仙台「おでん三吉」 店主も三代、常連さんも三代。一番町の名酒場。

仙台「おでん三吉」 店主も三代、常連さんも三代。一番町の名酒場。

おでんと日本酒は相思相愛。冬はもちろん、夏も冷酒とつみれできゅっと。年間通じておでんを看板に掲げるおでん屋さんは、ちょっと特別な存在です。

仙台でおでん酒場の老舗といえば、1949年(昭和24年)創業、今年で70年目になる「おでん三吉」です。初代が屋台ではじめ、数年後、現在の場所である国分町稲荷小路の場所にのれんを掲げました。

陸奥の焼干しいわしと昆布で出汁をとった伝統の味でいただくおでんには、地の食材がふんだんに使われています。県内産の日本酒を中心とした東北のお酒が豊富に揃っているので、東北の夜を味わうのにぴったりな一軒です。

 

仙台駅からのアクセスは、仙台市営地下鉄で仙台駅から2駅目の勾当台公園駅へ。路線バスも高頻度で結んでいます。仙台のように駅と中心繁華街がほどよく離れている街はふたつの表情があるので楽しいものです。

今回は仙台駅からぶらぶら文化横丁、サンモール一番街、国分町料飲店街と飲み屋に囲まれた道を散策しながら三吉へ。

 

建物が大きく、少し格式が高くも感じますが、ラフな気分でふらりと暖簾をくぐれる大衆的なお店であることは変わりません。

 

おでん鍋を角に配置した大きなL字カウンター。おでん鍋の前が特等席です。グループ利用ならテーブル席が豊富にあるので安心です。地元の働く女性の一人飲みから、家族で通われているという4人組まで、お客さんの用途は様々。接客が丁寧で、味わいある店ながら清潔感もあるので、酒場ファンでなくとも、仙台の郷土料理店として幅広くオススメできます。

 

ビールは昔から樽生はサッポロビール仙台工場(固有記号:N)がつくるサッポロビール(550円)。ザ・プレミアム・モルツ マスターズ ドリーム(700円)も樽生で選べます。瓶(中びん550円)でアサヒ、キリンもおいてあり、四面ばっちりカバー。定番酒は高清水で一合徳利で430円。

 

仙台は名取の工場でつくられた黒ラベル。日本酒の前に、まずはビールで喉を整えます。

 

では乾杯。春夏秋冬、いつだって美味しいナショナルビール。

 

お通しは季節を感じるもので。この日はホタルイカ酢味噌で春をいただきます。

 

看板料理のおでんはもちろん年間を通して店の顔。いいだこ、つぶ貝、イカなど海産物が豊富です。わらびやふきも珍しい。

 

三陸など東北の海から水揚げされる海鮮をつかったお刺身や焼き魚も揃っています。東北でみかける油で揚げたお麩、油麩の豆板焼(480円)や仙台名物三角油揚げ(530円)など、おでん以外にも興味を惹かれます。

初代が秋田出身ということもあってか、冬季はきりたんぽ鍋(1,000円)も定番です。

 

富谷の酒蔵、内ヶ崎酒造店は県内最古の造り酒屋です。ここがつくる「鳳陽おくのかぜ」(600円)。さらっとした印象ながら、舌をくすぐるコクがあり、お米の旨味がが心地いいです。

日本酒はこの他、一ノ蔵純米(550円)、萩の鶴純米(550円)、蔵王特別純米(650円)、栗駒山特別純米(650円)など。

 

大きなおでん鍋は、常に透き通ったお汁に満たされた具が隙間なく出番を待っています。

 

そうした中から、まずはにら玉、サンマすり身、大根を。

気仙沼、女川、石巻、宮城県はサンマの水揚げで知られる街がいっぱい、そんな宮城らしいサンマすり身は年間通じて食べられます。いわしよりも甘くすっきりした味わいです。

 

にら玉も三吉らしい具です。茶碗蒸しのように固められた卵は出汁の旨味がたっぷり。クタクタなにらの深みある味もお酒を誘います。

 

全26種類、すべてのおでんは一人では食べきれませんが、毎回頼んでしまうのが「いいだこ」。ねじり鉢巻に見立てた干ぴょうに巻かれたタコがかわいいでしょ。

 

ホタテもお酒の肴にぴったり。浸かりすぎておらず、ぷりぷりとした食感とジューシーさが特長です。

比較的大箱なので、ぼーっと一人の時間を楽しむことができるお店。旅先のひとり酒、一軒目はこういうお店で、まずは一息つきたいものです。仙台でおでんで一献、いかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

おでん三吉
022-222-3830
宮城県仙台市青葉区一番町4-10-8
18:00~23:00(土は17:00~・日定休)
予算3,000円