度のあるタレをまとったやき鳥は歯ごたえしっかり、それでいて噛むほどに肉汁が溢れてきます。
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一度揚げてから焼くつくね。染み込んだタレの甘辛さと、鶏の様々な部位からくるコクがビールを進ませます。
このほか、れば、しんぞう、かわ、くび肉、てば先、砂ぎもなどが用意されています。一人だと数本しか食べられないのが残念に思うほど、どれも魅力的です。
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箸休めにおひたしを。鶏料理のほかにも日替わりで酒場の一品がいろいろ加わります。
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キクマサ(小徳利350円)を燗つけてもらって、じっくり飲みましょう。上燗ほどで温度もぴったり。
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焼きすぎずにふかふかな食感。しそ焼は間に細かなしそを挟み、わさびと軽い醤油で風味を付けたもの。
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これもまた、とにかくあと引く味。とびきり鮮度のよい鶏なのでしょう。ハリが段違い。すっきりした余韻に灘の辛口が絶妙な相性です。
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氷屋さんの氷でいれた酎ハイタンブラーで飲むサワー(380円)。昨今のレモンサワーブームでいろんな変化球がうまれましたが、王道の昭和のサワーだって、ちゃんとつくると本当に美味しいです。
背筋を軽く伸ばして、きっちり飲んで笑顔で過ごしたい。ここは少し前の素敵な酒場のムードを留めた素敵な焼き鳥店です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鳥久
03-3310-2606
東京都杉並区阿佐谷北2-12-22
17:15~24:00(日月祝定休)
予算2,300円