仙台「八仙」 今も昔も市民に愛される、ブンヨコの名物餃子

仙台「八仙」 今も昔も市民に愛される、ブンヨコの名物餃子

“ブンヨコ”の名で親しまれる仙台の文化横丁。酒場を愛する人にとって、仙台の夜になくてはならない一画でしょう。

仙台大空襲で焼け野原となった仙台で、力強く立ち上がった闇市が起源で、文化キネマという名の映画館があったことから「文化横丁」と呼ばれるようになりました。

 

約50軒の飲食店が十手型の路地に密集し、日暮れとともに灯りが次々と灯り、行き交うお酒好きを誘惑します。入り口のアーチ看板には数世代前のサッポロビールのロゴと、星印に「文」の文字がはいる独特なロゴがいい味を出しています。

 

日中の文化横丁は、寂しい路地裏の雰囲気。寿司屋など一部の店が静かに営業をしていますが、夜になると姿は一変します。

 

そんなブンヨコで1953年(昭和28年)から続く餃子店は、何世代にも渡り愛されてきた生きた酒場の名所です。もとは大衆酒場として始まり、そこで提供していた餃子が評判ととなり、現在のような餃子専門になったと聞きます。

文化キネマで映画を見て、餃子を食べていく。そんな先輩たちの足跡をおいかけて、一皿一本を楽しんでいきます。

 

一直線のカウンターとテーブル席の配置。二階には座敷があります。常連さんが集うカウンターは、向かいに女将さんやお姉さんたちが優しく接してくださる特等席です。

老舗とはいえ、日常のなかにある町中華のひとつで、普段から通っている人で賑わっています。観光だから…という雰囲気より、その場に浸れる幸せを感じてみてはいかがでしょう。

 

ビールは中びん(590円)のみながら、ビール4社が揃い踏み。メーカーに拘る人でも安心です。

 

文化横丁の文星印に誘われてきたので、今宵はサッポロです。小鉢のお通しがやってきます。ビヤタンに心地よいリズムでトトトと注いで、仙台の夜に乾杯。

 

さすが仙台。宮城峡にあるニッカウイスキーの文字があります。頼むとスーパーニッカがでてくるのですが、そのチョイスもどこか懐かしいでしょ。

 

餃子は580円で一番人気。ビールに合うと評判高いカニ肉の春巻き(1,05o円)も予算とお腹にゆとりがあればぜひとも食べてみて。

 

カウンターのわきで営業中ももくもくと餃子を包み焼いていく三代目。着席といっしょにビールと餃子(580円)を頼んでおけば、ビヤタンの二杯目を乾かした頃には焼けてきます。

しっかりサイズなのにペロリと食べられてしまう、感覚的な軽さが特長の焼き餃子。女性でも餃子だけなら二皿食べるくらいが多いのだとか。

 

仙台っ子を虜にしてきた餃子は、今日も変わらず受け継がれています。

 

二枚食べても良いところを、今日は水餃子にしてみました。野菜たっぷり、塩味のスープを吸ってふんわり大きくなった餃子をちゅるんと口に流せば、餡の旨味がじゅっと舌を包んできます。

 

美味しいから冷ますのもそこそこに、ハフハフして頬張って、すかさずビールをくっと一口。冬に暖まるのはもちろん、熱い頃合いにビールで体を冷やしつつ食べるのも最高です。

 

少し強いものが飲みたい。そんなときには中国酒(ウーカーピー酒)。しかも、日本メーカーのそれとは違う日本語表記がない怪しい瓶がここにはあります。なんと54度もあり、頼んだ瞬間お店の人たちが「え、大丈夫?お酒強い方?」と心配するほどの強烈なお酒です。

 

真っ赤な液体、漂う強いお酒の刺激。そして独特な薬草感。常温・ストレートできゅっと飲めば、食道から熱くなっていきます。餃子との相性もよく、この一杯で文化横丁はより一層輝いて見えてきます。

餃子のお店ですが、営業は夜からで、飲む人のための空間です。ただ、お隣の常連さんはいつもブンヨコの八仙でラーメン(550円)を食べてから繰り出すのを日課にしているそうで、夜の腹ごしらえとしても親しまれています。

今夜は、ブンヨコで仙台の歴史に浸ってみませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

八仙
022-262-5291
宮城県仙台市青葉区一番町2-4-13 文化横丁
17:00~22:30(日祝定休)
予算1,700円