高円寺『一徳』古き良き杉並酒場を今に伝える炭火焼鳥の名店

高円寺『一徳』古き良き杉並酒場を今に伝える炭火焼鳥の名店

2016年10月21日

今回ご紹介する酒場は「一徳」です。もともと西荻窪の人気老舗酒場の店長だった方が独立してはじめた焼鳥酒場。雰囲気やメニュー構成にどことなく、古き良き西荻の雰囲気を感じます。

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有名店で修行の後開業

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皆さん、杉並区の酒場巡りは楽しんで頂けていますか。駅の構造は各駅そっくりでも、駅前の酒場やそこに集う常連さんの顔ぶれは駅ごと個性があり、どの街で飲むのが一番か甲乙つけがたいものがあります。

まだまだおすすめしたいお店を紹介しきれていないのが現状なのですが、赤羽や立石が酒場の街として有名になったように、ぜひ杉並区もナイスな飲み屋街として知れ渡ってほしいと思います。今回は『一徳』です。

品書き

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ロックで渋い感じの、まるで銀幕俳優のようなオーラ全開の大将が立つL字カウンター。がんがんと強火の炭火で焼いていく焼鳥台が中心にあります。

ドリンクメニューは酒場好きの心をくすぐる内容です。昨今のネオ大衆酒場や酒場マニア的な新店舗のそれに近く見えますが、いやいや、こちらが本家の風格というもの。私が赤星やキンミヤといった大衆酒に目覚めたのはこのメニューの影響もあるかもしれません。

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ダンディーな大将、飴色のカウンター、サッポロラガー。東京・杉並の酒場らしいこの景色がたまらなく好き。では乾杯!

トトトっと注いで、優しい味の赤星のいつもの味を楽しみます。

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定番メニューは、やきとりの他に一品料理や揚げものにも飲み欲をそそるものが豊富に並んでいます。無駄なものなく、どれも準主役級に思える内容です。お通しはありません。

日替わりメニューのホワイトボード。いろいろごちゃごちゃ書かれていますが、昭和の大衆酒場はこうでなくちゃ。店名を冠した一徳どーふや、脈絡なく書かれたなかに隠れる水ギョーザなど、どれも食べてみたい。そして安い!

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他のメニューと重複していたり、こっちにしか書いてなかったり。食べたいオツマミをソートされていない多数の品書きから見つけ出す楽しさ、酒場好きの方ならお分かりいただけるのではないでしょうか。

マスターを囲むL字カウンターが最高に楽しい

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常連さんに大人気のアスパラトマトサラダは、このボリュームで300円台です。野菜の市場価格が安定しない中、酒場で一日分の野菜をまるっと食べられるのはいいですね。肉や魚ばかりになりがちの飲兵衛の食生活を支える貴重なバランスつまみ。

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焼台でがんがんと焼かれる焼鳥・やきとん・さんま串。滴る脂が炭にあたってじゅっと煙をたてます。いい音、いい匂い。

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ビールはサッポロラガーのほかに、キリンラガーも置いています。現存する国産ビールで一番と二番目に古いビール。どちらもかっこいい。(いずれも大びん560円)

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さらさらで甘みのあるタレ、にんにくなどの深みのある味がついていて、これがシロやネギ間と実に合う。串は1本から頼めて100円とリーズナブルですが、ご覧の通りかなりしっかりしたサイズです。

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タンとハツは塩で焼いて辛味噌をつけて。結構な強火で一気に焼いているので、表面はパリっとしていながら中には肉汁がたっぷりのジューシーさが残っています。

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280円の四国てんぷらも外せない。いわゆるさつま揚げですが、注文を受けてから焼鳥と同じ焼台に載せて表面を焦がしていくので、炭の香りがついて「揚げたて」とはまた違う価値を感じます。

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スモーキー合わせということでブラックニッカのハイボール(シングルで330円)を。炭酸は博水社のハイサワーブランドが使用されています。ハイボールなのにマドラーがついてくるのが、なんというか「酒場」です。

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エビニラ焼売(350円)はサイズでみれば高級品ですが、小籠包のようにつゆだくで、具材もたっぷり。エビ好きの私はこれがやめられません。

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西荻窪から大将を追っかけてこちらに飲みに来る常連さんもいますが、そんな一徳の主たちの好みのひとつがこのナポリタン(350円)です。焼鳥とかに使うのと同じ小皿に盛られていますが、これが山盛りになっていて数人でシェアしてちょうどいいほど。先につまんだトマトとアスパラのサラダとナポリタンを頼めば、ちょっとしたTaverna(タベルナ)気分です。

茹で置きしてぶよぶよになった、反アルデンテの極みをいく王道ナポリタンは喫茶店のランチであって、酒場の最高の肴だと思います。

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甲類はキンミヤと宝を選択可能。結構濃い目でいれてくれるので、普段は酎ハイで酔わないという人でも3杯いけば結構な感じだと思います。※適正飲酒に気をつけましょう。

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地元の演劇や常連さんが出演しているような映画のポスターが貼られた空間に大将が好むJAZZが流れる。会社員から自由業の人まで色んな人が入り交じる空間はまさに杉並らしい光景です。

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今の季節はまだ窓を開放していて、ちょっとしたビヤガーデンの気分が味わえます。交差点を挟んだコンビニと通行人が借景です。渋くて濃い抹茶割りをくいくい飲みながら、リラックスできる時間がゆっくりと流れていきます。

向かいには離れがあり、4人くらいのグループでの利用も可能。女性用のきれいなお手洗いも完備されていますので、憧れの渋い酒場で飲んでみたいという女性にもおすすめです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

一徳
03-3336-4059
東京都杉並区高円寺北2-11-1
17:00~23:30(日祝は16:00~23:00・火定休)
予算1,900円