アニメーション・漫画関係者の多い中央線沿線。酒場は土地の産業を写す鏡なので、コンテンツ制作者の集う店がいくつもあります。吉祥寺の『松亭』もそうした一軒です。1987年創業、ご夫婦で切り盛りする小さな酒場ですが、安定した美味しい料理と個人店ならではのリラックスできる雰囲気で満たされています。
目次
アニメーターだけでない、まちの産業を支える人が通う店
ここは東京都武蔵野市・吉祥寺。井の頭公園をはじめ、飲兵衛にはハモニカ横丁も有名なまちです。駅前には有名な老舗やきとり店などが立ち並び、飲み歩きに事欠かないエリアです。ですが、それらはまだ氷山の一角。駅から10分ほど歩くと、より深く地域に根ざした酒場がみつかります。
今回訪ねた酒場もそのひとつ。中央線沿線に多い漫画・アニメ産業に携わる人々が贔屓にしてきた酒場『柗亭(松亭)』です。
外観
駅からは線路沿いに西荻方向へ10分ほど。五日市街道沿いに構える長く続いてきた酒場です。駅から離れているため、吉祥寺に遊びに来た観光客の姿はなく、近隣で働く人や暮らす人、そして聖地巡礼に足を運ぶ人たちだけの小さなコミュニティです。
内観
店内は漫画・アニメ関係者の名刺やサインでいっぱいです。
同店がそのまま実名でアニメの舞台になった作品もあり、先に触れましたがいわゆるロケ地巡りの『聖地』となっています。店内には関連するポスターがいっぱい。いまも日本国内だけでなく世界中からファンが訪れるのだと女将さんは話します。
それでも、変わらぬ立ち位置は大衆酒場。店の歴史を言葉ではなく風格で語る空気に満ちています。カウンターにはラフな格好ながら仕事終わりにくつろぐ人々や、近隣に暮らす人々が「いつもの場所」という表情でのんびりと過ごしています。テーブル席も落ち着いた雰囲気です。
品書き
お酒
樽生ビールはサッポロ黒ラベル、日本酒の品ぞろえも豊富です。
料理
刺身盛り合わせ:1,000円、カンパチ刺身:1,000円、金目鯛煮:800円、さわら塩焼:550円、チキンカツ:650円、カキフライ:750円、銀だら煮:800円、肉じゃが:550円など。
優しいカウンター、おいしいつまみ
サッポロ生ビール黒ラベル
乾杯はやっぱり生ビール。長年サッポロを扱ってきた印ともいえる赤い星マークの入ったジョッキでも注いでいただきました。瞬冷サーバーですが鮮度がよく、安定した美味しさだと思います。それでは乾杯!
おとおし
お通しは日替わり。この日はれんこんとひき肉の煮物でした。女将さん、大将の手作り料理ならではのあたたかさがあります。
肉じゃが(550円)
松亭の魅力を一言で表すならば、「アットホームな酒場料理」です。けして家庭では真似できない味ですが、どこか懐かしい家庭の味でもあります。ひさしぶりにしみじみと美味しい肉じゃがに出会いました。
ししゃも(400円)
軽くつまむのに最適なししゃも。ゆっくりとした時間が流れる住宅街の酒場で嬉しいおつまみです。
チキンカツ(650円)
松亭の名物メニューといっても過言ではない、多くのお客さんが注文するボリューム満点のチキンカツ。
揚げ具合が絶妙です。ザクザクとした衣と鶏の弾力、そこへ続く肉汁までの一連の流れが秀逸です。まだパチパチいっているところにブルドックソースをたっぷりかけて、ひとくち。広がる旨味を追いかけるように日本酒やビールをぐっと飲めば、気分は「どーんと行こう!」です。
氷はいまどきの酒場では珍しくなったロックアイスです。ここにご近所割材を注いでつくるレモンサワーもなかなかいい味です。けして甘くなく、焼酎はしっかり入っているのでいい気分。※適正飲酒の範囲内で。
製鉄・炭鉱のまち、金融のまち、ビールのまち、学生街…。いろんなまちに、その土地ならでは酒場があります。ここ、「松亭」も日本のコンテンツを支える人々か飲みに来る、中央線沿線ならではの酒場です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 松亭 |
住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺南町5-1-3 |
営業時間 | 18:30~22:30(日定休) |
創業 | 1987年 |